第１局
遂にA級昇級を果たした深浦朝日。実力者ではあるが、今回ビッグネームと対峙しはじめて真価が問われることとなった。
対する羽生二冠は立て続けにタイトルを奪われ不調かという声も聞く中、しっかりと本棋戦で勝ち上がって来た。NHK杯も準優勝だし、やはり強い。
羽生先手の第１局は、中座飛車。中座飛車らしく後手が手を作り先手がいなす展開となった。
図は▲７七歩に△３六飛とまわったところ。
後手：深浦康市朝日
後手の持駒：歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香 ・v銀v金 ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
|v角 ・ ・ ・ 角 ・ 歩v歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・|六
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 歩 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治二冠
先手の持駒：歩
【手数＝40 △３六飛 まで】
ここから▲３八飛△同飛成▲同 銀△４五桂▲６六歩△８四角▲２一飛と進んだ。
飛車をぶつけられて後手が困っているような...。後手陣には２一に隙間があり３三の桂を捌くとここに飛車を打つ手が厳しい。
本譜も▲２一飛が実現しては先手が優勢のようだ。先手の左陣が壁になっているので△４五桂〜８四角と５七から殺到する手に期待したと思われるが、▲６六歩がそれを緩和する好手だったようだ。
してみるとやはり△３六飛は疑問だったと思うのだが。
125手で羽生二冠が勝ってまずは貫禄を示した。羽生としては名人戦も控えているので朝日オープンの方は軽くいなしたいところ。そう簡単にはいかないだろうけど。
＃一言日記：プロ野球開幕。普通に行けば史上最強打線の巨人が弱投を補ってぶっちぎりになるはずだが、案の定つまずいて混戦になった。こうじゃないと面白くない。
[2004/04/10 01:20]
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第２局
第２局も中座飛車。先手中住まいから▲３五歩とし△同飛ならば▲４六角として９一の香車を取る手法だ。
タイトル戦では第74期棋聖戦第１局（佐藤○−●丸山）で登場し、最近では第５３期王将戦第２局（森内●−○羽生）が記憶に新しい。
香車を取らせても陣形を主張するこの指し方は、今だ馴染めない（そもそも中座飛車そのものが未体験ゾーン）のだが、今だ進化している。
図は▲７五歩としたところ。ここまでは王将戦森内vs羽生戦と同じ。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：角 歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
| 馬 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v飛 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩v歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：深浦康市朝日
先手の持駒：香 歩
【手数＝41 ▲７五歩 まで】
ここから△８八歩▲同 銀△２八角▲７七桂△１九角成▲３七桂△１八馬▲４六香と進んだ。
森内vs羽生戦ではここで直ぐに△２八角としたが、△８八歩▲同 銀の交換を入れて△２八角。なるほどこの交換は後手のポイントかな。
更に△１八馬までは前例があると言う。その将棋はなんと今月になってから指された渡辺vs羽生戦。しかも後手羽生二冠が勝ちの将棋。その将棋は▲７四歩△同飛▲９二馬と進んだが、▲４六香が深浦朝日の用意していた手だった。
このちょっとした工夫で先に桂得を果たした深浦がペースを掴んで81手で羽生を降した。
さすがに新A級八段深浦朝日は強い。次局以降も最新の研究手をぶつけてくると思われるので要注目だ。
＃一言日記：最近映画は復刻ブームらしくサンダーバードも実写版で今夏公開される。ペネロープ役の女優があのピンクの６輪車と共に来日したらしい。あの車ロールスロイスと記憶していたが、今回はフォード車らしい。観るかどうかは微妙。
先週は「ロードオブリング」を観た。覚悟はしていたが長かった。まあ名作とは思う。
[2004/04/21 00:50]
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第３局
第３局も三たび中座飛車。深浦朝日としては第一人者相手に研究手を披露する絶好の機会だ。第２局と同様、囮▲３五歩戦法となった。
下図は新手披露の局面。
後手：深浦康市朝日
後手の持駒：角 歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・v飛 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 角 ・ ・ 飛|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治二冠
先手の持駒：歩
【手数＝37 ▲３五歩 まで】
図で後手は△６四飛と指した。
▲３五歩の飛車取りに対して角道に逃げる△６四飛が新手。ただし厳密には新手というのは語弊があって王将戦予選松尾vs木村戦で既に木村七段が指していた手とのこと。従来は△４六飛（以前は△５六飛あった）として敢て香を取らして△７三桂と右桂を活用するのが主流だった。
確かに△６四飛は飛車を逃げつつ駒損を避ける自然な手に思える。これでバランスが取れているなら駒損と駒の効率という２つのファクターを吟味する△４六飛よりも分かり易い。
難解な中終盤戦が展開されるかと期待されたがいきなり形勢は傾く。図は△４四歩に▲同角としたところ。
後手：深浦康市朝日
後手の持駒：銀 歩
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v飛v角 角 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 飛|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治二冠
先手の持駒：桂二 歩三
【手数＝57 ▲３八同金 まで】
ここから△２七角成▲２二角成△３八馬▲４六飛と進んだ。
△２七角成は▲同金なら△４四飛と角を抜く狙いだが▲２二角成と踏み込まれると一直線に先手勝ちコースになった感じがする。ちょっと深浦らしくない負け方だった。
85手で羽生の勝ち。名人戦が並列で進行してるが、朝日オープンが長丁場になりそうなので多忙の日々がまだ続きそうだ。
ところで、この第２局でも出現している囮△３五歩戦法だが、第62期名人戦第2局（羽生●−○森内）もやはり囮△３五歩戦法だった。
先手番での羽生の新構想（あったと仮定しての話だが）は、またしてもおあずけとなった。
＃一言日記：巨人阿部の月間ホームラン１６本は凄い。昨日（５月１日）の広島戦でもサヨナラHRを打った。仮に５月１日が４月３１日（４月が３１日まであったら）だったら新記録樹立だった。まだ勢いは止まってないようだ。
[2004/05/02 00:10]
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第４局
てっきり中座飛車一色で突っ走るかと思われた朝日オープンだったが、本局は角換り腰掛銀になった。ただし最近流行の後手１手損（本局は先手の角が８八の時点で後手から△８八角成と角交換する）作戦だ。
下図は仕掛けの数手後。見ごたえのある応酬が続く。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：角
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v香 ・v桂v金v歩v歩v銀v歩 ・|三
|v歩 ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 歩v歩 ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 銀 ・ 歩 銀 角 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 金 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手：深浦康市朝日
先手の持駒：歩
【手数＝52 △８五歩 まで】
ここから▲７四歩△８六歩▲７三歩成△３五銀▲同 角△同 歩▲３四歩△７三金▲３三歩成△同 金▲３四歩と進んだ。
銀取りに構わず▲７四歩が凄い手。更に角を切った後の▲３四歩も鋭い手で、３筋に拠点を作るのに成功した。
この後も難解な攻防が続いた。後手の反撃を躱し３筋の拠点を足がかりに読み切りの寄せに転じたのが下図。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v香 ・v金 ・v歩v歩 圭v歩 ・|三
|v歩 歩 ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・ 桂 ・|五
| 歩 金 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 金 ・ ・|七
| ・ 玉v歩v角 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・v馬 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手：深浦康市朝日
先手の持駒：銀二 桂 歩三
【手数＝96 △６八角打 まで】
ここから▲４二銀△同 金▲３四桂△３二歩▲４二成桂△同 飛▲３三銀△同 歩▲同桂成△８七歩▲７八玉と進んだ。
▲４二銀からはいよいよ寄せで▲３三銀と歩頭に打ち込み△同歩▲同桂成となって後手陣は受けなし。△８七歩以下先手陣に迫るものの角合いの妙手で詰みを逃れて123手で先手深浦の勝ち。勝負はファイナルラウンドに持ち越された。
深浦の精密な読みが印象に残る一局になった。好局と思う。
しかしWEBで噂にもなっているが△８七歩で△７六桂ならば詰みだったという。
深浦の信用度が高いが為に、羽生も半分諦めてしまったのか、等々考えてしまう。
まあ時間の切迫した状況ではしかたがないとは思うが、２日制の名人戦の檜舞台では読み切れるのだろうか。
＃一言日記：今年のGWは５月１日〜９日だったが、あと２日を残すのみとなってしまった。色々やりたいことはあったのだが、今回も持ち越しになってしまいそう。例えばHPの更新とか。
[2004/05/08 01:20]
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第５局
最近の番勝負では珍しくフルセットまでもつれ込んだ本局は振駒で羽生の先手に。戦型は横歩取りだが後手の飛車は８五ではなく８四に引いた。中座飛車全盛の中では珍しいか。
図は後手深浦朝日が△６三銀としたところ。先手の玉が駒落ちの上手の様な力強い印象を受ける。後手は横歩取りらしく飛角桂で細かな手を繋ぐことができるか、先手の大模様が実を結ぶかといった局面だ。
後手：深浦康市朝日
後手の持駒：歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v銀v角v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・v歩 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 角 銀 歩 ・ 金 ・|六
| 歩 歩 ・ 銀 ・ 玉 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治二冠
先手の持駒：歩四
【手数＝76 △６三銀 まで】
ここから▲４五桂△６二角▲３三桂成△同 銀▲４五銀△９四飛▲７四桂と進んだ。
▲７四桂まで進んでみると先手の押さえ込みが成功した形だろう。というか図では既に後手に手段がなく、ここに至るまでの後手の構想に問題があったと思われる。
111手で羽生の勝ち。新A級の深浦に対しまずは面目を保った。平行して行なわれている名人戦は１−３と角番に追い込まれているがこちらもフルセットまで観たいので頑張って欲しい。
実力者として知られている深浦にしてみればここで羽生を降してさらに株を上げたいところだったが、A級でもやれるという手ごたえは掴んだであろう。
＃一言日記：イチロー日米通算2000本安打達成！３０歳７カ月、１４６５試合目というから凄い。
[2004/05/26 01:20]
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