第1局
今期棋王戦は森内名人が挑戦者に名乗り出た。相変わらず勝ちまくっている(18連勝中)羽生棋王は順位戦でも7勝1敗で谷川九段と同率首位。場合によっては名人戦の前哨戦になる可能性もある。そういう意味でも互いに負けられないシリーズとなった。
羽生先手の第1局は最近再び脚光を浴びている矢倉森下システム。先手は1筋を突き捨てて攻めた。図は桂取りの2四歩を▲2四角と取ったところ。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉v香|二
| ・ ・v角 ・ ・v金 ・ ・ ・|三
| ・ ・v歩v歩v歩v歩v歩 角 ・|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:銀 歩
【手数=63 ▲2四角 まで】
ここから△2三銀▲4六角△4五歩▲5七角△6五歩▲4六歩△2四歩と進んだ。
果敢に攻めている先手だが、ちょっと息切れしている感じがする。△2三銀に▲4六角と引いたのは本譜のように△4五歩と突かせて▲4六歩と反撃する狙いだが、後手は既に同様の形(△6五歩)を得ており、攻守が変わりそうだ。
図は△5八馬と入ったところ。互いに角で飛車を取り合っているが手番は後手。楔の△6六桂も入っておりもはや完全に後手が攻める展開になっている。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:飛 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ 馬 ・ ・ ・v銀 ・v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・v金v香|三
| ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩v銀 ・|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ 歩 ・ ・v歩|五
| ・ 銀 歩v桂 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 ・ 金v馬 ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:飛 銀 桂 歩三
【手数=92 △5八馬 まで】
▲6九銀△6七馬▲同金△4八飛▲6八飛△5八金▲7七銀△4九飛成▲5八銀△同桂成▲7八飛△8六歩▲同銀△6六銀と進んだ。
さらに進んで下図。攻防の▲4八香に△5九角としたところ。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:香 歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v玉v歩 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v金v銀 ・ ・|三
| ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ 金|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ 歩 ・v金v歩|五
| ・ 銀 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 飛 ・ 馬 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 香 ・ ・v龍|八
| 香 桂 ・v圭v角 ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:銀 桂 歩
【手数=138 △5九角 まで】
ここで先手は▲4九銀。
前譜の▲6八飛の自陣飛車といい、ここでの▲4九銀といい、なりふり構わない受けの手だ。まるで若かりしころの羽生のようだ。
しかし森内名人が終始リードを保ち、166手と手数は掛かったものの勝利した。
羽生の連勝記録は18でストップした。
#一言日記:CPUにintelのCPU搭載のMacが発売された。PowerBookの後継MacBookとコンシューマデスクトップiMac(こちらは名称変わらず)だ。PowerPC搭載時は上位のデスクトップ/ノートはPowerMac/PowerBookと称していたが、PoweBookはMacBookになっていた。いまいち行けてないネーミングだな。この法則だとPowerMacはMacMacになってしまうのだが。
[2006/02/08 01:55]
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第2局
第2局の後手番羽生棋王は四間に振った。となると先手は居飛穴を目指すわけだが、後手の作戦は銀冠穴熊だった。
図は△9八香と銀冠の香車を上がったところ。既に先手の穴熊は完成している。
後手:羽生善治棋王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v香v玉v金 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 金 銀 歩 歩 ・ 歩|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:なし
【手数=34 △9二香 まで】
ここから▲3六歩△9一玉▲3八飛△3二飛▲5五歩△7四歩▲5六銀△5一角▲6五歩△7三角▲4六歩と進んだ。
後手の主張は2つあると思われる。一つは△9五歩と9筋の歩を突き越していること。居飛穴に対して9筋の歩を突き越してから四間飛車が穴熊に囲う作戦は一時は注目された。しかし居飛穴が銀冠穴熊に組み換えた後▲9六歩からの逆襲する手が指されるようになって下火になった。本譜はこれをふまえての作戦と思われる。
もう一つは角を5一→7三に転換すること。このためには角の軌道上に駒があってはならず、▲3六歩に呼応して△3二飛としたことと、左金を5二で保留したことでスムースに△7三角型を実現している。
しかし先手にも▲5六銀▲6五歩と十分に組まれており後手の趣向は成功したとはとても言えない。居飛穴相手としては最悪の展開にすら思える。
駒組の段階で既に将棋は終わっている。後手羽生の四間飛車ということでWeb中継を注目していたのだが、羽生の意図はどのあたりにあったのか。疑問だけが残る第2局となった。
131手で森内の勝ち。森内強し。羽生に2連勝。
#一言日記:iPodnanoの1G版登場。これにともないiPodshuffleの価格が改訂された。フラッシュの値段も安くなったものだ。あんなに安くできるはずないんだけどなあ。
[2006/02/12 23:20]
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第3局
わずか3日前には王将戦を戦っている羽生棋王。18連勝と好調(羽生にしてみれば順調か)だったがここにきて王将戦と棋王戦で4連敗中である。特に棋王戦の方は2連敗と崖っぷちだ。
そんな状況での棋王戦第3局は一手損角換りになった。
図は後手が9筋7筋と歩を突き捨てて△6五桂から先攻してから数手後の局面。後手の攻め先手の受けという展開になった。▲6六歩と桂取りで後手の攻めを催促しているが、もちろんこの桂馬は簡単には取りきれない。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| 歩 ・ 歩v桂 ・ 歩 ・ 歩 歩|五
| ・ ・ ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 銀 ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:角 歩二
【手数=51 ▲6六歩 まで】
△9五香▲同香△7七歩▲同桂△8六歩▲9二香成△8四飛▲7三角△8三飛▲8二角成△8七歩成と進んだ。
香を走ったのは本譜の攻めではもう一歩必要だから。しかしその香で飛車を追われる展開となり、▲8二角成の飛車取りに飛車を見切って△8七歩成と攻めたが、先手に入玉模様で指されると無理筋だった気がする。
139手で羽生の勝ち。とりあえず一回崖っぷちを凌いだ。羽生は引き続き棋王戦、王将戦、さらにA級順位戦と勝負将棋が続く。
#一言日記:プロ野球はオープン戦も始まりWBCも目前、いよいよ今シーズン始動といった感じだ。我が中日ドラゴンズは公式ファンプラブが発足するそうで、マスコットキャラクタは宮崎駿監督デザインだそうだ。
[2006/02/27 00:10]
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第4局
5番勝負には滅法強い羽生棋王だが、今期棋王戦は追いつめられている。3連敗ごようやく1勝取り戻したがなお土俵際だ。王将戦の方も3連勝後3連敗で後がなくなっている。
そんな中の第4局は後手羽生棋王の一手損角換りに。腰掛け銀から攻め合いになったが、後手が少しずつ無理をしている展開だったようだ。
下図は△3九角としたところ。駒割と玉形の差を鑑みると素人考えでは後手もまんざらではないと思ってしまうのだが。
後手:羽生善治棋王
後手の持駒:銀 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩v金v銀v歩 ・|三
|v歩v歩v歩 馬v銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 金 ・ ・|六
| ・ 歩 金 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・v角 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:銀 桂 歩四
【手数=62 △3九角 まで】
ここから▲2九飛△5七角成▲3五桂△4七馬▲2六飛△6九馬▲7八銀進んだ。
先手はあくまで飛車を2筋で攻めに使うつもり。▲7八銀と強く受けて先手を取った。
少し進んで下図。△3四金として飛車先を通したところ。
後手:羽生善治棋王
後手の持駒:歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 馬 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v銀v歩 ・|三
| ・v歩v歩 ・v銀 ・v金 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 歩v歩|五
|v歩 歩 歩 歩 ・ ・ 金 ・ ・|六
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 桂 ・ ・|七
| 玉 ・ 銀v馬 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂v銀 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:香 歩四
【手数=78 △3四金 まで】
ここで先手は▲4六香。
攻防だった。後手は△4五歩とするしかない。いずれは取られてしまうが相当手を稼いでおり、犠打の見本のような手だった。
117手で森内名人の勝ち。棋王を奪取して二冠となった。名人戦を前に万全の様だ。
一方羽生は三冠に後退。しかし今後もA級プレーオフ、王将戦第7局、朝日オープンと勝負将棋が目白押しだ。
#一言日記:WBCはいよいよ二次予選でアメリカ等強豪と当たる。韓国相手にあの体たらくでは先が思いやられるが勝負はやってみなければ分からないので注目している。
[2006/03/12 23:55]
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