第１局
羽生二冠(王位王座)のリターンマッチとなった今期棋王戦。谷川vs羽生のこのカードは依然として最も人気のあるカードだろう。
羽生は同時進行中の王将戦でも３連勝中で一時唱えられていた不調節を完全に払拭して棋王戦に臨む。日程過多が唯一の心配材料か。
さて本局は後手の羽生が四間飛車を選択し、先手の谷川は▲５五角と早めの６四角を咎める作戦に出た。最近の対四間飛車の趣向としておさえておきたい戦法だ。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：なし
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉v金v飛v銀 ・ ・|二
| ・v歩v歩v銀v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：なし
【手数＝23 ▲３五歩 まで】
△６三銀を見て▲６六歩と持久戦にする手もあるのだろうが手詰まりに陥りやすく先手の作戦としては面白くないだろう。そこで▲３五歩と急戦を仕掛ける。ここから一歩も妥協を許さない凄い将棋になった。２筋と４筋で互いに飛車を成り合って下図。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：角 歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v玉v金 ・v銀 龍 ・|二
| ・v歩v歩v銀v歩 ・v桂 ・v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ 銀 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・v龍 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：角 歩四
【手数＝39 ▲２二飛成 まで】
ここから△２一歩▲３二龍△１四角▲３三銀成△５八角成▲同 金△同 龍▲７七玉△５七金▲９六歩と進んだ。
△２一歩は本譜の進行通り、３二の銀を取ったら△１四角の切り返しを見た手だ。▲１一龍は気が利かないので、こうされたら勢い▲３二龍と行くしかない。光速流も当然とばかり▲３二龍。後手は二枚の金を剥がして先手陣に迫るが果たして寄せはあるのだろうか。
▲９六歩が落ち着いた好手で先手陣は広く切れ模様ではないだろうか。だとすると△２一歩が疑問ということになる。
下図は終盤戦。あとは光速流がどうフィニッシュするかだけと思われたが...。
後手：羽生善治二冠
後手の持駒：金 歩二
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v歩v香|一
| ・ ・ ・v玉v金 ・ 龍 ・ ・|二
| ・v歩v歩v銀 ・ ・ 全 ・v歩|三
| ・ ・v桂v歩v歩 桂 ・ ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 玉 歩 ・v金 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・v龍 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：角 歩四
【手数＝60 △５四歩 まで】
ここから▲９八玉△９六歩▲５二桂成△同 銀▲３五角△４四歩▲同 角△６三玉と進んだ。
一気に決めるかと思ったので▲９八玉は意外。早逃げの手筋ではあるがその効果はどうなのだろう。△６三玉がぎりぎりの受けでこの辺りで形勢は逆転したと思われる。
86手で羽生の勝ち。短期決戦なだけに谷川棋王は苦しくなった。本局が一直線勝ちを目指せる将棋だったとするならば光速流に狂いが生じているのかも知れない。杞憂であれあれば良いのだが。
個人的に興味深い将棋になったが▲３二龍が成立するか否かがこの変化の重要なポイントだろう。
＃一言日記：明日は休出確定。さすがにもう寝ねば。
[2005/02/05 02:30]
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第２局
第２局は矢倉模様となったが先手羽生三冠が意欲的な駒組を見せた。
後手：谷川浩司棋王
後手の持駒：なし
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金v銀 ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v金 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 銀 玉 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 角 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治三冠
先手の持駒：なし
【手数＝20 △４二角 まで】
ここから▲７七玉△３三銀▲６七金△８四歩▲８八玉△８五歩▲７七金と進んだ。
羽生は▲７七玉から最短で美濃を完成させた。挑発とも取れるこの展開は、谷川棋王でなくても咎めたくなる。
とりあえず銀を繰り出せば攻めの銀と守りの金駒の交換はほぼ約束されている。本譜もそうなった。
図は角を覗いたところ。
銀交換はしたものの単純な角の覗きに困っている局面かもしれない。彼我の玉形の差もあり後手がでかしているとは言えない局面なのかもしれない。
後手：谷川浩司棋王
後手の持駒：銀 歩
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五
| ・ 歩 歩 歩 歩 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 金 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手：羽生善治三冠
先手の持駒：銀 歩二
【手数＝51 ▲４六角 まで】
ここから△５五歩▲同 角△６四銀▲４六角△８六歩▲８三歩と進んだ。
ここで銀を手放して角を弾いたが、これではせっかく交換した銀を使ってしまっており本意でななさそうだ。
▲８三歩からまったり指されて形勢が傾いてしまったようだ。
79手で羽生の勝ち。四冠まであと一勝となった。
谷川はやはり調子が悪いのだろうか。今の羽生相手に３連勝するのは至難と思われるが、もうひと頑張りはしてほしい。
＃一言日記：ここ数日微熱と咳が止まらない現象が続いていたが遂に今日は寝込んでしまった。金曜日にインフルエンザあがりの二人と飲みに行ったのが行けなかったか。
[2005/02/20 23:10]
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第３局
先月２６日に行われた第３局は98手で羽生が勝ち王将戦に続き３連勝と土付かずで棋王戦を奪取した。これで羽生は王位王座王将に続いて４つ目のタイトルとなった。
谷川はまたしても無冠になってしまったが、今の調子では羽生相手の番勝負はちょっとむずかしかったか。羽生相手に結果が出せれば強力なカンフル剤となったのだが。
さて遅まきながら第３局を振り返ってみようと思う。
背水の陣である谷川は相掛りから飛車を下まで引き銀を３六に構える作戦を採用した。
３六の銀は悪形と言われるがここは仮の位置で後手の出方によって２五銀から棒銀に出て強く戦うか、４七銀と引いて陣形を整えるかいずれかになる。
本局は後者になったが、先手が自ら角交換し、▲３三角成△同桂としたので２五銀の余地がなくなり必然的に４七銀型となった。
下図は８四の飛車を△８一飛と引いたところ。ここから先手が仕掛けた。
後手：羽生善治三冠
後手の持駒：角 桂 歩
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀 ・v歩 ・v銀v歩|三
|v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・ ・ 歩|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 銀 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：角 桂 歩
【手数＝56 △８一飛 まで】
ここから▲４四歩△同 歩▲４五歩△７五歩▲４四歩△６五角と進んだ。
４筋の継ぎ歩は４四桂が狙いだが、△６五角が狙いの分りにくい羽生らしい角打ちだと思う。
図は先手の攻めに乗じて後手が反撃をしたところ。
後手：羽生善治三冠
後手の持駒：桂 歩三
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・v銀v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v角 歩v歩v歩 ・|四
| ・v桂 ・ ・v歩 ・ ・ 歩 歩|五
| 歩 ・v歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 銀 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：角 桂
【手数＝68 △８五桂 まで】
ここで先手の指し手は▲５九玉だった。
△７七桂打を避ける早逃げだったが、この手があるなら△８五桂では△７七桂打だったとのこと。△８五桂の方が力を貯める自然な手に見えるがプロの目は違う。
なお▲２四歩は△２七歩〜３五桂の筋があるので指し過ぎになるかもしれないとのこと。
図は▲７五桂と打ったところ。
後手：羽生善治三冠
後手の持駒：桂 歩四
９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ 歩 ・v銀 ・|四
| ・v桂 桂 ・ 飛 ・ ・ ・ 歩|五
| 歩 ・v歩 歩 ・ 銀v角 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 銀 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手：谷川浩司棋王
先手の持駒：角 歩四
【手数＝79 ▲７五桂 まで】
ここから△５四銀▲５六飛△５三歩▲５五銀△４六歩▲４三歩成△同金左▲４六飛△５八角成▲同 玉△５五銀▲４三飛成△同 金▲６三角と進んだ。
最後は▲６三角で王手飛車が掛かっているがこれは形作り。△５四銀▲５六飛△５三歩とされて先手は手に窮した様だ。
戻って図の▲７五桂では▲１六桂が有力で、これなら例えば△３三銀なら▲３五飛△２七角成▲２五飛の順で飛車が成れる展開になりまだ難しかった様だ。
明日４日は順位戦最終局。ここまで羽生四冠と藤井九段が６勝２敗でトップを走っており、羽生は深浦八段と藤井は佐藤棋聖と対局する。こちらも目を離せない。
＃一言日記：ようやく復調の兆し(オイラの体調に)が見えてきたが、先日息子がＢ型インフルエンザを発症。う〜やはりインフルエンザだったか。息子よスマン。
[2005/03/03 01:00]
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