第1局1日目
羽生善治王将に佐藤康光九段が挑戦する王将戦が始まった。2月から開催の棋王戦も同一カードなので最長12連戦の開幕戦と言える。
このカードならではの格調高い居飛車戦かと思いきや...。
羽生先手で始まった第1局の出だしは
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二飛!
そう後手の佐藤康の作戦は三間飛車。これには驚いた。後手番故の苦渋の選択か、それとも秘策?
封じ手の局面は下図。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v銀 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 ・ 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:なし
【手数=35 ▲6九金右 まで】
図の数手前の折衝で後手がポイントを稼いだ様に思える。
すなわち▲5九金と寄った時に△7三桂と6五桂の両取りを見せて、やむを得ない▲6八角(5九に引けない、また▲8六角はつまらない)に△6五歩としたのが先手の手を制約する巧い手順に思えるからだ。
しかし先手はなんといっても穴熊なのでまだまだ優劣は不明か。
#一言日記:最近PowerBookのACアダプタを抜くと即落ちてしまうことに気が付いた。検証の結果バッテリーが逝ってしまったことが判明した。
バッテリー駆動出来ないノートなんて悲しいので、アップルの「在宅自己修理サービス」なるものでバッテリーを交換することにした。17000円也(T_T)。
[2002/01/17 01:00]
第1局2日目
封じ手は△8一玉。
△8一玉では捌く将棋にするなら△4五歩もあるところかもしれない。玉を囲うなら△8二玉か△8一玉だが、一般にこの手は角道を避ける含みがある。しかし△8一玉には遠大な構想の序曲だったとは!
下図は▲2六角としたところ。後手は3筋の歩を取られる代償に玉頭に盛り上がっている。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v玉 ・v金v角 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v銀v金 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩 歩 ・ ・|四
|v歩v桂v銀 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・v歩 歩 歩 銀 ・ 角 ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:歩三
【手数=55 ▲2六角 まで】
ここから△5三金▲5七銀△7四銀▲3六飛△9三香▲3七角△9二飛と進んだ。
△5三金と寄ったところでは後手の金銀がバラバラ、しかも歩切れで歩損。とても後手を持つ気はしない。しかしおもむろに△9三香〜△9二飛と飛車を端に振り戻したのが面白い構想だった。
一方歩得の先手はこの辺りで来るべき端攻めを受け切る方針を固めたのかもしれない。その気持ちのあらわれが▲5七銀にあるのでは?攻める気持ちがあるなら▲5七銀では▲4五銀という手もありそうだからだ。
端攻めの体勢は整えたものの歩切れのためチャンスを伺っていた後手だが、いよいよ△6四角と角交換を挑んで本格的な戦いに突入した。
依然として歩切れの後手は△6九角(7八の金取り)から△4七角成と馬を作った。一見ただ馬を作っただけの手に思えたが△2九馬〜△1九馬と桂香を拾って端攻めの小道具を揃える意味があり、さらに自陣にも利いているので好判断だったようだ。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:銀二 桂二 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v玉v歩 角 ・ ・ ・ 龍v香|一
|v飛 ・v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・v金 ・ と ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・v銀v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 香 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 歩|七
|v歩 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・v馬|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:銀 桂二 香二 歩三
【手数=107 ▲8八玉 まで】
上手はいよいよ後手が端攻めを決行して、△9八歩に▲8八玉とかわしたところ。ここで決め手が出た。
△9七飛成!
▲7七玉は癪なので▲同玉としたが何と先手玉は即詰みに打ち取られてゲームセット。
受け切れると思った羽生王将に何か誤算があったのかもしれないが、本局は佐藤康九段の快勝譜と思う。
端に飛車を振り戻す構想は素人受けはするが、実際に指すには相当勇気が必要だ。王将戦リーグを無敗で駆け抜け、他棋戦でも絶好調な佐藤康九段。本局を見た限り好調は持続していると判断してもよさそうだ。
#一言日記:18日(今日)は職場の新年会。翌19日は人間ドック。呑んでも良いのかな?
[2002/01/18 01:00]
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第2局1日目
羽生−佐藤戦といえば印象に残っているのは竜王戦。巷は羽生フィーバーでマスコミも相当の頻度で取り上げておりNHKのドキュメントなどもあったと記憶している。将棋の内容は覚えていないが両者の波長がとても合っていて、難解な変化の細部まで一致しているのに驚いたものだ。
さて第2局、さすがに振り飛車戦とはならず相掛りになった。先手の佐藤九段は2筋の歩を交換して飛車を2八に引いた。さらに3八〜2七に銀をくり出す積極的な序盤だったが、対する後手も早々と△3三桂と跳ね、珍しい後手番のひねり飛車となった。
封じ手の局面は下図。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・v銀v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v桂v歩v角|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v歩|四
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 銀 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 銀 ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 角 玉 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:歩
【手数=39 ▲1六歩 まで】
一見先手の陣形が薄くて、羽生王将とすれば後手番としてはまずまずの展開という気がするが、第1局のバラバラな陣形から見事に穴熊を攻略した佐藤九段のことだ。バランスはとれているのだろう。
#一言日記:ニュースステーションを見ながらこの原稿を書いている。ゲストの青木功との対談の後久米宏の一言「コマーシャルの後、出来るだけゴルフ?」
[2002/01/25 23:15]
第2局2日目
封じ手は△4四歩だった。以下、▲6八角△6四歩▲7九玉△4五桂▲5八飛△3六歩と進んだ。
△4五桂は決断の必要な手だ。△3六歩で角交換となり一気に局面が動いた。
下図は3八の飛車を▲3九飛車と引いたところ。後手は数手前に放たれた△6三角の狙い筋を決行した。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v飛 ・|一
| ・ ・v銀 ・ ・v銀 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v角v歩v金 ・ ・v香|三
| ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩v歩|四
| 歩 ・ ・ ・ ・v桂 歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 銀 歩 角 銀 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ 飛 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:歩二
【手数=61 ▲3九飛 まで】
以下、△3七歩▲同 桂△5七桂成▲同 銀△3六角▲2五桂。
本譜の△3七歩〜△5七桂成の手順で3六の取りが受からないが、▲2五桂が狙いすました返し技だった。これで先手がリードした。
91手で羽生が投了した。指し続けてもじり貧となると判断したか投了には早いと感じる投了図となった。
これで挑戦者の連勝となった。佐藤九段は好調を持続している様だ。一方の羽生王将の指し手がちょっと淡白なのが気になるがこのままでは終わらないだろう。
#一言日記:キャンセルしたはずのYahoo!BBからモデムが届いた。わりとよくあるトラブルだそうだ。
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第3局1日目
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛!
驚いた。またしても驚いた。第3局、佐藤康九段は第1局の三間飛車に続いて今度はゴキゲン中飛車を採用したのだ。佐藤康九段といえば生粋の居飛車党と思っていたのだが...。
封じ手の局面は下図。いかにも何かが起きそうな局面だ。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v銀 ・ ・v金v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v桂v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角
【手数=26 △3二金 まで】
#一言日記:第1局の感想で羽生王将は「根本的に作戦が悪かった。1日目の封じ手の時に感じた。ずっと、互角の気がしなかった」と語っている。どう見ても互角に見えるのは棋力が足りないから?
[2002/02/13 00:10]
第3局2日目
封じ手は▲5八金。更に△6四銀▲7六銀と進んだ。7筋の位を確保して▲6六〜6五歩まで指せれば先手が指し易くなりそうだ。
後手は飛車を2一〜4一へと移動して△4五歩と仕掛けた。局面の打開を意図したのかは定かではないが▲4五同歩に△同飛と取ったのが誘いの隙っぽい手だった。先手も▲2一角と応じ一気に局面は動いた。
図は△4六歩としたところ。ここから数手がおそらくハイライトだろう。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:角 銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v銀 ・ ・ ・ 龍|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・v飛 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 銀 歩 ・v歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 香 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:角 金 歩二
【手数=52 △4六歩打 まで】
図から▲2四角△4七歩成▲3三角成△3一香!▲同 龍△4二銀打▲7四歩!!。
この辺りは大盤解説などでリアルタイムで観戦していたらまさに一手指した方が良く見える応手の連続に堪能したに違いない。
△3一香があまり見かけない手筋で▲同龍に△4二銀打で後手の術中にはまったと思ったが、そうではなかった。▲7四歩が両取り逃げるべからずを地で行く好手だった。
以下△3一銀▲7三歩成に△同玉と顔面で受けたが▲3四馬が飛金両取りになって先手優勢がはっきりした。
85手で先手の勝ち。羽生がようやく棋王戦とのダブルタイトル戦で1勝をあげた。
#一言日記:アップルがMPEG-4に対応したQuickTime6を発表するらしい。OS9には対応してくれるのかな?
[2002/02/14 00:20]
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第4局1日目
第4局は横歩取り(取らせ?)の中座飛車。この戦型、ココでは「8五飛車戦法」と呼んでいたが、必ずしも後手の飛車が8五に引くとは限らなくなったので「中座飛車」と呼ぶことにする。
さて、この大流行しているこの戦法だが四間飛車オンリーの自分は完全に蚊屋の外なのだ。でもちょっと待てよこの将棋、どこかで見たことがあるぞ。と思って探してみたら週刊将棋2/13号にありました。
A級順位戦の佐藤康vs谷川戦[佐藤康勝ち]。
つまりこの将棋は佐藤九段の研究手順でしかも谷川九段に勝っているのだ。それを敢えて羽生王将が後手の谷川九段側を持って指したというわけ。
下図が封じ手の局面。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 飛 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 角 ・ ・ ・v飛 ・|六
| ・ 金 桂 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 玉 銀 金 歩 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:角 歩二
【手数=49 ▲2八歩打 まで】
週刊将棋の記事ではここの数手前の図しか載ってないので推定だが谷川戦では48手目まで同一で49手目の▲2八歩では▲2七歩。
▲2八歩と控えて打って手を変えたのが佐藤九段というのも面白い。一見▲2八歩の方が右辺が狭くて損に見えるけど...。
ちなみに週刊将棋によると、佐藤vs谷川戦は下図の様に進んだ。
後手:谷川浩司九段
後手の持駒:飛 角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 金 桂 ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 玉 銀 金 ・ ・|八
| 香 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:角 銀 歩二
【手数=55 ▲7九飛打 まで】
▲7九飛の自陣飛車が素人には真似の出来ない好手だったようだ。
さて本局だが狙い筋の△3四歩を直ぐやるか▲3三角成を消す意味で△6六飛▲同歩に△3四歩とするかどちらかしかない気がするがはたして。
#一言日記:さらに週刊将棋の池崎記者の記事は「第2図(【手数=55 ▲7九飛打 まで】の図面です)の局面の優劣がはっきりしないので、今後また同一局面が現れるかもしれない」と結んでいる。なかなか凄い眼力と思います。
[2002/02/21 00:10]
第4局2日目
封じ手は△3四歩だった。以下▲1五飛△1四歩▲1六飛△2四飛▲3三角成△同 銀▲6六飛△3五歩▲8八金と進んだ。
飛車を持ち合う激しい変化にはならず、盤上の飛車をどう捌くかというやや穏やかな流れになった。▲8八金は落ち着いた手だ。
図はさらに数手進んだ局面。△6四飛と飛車をぶつけたのに対し▲2六飛としたところ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v銀 ・ ・|三
| ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ 歩 ・ ・ ・v銀v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|六
| ・ ・ 桂 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 金 ・ ・ 玉 銀 金 歩 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:角 桂 歩
【手数=63 ▲2六飛 まで】
以下、△3一玉▲2三桂△4二玉▲1一桂成△8六歩▲6六歩と進んだ。
△3一玉は▲2三桂が見えているだけに大胆な手だが、本譜のように歩は8筋で攻めに使った方が良いという判断だったようだ。しかし現実の駒得は大きくここでは先手を持ちたい気がする。
▲6六歩が好手だったらしく、局後羽生に「チャンスらしいチャンスは一度もなかった。▲6六歩と指されダメになった」 と言わしめた手だ。
ここからさらに熱戦が続いだが151手で先手の勝ち。佐藤九段が3勝目をあげた。
気になるのは羽生のコメントだ。この151手も続いた熱戦も69手目以降はダメだという。素人目には羽生マジックか?と思わせる手も随所にあったし、佐藤九段も指せそうとは思いつつもずっと難しい将棋と認識していた様だ。
第一局でも随分早い段で形勢を悲観しているし、ちょっと気になる。
#一言日記:XBOXって凄いの?
[2002/02/22 00:30]
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第5局1日目
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲1六歩△7二銀▲3八銀△8六歩▲同 歩△同 飛▲8七歩△8二飛▲1五歩。
いきなり初手から入ったが、先手羽生の▲2六歩で始まった第5局、先手がなかなか飛車先の歩を切らない珍しい展開だったので初手から記載した。相掛りとなったが、先に飛車先の歩交換を果たしたのは後手。先手は早めに1筋の位をとったのが趣向だ。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v角v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩v金v歩v歩|三
| ・v銀 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五
| 歩 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 角 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 玉 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:歩
【手数=40 △8四銀 まで】
結局ねこ式の要領で3六飛としてからのひねり飛車となったが、ここに至る手順が珍しく既に未知の局面と思われる。
図が封じ手の局面。1時間21分の長考の後、羽生が手を封じた。早くも勝負所の様だ。
#一言日記:Jリーグって10年目なんだってさ。
[2002/03/05 00:30]
第5局2日目
封じ手は▲6六飛。以下△5二金▲7六銀△5三銀と進んで、訳の分からない完全な手将棋となった。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・ ・v桂 ・v角v玉v桂v金v歩|三
|v歩v銀v金v銀v歩v歩v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 飛 ・|六
| ・ 銀 桂 歩 角 金 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:歩二
【手数=77 ▲5七角 まで】
図は77手目の局面。
封じ手の局面からは想像もつかない将棋となった。この辺りは理解不能。よって解説も不能。強いて言えば7筋の位を取っているのと、ひねった飛車を2筋に戻されていることを考えると後手持ちか?
壮大な構想が実現しつつあると感じるのは、あの第1局のインパクトが強すぎるからかもしれない。
後手はまるで駒落ちの上手のように玉を5二〜6三へと移動した。金銀が三枚いるので棋理に叶っている指し方だ。いったいどこから戦いが起こるのだろうか?
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v金 ・v玉v角 ・v桂v金v歩|三
|v歩v銀 歩v銀v歩 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩v歩v桂v歩 ・ ・ 歩|五
| 歩 桂 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 金 ・ 角 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:桂 歩
【手数=102 △5五桂打 まで】
図は102手目の局面。先手は7四に楔の歩を放ったが8六の桂が死にそうだ。しかし佐藤九段の手は8筋には目もくれず△4五歩。対して反撃の▲6六歩に△5五桂とした局面だ。本局の命運を掛けた思いきった手だ。一気に決戦の雰囲気が漂って来た。
△4五歩も敵の玉頭を攻めると同時に△2六角(王手)を可能にした味の良い手だが、▲6六角が可能になると3三の金にあたるのでこちらも思いきった手と言える。
後手:佐藤康光九段
後手の持駒:歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v金 ・v玉v角 ・v桂v金v歩|三
|v歩v銀 歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・v歩v歩v銀v歩 ・ ・ 歩|五
| 歩 桂 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 金 桂 角 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:桂 歩
【手数=105 ▲6七桂打 まで】
図は105手目。以下△2六角▲5八玉△6六銀▲同 金△同 歩▲同 角△4六歩▲7五桂△5二玉▲6三桂成と進んだ。
▲6七桂は一見飛車筋の影になっているが本譜の順で一気に捌けた。▲6三桂成(△同玉は▲3三角成が空き王手)となっては勝負ありだ。127手で羽生王将が勝って角番を凌いだ。
△5五桂の犠打と後手玉の位置を逆手に取った羽生王将の差し回しが印象に残る一局となった。
#一言日記:本局の戦型分類はひねり飛車から相掛りに変更しました。
[2002/03/06 00:45]
※図面修正[2002/03/10 17:00]
|王将戦に戻る|
第6局1日目
個人的に王将戦でも1局くらいは四間飛車を見たいと思っていたら、第6局は居飛穴vs四間飛車になった。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v銀v玉 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 角 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:なし
【手数=25 ▲8六角 まで】
図は▲8六角と角を覗いたところ。△6四歩を牽制する意味があるが、角が8六のままでは仕掛けることもできない。結局このまま駒組が進んで先手は居飛穴に後手は銀冠に組上げ、藤井システムに代表されるような急戦にはならず持久戦になった。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
| ・v玉v金v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v歩v歩 ・v角v歩 ・|三
|v歩v歩v歩 ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 角 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 金 銀 歩 桂 ・ ・|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:なし
【手数=44 △6二金左 まで】
図が封じ手の局面。先手は仕掛けに苦労しそうな感じがする。また端歩を突いているし▲6七金型なのであまり堅くもない。後手からしてみれば千日手も視野に入れるなら先手に追従していればよいので、気が楽な展開と言える。
してみると▲8六角として△6四歩を牽制する本譜の指し方はあまり得策ではなかったかもしれない。
注)あくまで振り飛車党の偏見に満ちた大局観に基づいています。
#一言日記:ムネオ一色の一日だった。
[2002/03/11 23:45]
第6局1日目
封じ手は▲4八飛。以下△4四角▲2八飛△3三角▲6八金引△6四歩。千日手含みの手順を経ているので実質的に1日目の最終局面からの継続手は▲6八金引といえる。
▲6八金引は居飛穴としては是非とも指しておきたい手だ。角の退路が限定されたところで△6四歩が踏み込んだ手だった。この手自体は1日目の最終局面でも狙い筋としてあったが、行くとすれば▲6八金引の時の方がタイミング的に良さそうだ。狙いは取らせて△8五歩。
先手も堂々▲6四同角と取ってどちらからともなく千日手模様は解消されて局面が動きだした。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
| ・v玉v金v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂 ・v歩 ・v角 ・ ・|三
|v歩 ・v歩 角v銀 ・v歩v歩v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ 桂 ・ ・|七
| 香 銀 ・ 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:歩
【手数=55 ▲4六歩 まで】
2筋の突き捨てをそつなく入れて▲4六歩としたのが図の局面。
以下△同 歩▲同 角△8六歩▲4五歩△6五歩▲8六歩△6六歩▲7八金直△3五歩▲同 角△6五桂と進んだ。
ここは△6三金直(歩もある)とする手も当然考えられるが▲5五歩や▲4五桂、あるいは▲7三角成などと暴れる順が気になる。後手は角道を最大限に活かす本譜を選択した。
△6五桂と跳んだところでは後手が相当気持ちいい感じがするのだが...。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・v香|一
| ・v玉v金v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・ ・v桂|三
|v歩 ・v歩 歩v銀 ・v歩v角v歩|四
| ・ ・ ・v桂 ・ 歩 ・v歩 ・|五
| 歩 歩 歩v歩 歩 銀 歩 ・ 歩|六
| ・ 金 ・ ・ ・ ・ 桂 ・ 角|七
| 香 銀 ・ 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:歩三
【手数=76 △2四角 まで】
図は△2四角と銀に当てたところ。
以下▲3五歩△1五歩▲2五桂△1六歩▲1三桂成△1七歩成▲2四飛と進んだ。
左辺の戦いが後手の意図するところかは分からないが、先手にチャンスが巡って来そうな展開となり、実際飛車が捌けた。
△1七歩成では△1三同角と取る手もありそうだが以下▲2三飛成△1七歩成に▲1二歩があり一瞬角得になるがあまりうまく行かない。
こうなると一転居飛穴ペースだ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:桂 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v玉v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・v金v金 ・ ・ 龍 ・ ・|二
| ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・ ・v香|三
| 歩 ・v歩 歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・v桂 ・ 歩 歩 ・ ・|五
| ・ 歩 歩v歩 ・ 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 金 ・ ・ 歩v馬 角 ・vと|七
| 香 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光九段
先手の持駒:桂 歩
【手数=100 △1三香 まで】
図は先手から▲9五歩と突き捨て▲9四歩と垂らしたのに対し、△1三香と桂馬を回収したところ。
以下▲8五桂△9四銀▲5五銀△3七馬▲5四銀△同 歩▲7三銀と進んだ。
▲5五銀と3七の角を見捨てるのが好判断で、▲7三銀と打ち込んで先手の攻めは切れなくなった。
後手がポイントを稼いだと思われた8筋の折衝、突き捨て(▲8五桂の空間ができた)や△8七歩▲同金の叩き(▲9五歩の端攻めが生じた)が裏目になっていることが分かる。
125手で先手の勝ち。佐藤康光新王将の誕生だ。
王将戦/棋王戦のダブルタイトルマッチは、防衛1奪取1という結果に終わった。
#一言日記:今期の名人戦は盛り上がるかな?
[2002/03/13 01:00]
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