第14期竜王戦レポート

第1局1日目

いよいよ竜王戦が始まった。挑戦者は2期連続で羽生。当時五冠だった羽生は棋聖を郷田に奪取されたものの、なお四冠で相変わらず強い(それでも順位戦は苦戦しているが)。はたして藤井システム対策の新機軸は見られるのか?迎える藤井竜王。代名詞とも言える藤井システムは更なる進化を遂げているのか?
注目の第1局は先手羽生が5五に角を出て△6三銀を強要してから左美濃に囲った。封じ手は下図。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v角v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v銀v歩 ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 角 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 銀 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=32 △5四銀左 まで】

先手の主張は左美濃に組めて後手に6三銀を強要したことと思う。ただこの後の指し方が難しい。▲2四歩は△同歩▲同角△2ニ飛で先手が得になるとは思えないし、かといって角が4六のままでは不味い。
個人的には振り飛車を持ちたい感じがする。
さて封じ手は?


#一言日記:ふらっとPalm互換機のViserを購入した。Palmの柿木フォーマットを読める棋譜管理ソフトないかな?
[2001/10/17 00:15]

第1局2日目

封じ手は▲3八飛だった。以下、
△4五歩▲3七角△3五歩▲2六角△3六歩▲4四角△3三桂▲3六飛△4三銀▲2四歩△同 歩▲2六角△3四歩▲2三歩と進んだ。
BSの放送によるとこの辺りは藤井の研究範囲らしい。すなわち藤井は振り飛車良しと結論している展開ということだ。
△4三銀に角を逃げずに▲2四歩の突き捨てを利かしたのが羽生の工夫か。確かに△4三銀に単に▲2六角だと△2五桂と飛車交換を挑まれ後手が良くなりそうだ。しかし、この段での突き捨ては指し過ぎになってしまう諸刃の剣だ。
本譜の藤井もこの突き捨てを咎めるべく一歩得を主張するため、△3四歩として穏やかな展開に誘導した。▲2三歩は地雷のような手だが、羽生は必ず後で効いてくると確信ていたに違いない。
先手は角をぐるりと5九〜7七に移動し▲2ニ歩成と連動した▲6五歩を狙いに手を進め、後手は美濃囲いに駒を進めた。そして2度目の仕掛け▲6五歩が指されたのが下図。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・v角v銀v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 飛 ・ ・|六
| ・ 歩 角 ・ 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=55 ▲6五歩 まで】

封じ手辺りでは藤井システムの守備範囲と思っていたが、こうなってみるとすでに一歩得で局面を収めるといった悠長な将棋ではなく、地雷の▲2三歩も働きそうでむしろ先手がよさそうな感じがする。
どの辺りで形勢がひっくり返ったのか、あるいは後手ペースの序盤と思っていたのが錯角だったのか?
結局113手で羽生が勝ったが終盤で羽生らしいと思った手があったのでもう一面紹介する。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:角二 歩五 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v飛 ・v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・ とv歩v桂 歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀v銀 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・v金|六
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 銀v歩 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 金 ・ ・ ・v飛 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金二 銀 
【手数=104 △7二同玉 まで】

ここでは既に先手勝勢と思うが、ここからの指し方が凄い。
図から▲7七桂△2五桂▲8九金打。
寄せるための▲7七桂、その開いた空間に守備を鉄壁にする▲8九金打。羽生将棋恐るべし。
緒戦を落としてしまった藤井だが、藤井システムの序盤は健在の様だ。第2局以降も好局が期待できそうだ。

#一言日記:なかなかサービスの始まらないYahooBBを見切って、ようやくうちの地域でもサービス対象になったフレッツADSLを申し込んだ。開設は竜王戦開幕には間に合わなかったが第2局には間に合いそう。
[2001/10/17 22:15]
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第2局1日目

伝家の宝刀「藤井システム」に対し第2局の後手番羽生の作戦は△7四歩と急戦を臭わせつつ持久戦模様にする作戦だった。この指し方には▲7八飛として▲7五歩からの捌きを狙いに指すのが四間飛車側からみた対策の一つで、本局もそうなった。
ただし先手に工夫が見られる。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・ ・v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩v角 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:なし
【手数=28 △2四角 まで】

図は△2四角とした局面。4六の歩が浮いているが...。以下、
▲6八角△4六角▲7五歩△同 歩▲同 飛△6二銀
となり封じ手、1日目が終了した。
藤井は一歩損を甘んじて▲7五歩から飛車を捌いた。この手が今後どういった影響を受けるか注目したい。
封じ手は▲7七桂として▲8五飛からの決戦を目指すか、一回▲5八金左くらいだろうが、どちらもありそうな手だけに難しい。

#一言日記:フレッツADSL開通。快適!
[2001/11/01 00:15]

第2局2日目

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀v金 ・ ・v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ ・ 歩 ・v角 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 角 ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:歩 
【手数=34 △6二銀 まで】

図は1日目の終了図。封じ手は▲6五歩だった。
ここですぐに思い付くのは▲7七桂か▲5八金左だと思う。ちょっとひねって▲4五歩もあるが、▲6五歩はちょっと思い付かなかった。
この手は一歩損でも駒組を進めれば先手の模様が良くなるという大局観に基づいたものだが、それならば角を6四などの左辺に引かせない方が良いということだろうか。
▲6五歩以下、さらに
△3二銀▲5八金左△2四角▲7七角△4二角▲7四飛△7三歩▲5四飛△5三銀▲5六飛△4三金▲7六飛△5四銀と進んだ。
結局後手は△3二銀と左美濃に組んだ。ここまでの手順で面白いのは後手の羽生も▲7四飛に対し△7三歩として一歩を取らせる代わりに△4三金△5四銀と金銀を好型にした点だ。これで再び駒の損得は無くなったが、
(1)玉側の端歩が大きい
(2)角の利きが玉を睨んでいる
(3)浮き飛車の好型である
等、振り飛車としては不満のない局面と思う。それになんと言っても居飛穴に組ませなかったことも大きなポイントだろう。
中盤以降は角を切って先手玉に迫る後手とそれを手筋を駆使して受ける先手という展開になった。とても面白い将棋だが、中盤はすっとばして終盤の決め手の好手を紹介する。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩七 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ 飛 圭 ・ 金 ・v玉|二
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v角v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・v金 歩|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 歩 ・v龍v金 桂 玉|八
| 香vと ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:角 金 銀三 
【手数=132 △3八金打 まで】

図は△3八金と詰めろを掛けたところ。ここで次の一手のような手が決め手となった。
▲3九銀
△同龍と取りたいが、龍で取ると4筋に合駒が出来ないので▲2ニ金打から後手玉が詰んでしまう。仕方のない△同金で先手玉の詰めろが解けたので堂々と▲5三成桂。これが投了図となった。

藤井将棋の序盤の明るさが印象に残る将棋だったと思う。将棋を創造しようという意志が湧き出てくる羽生将棋も健在と感じた。次局はどんな「対藤井システム」を見せてくれるのだろうか。

#一言日記:千葉県民になって久しいが、今年になってはじめてモーターショウに行った。車好きの2歳の息子が喜ぶと思ったのは親バカというものだろう。
[2001/11/02 23:30]
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第3局1日目

これまで持久戦指向だった羽生が第3局は急戦策を採用した。
昨年、第48期王座戦(3−2で羽生防衛)と第13期竜王戦(4−3で藤井防衛)は羽生と藤井の顔合わせのタイトル戦だったことは記憶に新しい。この12局のうち藤井が四間飛車を採用したのは11局(三間飛車が1局ある)。
この12局を単純に居飛車の持久戦策と急戦策に分類してみると、居飛車の羽生側から見て持久戦1勝4敗、急戦5勝1敗という結果になる。つまり羽生は対藤井戦では急戦策の方が結果を残していると言える。
羽生の採用した急戦は4五歩早仕掛け。封じ手は定跡書に載っていそうな局面になった。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・v角 ・v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=38 △4五同銀 まで】

図が封じ手の局面。▲4四歩△同銀▲4五歩に強く△同銀としたところだ。ここは振り飛車の作戦の分岐点で△5三銀もある。
図の少し前、▲2四歩の突き捨てに藤井は△同歩と応じた。ここも振り飛車の作戦の分岐点で△同角もある。憶測だが羽生は△2四同角を想定していたのではないだろうか。△2四同角ならば第48期王座戦第4局で現れた郷田新手を再度採用する予定だったと思う。
藤井も△2四同角としなかったのは郷田新手が嫌だったのかも知れない。△2四同歩と応じたので一昔前の定跡型になった。▲6八金直と△7四歩の交換がどちらに有利に働くが注目したい。
定跡書によると▲同桂△8八角成▲同玉△4五飛。または▲3三角成△同桂▲8八角の展開が予想される。

#一言日記:ワールドシリーズはまるでドラマの様だった。ランディ・ジョンソンって化物?
[2001/11/08 00:30]

第3局2日目

封じ手は▲4五同桂。以下△8八角成▲同 玉△4五飛▲2三角△2五飛▲同 飛△同 歩▲3四角成△8四桂と進んで下図。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:飛 角 歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩v桂v歩v歩v歩 ・ 馬 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 ・ 金 金 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:飛 銀 歩 
【手数=48 △8四桂打 まで】

個人的には封じ手の局面で▲6八金直と△7四歩が入っていない形では振り飛車指し辛いと思っている。蛇足だが△7四歩ではなく△1二香の形は▲2三角が香に当たるのでこれは振り飛車全然ダメ。しかしこの形では△8四桂があるので振り飛車も指せるのだろうか?
図から▲7七金△4七歩▲同 銀△7三桂と進んだ。
▲7七金はいかにも羽生らしい強い受けだ。△7三桂では△9五歩も有力。しかし△9五歩と指すなら、持ち歩を温存する意味で△4七歩の是非が難しい。

少し進んで下図を迎えた。ここからの応手が面白い。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:飛 角 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金v金 ・ ・ 龍v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩v桂v歩v歩v歩 ・ 馬 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩v歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 ・ 銀 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 桂二 歩二 
【手数=60 △4六歩打 まで】

図から、▲3五馬△4七歩成▲5一龍△7六桂▲同 銀△3三角▲5五桂△5一角▲6三桂成△同 銀▲8五桂△8四歩△7三桂打。
▲3五馬がこれまた羽生らしい踏み込んだ手だ。△4七歩成▲5一龍は勢いというもの。こうこなくては面白くない。
△7六桂は手の広いところで△6二銀、△6二角、△9六桂などがあり、どれもありそうな手で悩ましい。本譜は王手飛車狙いだが▲5五桂が返し技。
どちらが勝っているか分からない面白い局面が続いていたが△8四歩がやや疑問だった気がする。△7三桂打で後手玉が寄ってしまった。

定跡形であるにもかからわらず(定跡形だったからこそ、と言うべきか?)、最高峯同士の居飛車急戦vs四間飛車の将棋は一手の重みが違うためか棋譜を並べて面白さを感じた。「これにて一局」と言われている局面から先も、何と将棋は奥が深いのだろうか。

#一言日記:フレッツ接続ツールで接続した我が家のADSLは1Mbps出ていたが、ルータをかましたが56kbpsに下がってしまった。なんで(?_?)
[2001/11/09 00:00]
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第4局1日目

藤井竜王と言えば「藤井システム」。画期的なこの戦法は猛威を振るう居飛穴の出現で衰退の一途をたどっていた四間飛車を蘇らせた。
第3局までは居飛穴模様の将棋はなかったが、本局で遂に居飛穴模様の将棋になった。敢えて相手の得意形で戦うことをよしとする羽生四冠だが、勿論勝算あってのことだろう。
藤井システムの基本形の一つといってもよい下図が出現した。私はこの局面を藤井システム4七銀型と呼んでいる。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v金v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 銀 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:なし
【手数=29 ▲4七銀 まで】

図から、△1二香▲2五桂△4二角▲4五歩△5五歩▲4六銀△2四歩▲5五銀△2五歩▲4四歩△3三金寄▲5六銀と進んで下図の封じ手を迎えた。
△1二香で△7四歩とした将棋は第48期王座戦の同一カードで第2局と3局に出現した。ここである程度結論に達したのか前期の竜王戦では、この形は指されなかった。
それにしても△1二香は強情な手だ。流れとしては、ここでの△1二香が無理気味という判断があったからこそ△7四歩という手が指されるようになったはずだからだ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:桂 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金v玉v香|二
|v歩 ・v歩v歩v銀 ・v金 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 銀 ・ ・v歩 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:歩二 
【手数=41 ▲5六銀 まで】

さて、封じ手の局面だが、この局面もなんと同一カードで存在しているそうだ。
第14期竜王戦実況中継のBBS「控室情報」によるとその将棋は、ここから
△8六歩▲同歩△4四銀▲同銀△8六角▲3三銀成△同桂▲8六角△同飛▲8八歩△7九銀▲7七銀△6八銀不成▲同玉△8二飛と進んだ。
この展開、藤井は先手良しと結論付けているはず。封じ手以降の羽生の指し手が興味深い。

#一言日記:56kbpsに落ちた我が家のADSLは知らないうちに1Mbps位に戻った。何も設定変えてないのに。
[2001/11/21 00:50]

第4局2日目

封じ手は△8六歩。以下▲同歩△4四銀▲同銀△8六角▲3三銀成△同桂と進んだ。銀損を承知で大駒を捌く狙いだが、実戦例では先手が勝っているし、実際先手が良さそうな感じがする。
羽生が何処で手を変えるかと思ったら変化したのは藤井だった。△同桂の後、▲8五歩△同 飛▲8八銀が更に藤井システムをブラッシュアップした手という。
わずかに先手が良さそうなまま難解な中盤戦が繰り広げられ、ガジガジ流炸烈したかと思った終盤の入り口...。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角二 銀 桂 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・ と ・v玉v香|二
|v歩 ・v歩v歩 ・ 金v桂v銀v歩|三
| ・ ・v飛 ・ ・ ・v歩v銀 ・|四
| ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・v歩 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 桂 ・ 歩 金 ・ 歩 ・|七
| ・ 銀 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:金 歩二 
【手数=71 ▲4三金打 まで】

図から、△4六歩▲3二金打△同 銀▲同 と△2三玉▲1一銀△3五歩▲同 歩△3一銀▲同 と△3五銀。
△4六歩が好手でこれは3七角があるので取れない。△3一銀と捨てて▲2二銀成を消して△3五銀となった局面になってみると後手玉を寄せ損なった雰囲気だ(▲1一銀が問題だった?)。後手逆転か?
そこから更に7手進んだのが下図。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角二 金二 桂 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ と ・ 銀|一
| ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・v香|二
|v歩 ・v歩v歩 ・ ・v桂 ・v歩|三
| ・ ・v飛 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・v歩 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 桂 ・ 歩 金 ・ 歩 ・|七
| ・ 銀 ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:銀 歩三 
【手数=89 ▲4六銀 まで】

先手は後手玉を大海に逃してしまったが、4六の歩を消去し泥試合の模様を呈してきた。
ここから、△8九角▲6四歩△6七金▲3八飛△3四歩。
△3四歩は取れば王手で3四の飛車を抜く狙い。以下も難解な終盤戦が繰り広げられたが、110手で羽生の勝ちとなった。

今日は早く帰宅できたので、18時30分位からBS放送とインターネット(ADSL大活躍!)でリアルタイムで楽しめた。
熱戦だった。藤井システムに果敢に挑戦し勝利し、竜王戦の3勝目をあげた本局は羽生にとって大きな一局だった。負けて後がなくなった藤井だが、藤井システムが攻略されたわけではない。奮起を期待したい。

#一言日記:イースター島よりMr.モアイ先輩一時帰国。25日お会いしましょう。
[2001/11/21 23:30]

第5局1日目

伝家の宝刀藤井システムで痛い星を落とした藤井、もう後がない。ファンとしてはここは踏ん張ってもらっで是非とも第6局以降も見せてほしいとことだ。
ここで決めてしまいたい羽生は急戦指向の将棋を採用した。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v香|三
|v歩 ・ ・ ・v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 角 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=31 ▲3七桂 まで】

後手の左香は一旦△1二香と上がっているので2手かかっている。普通に考えると後手番の上に手損なので棋理には反している感じは否めない。
左金が4一のままなのは最近の藤井四間飛車の特徴だ。ここから、
△3二金▲6六銀△6四歩▲5五歩△6三銀引▲5七銀上△4三金▲4五歩
と進んで封じ手(下図)。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v銀v歩v金v角v歩v香|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 角 玉 金 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=39 ▲4五歩 まで】

大山流の△3二金は金上がりを保留していたので可能になった手だ。
先手は6六銀と角道が止まったままの状態で▲4五歩。▲5六銀と手堅く指すのが普通な感じで、ここでの▲4五歩は仕掛けるというより一歩持って駒組で優位に立つ狙いと思われる。
この局面、後手が若干立ち後れている感じがする。ここでの△1五歩の端攻めは効きそうにないし...。

#一言日記:先手の作戦を戦法で分類するとしたら「4五歩早仕掛け」or「5筋位取り」?
[2001/11/29 23:55]

第5局2日目

封じ手は△7四銀だった。やや奇異に映るが、6三銀とへこまされ、また7四歩が入っていない現状を考慮すると一理ある感じもする。
以下、▲5六銀△3五歩▲2六飛△3四金▲4四歩△同 角▲4五歩△3六歩と進んで下図。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩v香|三
|v歩 ・v銀v歩 ・v角v金 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 銀 銀 ・v歩 飛 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 角 玉 金 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=48 △3六歩 まで】

△3六歩!?
なんとも凄い手が出た。やや不利と見た勝負手? ここは普通に△3三角とすれば、6六の銀があまり良い形ではないので後手もやれそうな気がするのだが...。
以下、▲4四歩△3七歩成は必然で角桂交換で先手の駒得になった。ここからは羽生優勢と思われる局面が続いた。しかし、さすが最高峯の戦いだけあって形勢は渾沌としてした。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v飛 圭 馬 ・v歩v香|三
|v歩v桂v銀 ・v香 ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・v金 ・ 歩|六
| ・ 歩 馬 歩 銀v歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・ ・v龍|八
| 香 桂 ・ ・ 歩 歩 歩 ・vと|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金 歩 
【手数=95 ▲5三成桂 まで】

図では駒の損得だけ見ると逆に後手の香得で、しかも美濃は健在。飛車と取られたところでまだ二枚換えで後手の駒得だ。しかしやはり2枚の馬が強力で3枚並んでいる底歩も堅いので、まだ先手がやや良さそう。でも勝ちきるのは大変な局面だ。
ここで藤井は△同飛と飛車を切ったが、これが粘りを欠いた手だった感じがする。
109手で藤井投了。羽生が竜王位に返り咲いた。

今期竜王戦の感想。第4局で藤井システムの必勝定跡を撃ち破って勝利したのが大きな星だったと思う。敢えて相手の得意型で戦い、勝ってしまう羽生将棋は健在だった。
全局を通じて藤井の指し方が淡白だった感じだ。本局もそうだが、形勢を悲観し過ぎていたのではないだろうか? 一方の羽生は常に形勢を客観的に冷静に判断していたと思う。勝負にこだわらず論理的に棋理を追求する姿勢が羽生の強さの秘訣かもしれない。
しかし藤井システムが破れ去ったという印象は皆無だ。藤井の巻き返しを期待したい。

#一言日記:そろそろ年賀状の準備をせねば。
[2001/11/30 23:10]
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