第1局
名人戦移転で今後が注目される朝日オープン、というのは置いておき、若武者阿久津五段が王者羽生にどこまで通用するか。今回朝日オープンで注目してみたい。
さて、第1局は矢倉になった。
図は中盤戦。先手が5筋の歩を突き捨てて飛車を回ったのに対し、対抗して△5二飛と受けたところ。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v飛 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v銀v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・v角 ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ 玉 金 角 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:歩
【手数=40 △5二飛 まで】
ここから▲5五飛△5三角▲5四歩と進んだ。
▲5五飛は気持ちの良い手。入城していない後手は飛車交換をするわけにいかないので△5三角の一手だ。
ここで前例は▲3七桂だが、羽生は▲5四歩!
成立すれば最強の手だが、代償なしで取りきられるとひどい手になってしまう。個人的にはまっさきに思考から排除してしまう類いの直接手だ。
しかし、咎める手段がなかったのか、この手を境に先手のペースになった。
前々回の朝日オープンで若手のホープ山崎七段が羽生に3タテを食らっていたが、阿久津はどこまでがんばれるだろうか。
#一言日記:TBSのアニメが面白い。「おおきく振りかぶって」はちょっと変わった野球マンガ。「地球へ…」は子供の頃に読んだことのあるSF。どちらも個人的にストライクゾーンなので観ようと思っている。
[2006/04/07 02:00]
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第2局
檜舞台で久しぶりに横歩取り中座飛車が登場した。後手羽生朝日の選択なので、何らかの思惑があったと推定するが、横歩音痴なので棋譜を並べてもさぱり分からず仕舞いだ。
図は序盤戦。△5六飛のぶつけに飛車交換できない先手が▲6六飛としたところ。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v金 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 飛 ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:角 歩
【手数=33 ▲6六飛 まで】
ここから△5二玉▲6八銀△7四歩▲2八銀△7二金▲3六歩△6二銀と進んだ。
△5二玉や△7二金は手損なので、横歩素人の選択肢としてはまず浮かばない手だが、本譜の様に7一の銀を使うために必要な手だ。
この後更に6四まで銀を活用するのが羽生の構想だったと思われる。この銀で飛車をいじめられれば良いが、本譜は3六に飛車を移動する展開になって、あまりうまい構想ではなかったということらしい。
図は△2四歩と合わせたところ。先に述べたように先手の飛車は3六にあり6四の銀は空振りした感がある。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v金 ・v玉 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂v銀v歩|三
| ・ ・v歩v銀v飛 ・ ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|六
| 歩 歩 桂 歩 歩 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 玉 ・ 金 銀 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:角 歩
【手数=48 △2四歩 まで】
ここから▲5六角△2五桂▲3四歩△3七桂成▲同銀△4四桂▲3三歩成△3六桂▲2三と△2九飛▲3九歩△4二金▲4五角と進んだ。
▲5六角が好手だったとのこと。△2五桂としたが▲3四歩が空振りのようでも早い手で▲4五角と捌いて先手優勢がはっきりした。
これで阿久津が1勝を返して面白い展開となった。
#一言日記:昨日は長男の授業参観。月曜は学校が代休なので、合わせて会社も年休にするつもりだったが、会社に言うのを忘れていた。けど休んじゃうもんね。
[2006/04/23 00:10]
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第3局
4月30日は昭和の日(緑の日だったような...)の振替休日。GWの前半戦に第3局は行われた。ネット観戦のチャンスだったが、家族サービス優先で先ほど棋譜を並べた。
後手阿久津五段は自ら角交換して向飛車に。56期王将戦第7局(羽生○vs●佐藤)と同様、▲6五角の是非が序盤の焦点だ。本局は下図でいきなり▲6五角とした。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:なし
【手数=11 ▲6五角 まで】
ここから△7四角▲5六角?△同角▲同歩△5二金左と進んだ。
△7四角は当然として▲5六角は意味不明な手だ。5六の地点で角交換になると、▲6五角に変えて▲5六歩とする局面と合流するからだ。
これが必然だとするとプロの指し手として疑問だ。▲5六角で▲4三角成と踏み込むのは角が死ぬのでない。とすると▲7四同角の予定だったのだろうか。謎だ。
図は9筋の歩を突き合ったところ。ここでも羽生の指し手は予想外だった。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v玉 ・ ・v金 ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ 歩 ・|六
| ・ 歩 銀 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:角
【手数=32 △9四歩 まで】
ここから▲5四歩△同歩▲3一角△2一飛▲7五角成△7二銀▲8六歩△5一飛▲8五歩△5五歩▲8四歩と進んだ。
一歩を損して馬を作るという手だが、これは後手がありがたいだろう。劣勢を意識した羽生独特の勝負手だろうか。
個人的には後手が指し易くなったと思った。しかし先手は羽生だ。後手が美濃を構築している間に8筋の歩を延ばしてきてた。
図は△6三金と高美濃に形を整えて5一の飛車道を通したところ。
先手が驚愕の手作りをする。
後手:阿久津主税五段
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v飛 ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩v金 ・v歩v桂 ・v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 馬 ・ 銀 ・ 歩 ・|六
| ・ ・ 銀 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治朝日
先手の持駒:歩
【手数=48 △6三金 まで】
ここから▲2五歩△同歩▲3六歩△5六歩▲3五歩△6五歩▲同馬△8七歩▲同金△5七歩成▲8三歩△同銀▲8四歩△同銀▲8三歩△7二玉▲3四歩と進んだ。
長手数進めたが、手を掛けて8筋の歩を切ったのはその一歩を3筋の桂頭に打つためだと分かる。
後手は5三にと金ができたのでまだ後手が良いと思っていたが、8三に楔の歩を打たれ、▲3四歩が実現したらもう形勢は分からなくなった。
本局の羽生の指し手は最近の佐藤棋聖のような自由奔放さを感じた。
佐藤流の羽生が制して2勝目を挙げた。
#一言日記:GW中休みを利用して歯医者に。親知らずの虫歯を治療。さて抜くことになるのだろうか?
[2006/05/02 00:40]
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第4局
第4局は角換り。先手阿久津五段があまり見たことのない駒組を披露した。
図はまだありきたりの角換り腰掛銀模様だが、次の一手がその第一歩。
後手:羽生善治朝日
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:阿久津主税五段
先手の持駒:角
【手数=28 △4四歩 まで】
ここで阿久津は▲5八飛。5五の位を取って後手の腰掛銀を退却させる狙いだ。後手の攻めを牽制するどちらかと言えば受け重視の手だが、意欲的な手だと思う。
飛車はこのあと間もなく5九に行った。隙がなく受け重視の構えを目指したはずだが、後手に仕掛けを許してしまう。
図は▲5六銀としたところ。5六の銀は好形ではあるが...。
後手:羽生善治朝日
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ 飛 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:阿久津主税五段
先手の持駒:角
【手数=39 ▲5六銀 まで】
ここから△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛▲6六歩△同飛▲6七金△7五角と進んだ。
△8六歩から飛車で横歩を取る手があった。飛車は死にそうだが、その間に一仕事できれば成立している。
羽生の猛攻が始まった。6五の桂が先手陣を睨んでおり、先手陣は風前の灯火。
図は露骨に△6九金としたところ。
後手:羽生善治朝日
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・v桂 歩 ・v歩 桂 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 ・ 銀 ・v角 ・ 角 ・|七
| ・ 玉 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v金 飛 ・ 金 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:阿久津主税五段
先手の持駒:飛 歩
【手数=62 △6九金 まで】
ここから▲4九飛△3六角成▲3三歩△6八金▲7一飛△5一銀打と進んだ。
一瞬の間隙に放たれた▲3三歩。先手待望の反撃だが、手抜かれてしまった。▲7一飛に△5一銀打が強防手で、3二の金を取られても後手陣が弱体化した感じがしない。
この後先手は攻めるもののあまされて終局となった。
終わってみれば羽生貫禄の4連覇。新鋭にとって羽生の牙城は大きいことを再認識するシリーズとなった。
#一言日記:名人戦共催で、朝日オープンは今回で発展的解消となるようだ。次の棋戦に期待。
[2006/05/18 01:10]
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