第1局1日目
次世代のエースと目されている渡辺六段が羽生世代の森内竜王に挑戦する竜王戦が開幕した。
渡辺先手ではじまった本局は▲7六歩に△8四歩として矢倉の出だしとなった。とはいっても森内は渡辺得意の矢倉を正面から受けず、急戦矢倉で対抗した。
策士森内のことだからこの米長矢倉は作戦と見るのが普通だろう。そして1日目から激しい局面に突入した。
図は△7五歩に2四にいた角を▲4六角と引いたところ。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金v角 ・|二
|v歩 ・ ・ ・v銀v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・v歩v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 銀 歩 角 歩v歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 銀 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:歩二
【手数=43 ▲4六角 まで】
ここから△6六角!▲同 金△5七銀まで進んで封じ手となった。
△6六角は素人でも喜んで指しそうな類いの手だが、果たしてプロの将棋で成立することがあるのだろうか。
封じ手は▲6五金しか考えられず以下△4五銀成▲同歩までは必然に思える。そこで△8八歩▲同金を利かせて、あるいは単に△4七角が先手にとっては相当嫌らしく感じる。
森内竜王の予定の手とも考えられ、そうであれば成算ありと踏んでいるはずだ。2日目は朝から激しい戦いは必至だ。
#一言日記:日本シリーズ、どちらもエースで落として迎えた第3戦。満塁弾が2本(谷繁、カブレラ)も出る乱打戦だった。カブレラは手首を痛めているんじゃないの?飛ばし過ぎだって。
10−8で西武の勝ち。戦前は短期決戦では中日苦しいかなと思っていたが意外と打線が好調なので、簡単に寄り切られることはなさそうだ。50年振りの日本一に向かって燃えろドラゴンズ!
[2004/10/20 00:50]
第1局2日目
封じ手からほぼ予想通りに進んで下図となった。△4七角に▲5二銀と受けたのに対し△5六角成としたところ。
飛車先を遮断している2六の歩と制空権の大きそうな馬の存在が後手の生命線と言える。飛車を押さえ込みつつ金を捕獲してしまえば大成功だが。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・v銀v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・v歩 金 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・v馬 歩 歩v歩 ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:角 銀 桂 歩二
【手数=52 △5六角成 まで】
ここから▲6六歩△6四歩▲7五金△7四歩▲2六飛△2二歩▲2三歩△同 歩▲1五桂△4六馬▲7四金△2四馬▲同 飛と進んだ。
△7四歩で金の確保に成功したかに見えたが、ここで▲2六飛と飛び出し一旦△2二歩と受けるが▲2三歩△同 歩▲1五桂で2筋突破が見えてきた。
ここで一転△4六馬として2筋の補強に転じたが、▲7四金と金に逃げられ△2四馬に堂々と▲同飛と斬られてはどうも後手の按配が良くない。
戻って図の△5六角成では△3六角成として飛車の押さえ込みのみに尽力するのはダメなのだろうか(▲3九桂くらいで簡単に受けられるか)。
森内竜王にしてみれば金の捕獲と飛車の押さえ込みの両方に失敗してしまい、「二兎を追う者は...」の最悪の結果となってしまった。
1日目の▲5九銀が△6六角の角斬りの伏線だったわけだが、渡辺六段は角斬りの猛攻は大丈夫という確信があったのだろう。
渡辺六段、堂々の緒戦だった。
#一言日記:またしても台風上陸で日本シリーズは順延となった。この日程変更はどちらのチームに有利に働くだろうか。
[2004/10/20 23:50]
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第2局1日目
第2局は中座飛車となった。横歩音痴の私には良く分からん代表格のカテゴリだ。という訳で(?)下図が封じ手の局面。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂 ・ ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v角 ・ ・ ・|四
| ・v飛 ・v歩 ・v桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角 歩二
【手数=42 △4五同桂 まで】
一日目だが既に戦いが始まっており、中座飛車ならではの激しい局面を迎えている。同一局面があるかどうかは知る由もないが(きっとあるんだろうけど)非常に神経を使う局面なのは間違いないところだろう。
ところで最近の森内竜王だがひと頃の勢いがなくなっているのが気になる。持ち味の柔軟な受けに思い切りの良い攻めがうまく融合してニュースタイルを築いたかに思えたが、最近の負け方が淡白でらしくない。
本局は後手の攻めをいなす展開になりそうだ。久々に「受けの森内」を見ることが出来るだろうか。
#一言日記:■未だに続く新潟の余震。被災者の方にはお見舞い申し上げます■中日惜敗。残念■楽天がパ・リーグ参入決定。田尾氏は昔憧れた選手の1人なので頑張ってほしい■大統領選 etc
更新しない間に世間では色々ありました。
第2局2日目
封じ手は▲4五同桂。本譜の展開の様に△6六歩が玉頭に歩が延び、さらに4五の桂に取りが掛かるので先手にとって嫌らしく、この対策がなければならない。
ここは▲4二歩など味を付けたいところだが、黙って▲同桂で良ければそれにこしたことはない。
以下△6六歩▲4九飛△2七歩▲3七角△6七歩成▲同金右△9九角成▲7七桂と進んで下図。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:香 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂 ・ ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・|四
| ・v飛 ・ ・ ・ 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 桂 金 歩 ・ 角v歩 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 銀 ・ ・|八
|v馬 ・ 銀 ・ ・ 飛 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:桂 歩三
【手数=51 ▲7七桂 まで】
△6六歩に▲4九飛が森内竜王らしい落ち着いた手だった。△6六歩を完全に見切った手だ。さらに△2七歩の手裏剣にも落ち着いて▲3七角。
△6七歩成▲同金右△9九角成と駒損を回復しつつ馬を作られるが、▲7七桂が気持ちの良い手だ。▲6三歩という厳しい手も残っており、図では明確に先手優勢だろう。
△6六歩は玉頭の脅威だが、本譜の様に駒損を解消するためには成り捨てるしかなく、△9九角成と作った馬も負担になっている。この辺り、渡辺六段に誤算があったと思われる。
73手で森内竜王の勝ち。本局は森内らしい手が目立った気がする。森内としても、新鋭にこのまま押し切られる訳にはいかないところだろう。
それにしても第1局に続き第2局も途中で形勢がはっきりしてしまい、短時間で終局してしまった。次局こそは手に汗握る終盤を期待したい。
#一言日記:将棋世界誌の「タカミチの実戦コーナー」で高橋九段に気になる発言が。
[2004/11/05 23:50]
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第3局1日目
第1局に引き続き第3局も後手番の森内竜王が挑戦者渡辺六段が得意とする矢倉を受けて立った。第1局は変化球の急戦矢倉だったが、本局はがっぷり四つの持久戦模様となった。
例によって本局の進行も早く57手目まで進んで58手目を森内が封じ手とした。下図がその局面。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v金v桂v歩v銀|三
| ・ ・v歩v角v歩v歩v歩 ・v歩|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 銀 ・ 桂 ・ ・|七
| 香 ・ 金 角 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:なし
【手数=57 ▲4九飛 まで】
先手は矢倉から穴熊に潜ったものの飛車先の歩を切られるので、現時点では▲8八銀とハッチを閉めることは出来ない。
また後手の陣形は専守防衛とも言える陣形で先手が仕掛けるのは困難に思える。総じて先手に苦労の多い局面と言えそうだ。
もしかして千日手?
#一言日記:ドラフト。ダルビッシュは日本ハムに。中日の6巡目石井裕也投手に個人的に注目したい。
[2004/11/18 00:30]
第3局2日目
封じ手は△2一玉。菊水矢倉に組み直す自然な手だ。以下▲4八銀△8四飛▲8八金△2二銀▲5九銀△7五歩▲同 歩△同 角▲5八銀と進んだ。
手詰りの先手は銀の組み換えだが、後手に7筋の歩の交換を許した。こうなると先手の利は既になく、後手の模様が相当良い感じがする。同時に千日手の懸念もほぼなくなった。
BSの島八段の解説によると同じ組み換えでも4八→5九→5八ではなく、4八→4七→5八コースの方が勝ったとのことだ。なるほど、これなら5九に銀がいないので7筋に飛車を回れるので後手としても7筋の歩交換をやりにくいという訳だ。
この後先手が4筋から動いて桂交換になったが、直後に△7五桂と絶好打を打たれてしまった。手をこまぬいている訳にもいかないので1筋から反撃したのが下図。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v金v銀 ・|二
| ・ ・v桂v歩v角v金 ・v歩 ・|三
| ・v飛 ・ ・v歩v歩v歩 ・ 歩|四
|v歩v歩v桂 ・ ・ ・ ・ 歩v歩|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 飛 ・ ・ ・|七
| 香 金 ・ 角 銀 ・ ・ ・ 香|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:桂 歩
【手数=79 ▲1四歩打 まで】
ここから△8七桂不成▲同 金△7六歩▲同金右△7五歩▲同 金△同 角▲7八歩△9六歩▲同 歩△8六歩▲同 銀△同 角と進んで後手優勢がはっきりした。
金ではなく8七の歩を取るのが良い手だ。金駒は本譜のように7筋を叩けば取れる。
本局では良いところが見れなかった渡辺六段だが、唯一▲7八歩と受けた手は、昔の劣勢時の羽生二冠を連想するような形振り構わない手で、若さを感じた。
124手で森内竜王の勝ち。挑戦者が得意とする先手矢倉を粉砕したのは大きい。
#一言日記:17日はレディースオープンが竜王戦の裏で行われていた。主催WEBで中継された模様だがTAISENはMacに対応してないんだよね。
腹いせじゃないけど「最新の棋譜・盤面」の棋譜が間違っている(11/19 00:30現在)ことをちくっておこう。108手目△5二同歩は△5二同銀だろうな、たぶん。
[2004/11/19 00:30]
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第4局1日目
第2局に続いて第4局も中座飛車。中座飛車なので1日目でもある程度の局面まで進むのは理解できるが、なんと65手まで進んだ。いくら想定局面があるとはいえ、タイトル戦なのだからもう少し枝葉(と思われる)部分の可能性も追求してほしい。
という愚痴は置いておき下図は63手目の局面。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:金 桂 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 銀 ・ ・|六
| 歩v龍 歩 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角二 歩
【手数=63 ▲2九飛 まで】
ここで△8八歩と指して65手目が封じ手となった。
過去のタイトル戦を振り返るとここでは、
・第72期棋聖戦第4局(郷田●vs○羽生)の△5四桂
・第52期王座戦第4局(羽生○vs●森内)の△2六桂
がある。
△2六桂は疑問手、というのが第52期王座戦第4局での結論で△8八歩が有力視されていた。案の定、本局は△8八歩。
△8八歩には▲9八角の切り返しがあるが、△8五龍▲7八銀△8六桂で以外と大変らしい(週刊将棋に載っていたと記憶している)。
いずれにせよ両者とも研究の下地があるはずで、本局でこの形の一応の結論が出ると思われる。
#一言日記:竜王戦同様名人戦も会員制だが毎日系のもう一つの棋戦である王将戦は無料中継を実施している。これを名人戦の呼び水になるのかな(そういう意図だろうけど)。
過去の対局は棋譜一覧に飛ぶリンクがないが、ページは存在しているようでリンクがある棋譜のURLから日付けの部分を変えればたどり着ける。
[2004/11/25 01:50]
第4局2日目
封じ手は▲9八角。以下△8五龍3三歩成△同 銀▲4五桂と進んで下図。
やはり△8五龍に▲7八銀△8六桂と一旦銀を逃げる変化は後手有望らしく、8九の銀は放置して敵陣に切り込むのが森内竜王の選択だったということか。
▲9八角と打った以上はこの角がどの程度攻防に利いているかが優劣に直結する可能性が高い。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:金 桂 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・v龍 ・ ・ ・ 桂 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 銀 ・ ・|六
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|七
| 角v歩 ・ ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角 桂 歩
【手数=69 ▲4五桂 まで】
ここで△3七歩としたのが好手だった。
将来の△5四桂(9八角に睨みを消しつつ△4六桂を見た味の良い手)を消してしまうが、それ以上に先手玉を狭くしているのが大きい。ちなみにBSの解説によるとこの手自体は渡辺六段の研究の範疇にはなく対局中に辿り着いた手ということだ。
さらに進んで下図。△3七歩の利かしが大きい。とりあえず▲3四歩で金取りになっている。これにどう対処するか。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:金 銀 桂二 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v金v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・v龍 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 銀 ・ ・|六
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・v歩 ・ 歩|七
| 角 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・|八
| 香vと ・ ・ ・ ・ 金 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角 銀 桂
【手数=75 ▲3四歩打 まで】
ここから△8八龍▲6八桂△6六桂▲4七玉△3二金と進んだ。
渡辺六段の選択はここで王手で△6六桂まで決めてから△3二金と手を戻すというもの。これで後手優勢がはっきりした。△8八龍はともかく△6六桂を決めるかどうかだが、本局では決めた方が明解だった。
なお、▲6八桂では▲6八銀と桂を温存して△3二金に▲4四桂(9八角がいるので取れない)を必殺の狙いとする手もあるが、▲4四桂△5六桂▲3二桂成と金を取られても△5二玉と右辺に逃げて後手玉は捕まらないので後手の勝ち筋だ。
この後、寄せの段階で△9八龍と盤面から角を消されて万事休す。本局でようやく渡辺六段の終盤の強さの片鱗が見えたか。
96手で渡辺六段が勝って2−2のタイに戻した。
封じ手の▲9八角もうまく行かず、よって後手有望というのがこの形の現時点での結論の様だ。
#一言日記:今日は次男の4ヶ月検診があった。今だ寝返りが出来ないのはちょっと遅いようだ。それとやはりちょっとおデブさんらしい。
[2004/11/25 23:30]
第5局1日目
渡辺六段先手の第5局は▲7六歩△8四歩の出だし。順番から行くと矢倉だが、森内竜王は陽動振り飛車を選択した。
そろそろ研究手の品評合戦以外の側面を見たいと思っていたので個人的には本局の展開は大歓迎だ。
一日目は穏やかな駒組、という訳には行かず早くも角交換と相成った。図は△4五歩と銀の進退を伺ったところ。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v角 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v銀 ・ ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 金 銀 ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:なし
【手数=28 △4五歩 まで】
ここから▲5七銀引△3五歩▲6五歩△3三角▲同角成△同 桂▲6四歩△2五桂▲2六歩と進んだところで封じ手。
先手は一旦銀を退却して△3五歩と3筋の歩を取らせてから▲6五歩と角筋を開けて反撃した。角交換から▲2六歩を承知の△2五桂。俄然面白くなってきた。
封じ手の局面をどう見るかだが、一見桂得が約束されている先手が良さそうだ。
将来▲7五桂が好打になってしまうと陽動振り飛車の序盤の数手がマイナスになってしまう。ただ△2五桂はなにもかも覚悟の上の竜王の着手なので、当然ながらそんなに簡単ではないだろう。
#一言日記:竜王戦倶樂部(http://www.ryuoh.jp)のドメインが一時失効してしまったようだが、さすがに第5局当日には復帰していた。
[2004/12/08 01:15]
第5局2日目
封じ手は△3六歩。以下▲2五歩△3四飛▲2二角と進んだ。
△3六歩に悠然と▲2五歩で桂得。ここまでは予想の範疇だが△3四飛は全く意外だった。
というもの先手には恐いところがなく本譜のように▲2二角から香を拾いに行くのが十分間に合ってしまう。3二に飛車がいると▲4一角の筋があるが、同じ飛車を浮くなら△3五飛と思うのだが。
後手苦戦は明白だ。ひたすら我慢してチャンスをうかがうが、渡辺六段はその余地を与えてくれない。下図で△4九飛が利けば良いが...。
後手:森内俊之竜王
後手の持駒:飛 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・v玉 ・v金 ・ ・ ・ 馬|二
|v歩 ・v歩 ・v銀 ・ ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・ 歩v歩 ・v飛 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明六段
先手の持駒:角 桂 香
【手数=47 ▲3八同金 まで】
ここから△6四銀▲2三馬△3一飛▲2二馬△5一飛▲5九銀と進んだ。
目の上のタンコブである6四の歩を△6四銀と払うが飛車を追いつつ馬を2二の好位置に移動した後、▲5九銀の先受けで後手の楽しみである△4九飛の筋はなくなった。
図で△4九飛が利けば良いがやはり▲5九銀とされる。▲3九歩があるので△2一飛成とするが、この時金を逃げずに▲7五桂が厳しいのでダメだろう。
以下後手にチャンスは全くなく77手で渡辺六段の勝ち。先に3勝目をあげて一歩リードした。
一般的に陽動振り飛車は居飛車の左金が7八に上がっている関係上、玉頭位取り等の持久戦になることが多いが、急戦が十分通用すると判断した渡辺六段の大局観がすばらしかった。
#一言日記:さすがに定時内はネット観戦する訳にはいかないので定時後(ホントは定時後もダメだって)に竜王戦倶樂部を覗いてみたら既に終局していた。
2日目夜半の終盤の熱戦をネット観戦したいけど今期竜王戦では叶わぬ夢かな。
[2004/12/09 01:00]
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第6局1日目
偶数局の本局は第2、4局に続き中座飛車。後がない森内竜王だが、渡辺六段得意の中座飛車を受けてたった。
例によって午前中はスラスラと手が進んだようだ。図は封じ手の数手前。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:角 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 飛 ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 銀 金 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角 歩
【手数=45 ▲4六歩 まで】
ここから△2五桂▲8六歩△3七桂成▲同 金△2五歩▲2九飛△8四飛と進んだとこで封じ手となった。
後手からの桂交換は負担になりそうな桂をあらかじめ捌いてしまおうということだろうか。敢えて後手から交換した訳だが後手が得したとは思えないような...。
図では9六歩に少し違和感がある。不急の一手と思えるが、間合いをはかった手なのかもしれない。△9六歩は渡辺六段が2時間以上の大長考した手だ。深い意味があるにちがいないが、凡人には分かるはずもなく。
また△8四飛も6六角があるので恐い場所に引いたものだと思う。もっとも変わる引き場所も難しいのだが。
素人の目には先手に楽しみが多い局面に思えるが、まだ前例のある将棋らしいので後手にも用意の手があるのだろう。
#一言日記:プラネテスにハマってる。コミックも買ってしまった。
[2004/12/16 00:40]
第6局2日目
タイトル戦の日はできるだけ早く帰宅しネット観戦するのが定跡なのだが、仕事が忙しくそうもいかなかった。0時25分位に帰宅しBSを観たが思いのほか熱戦だったようだ。
封じ手は▲2三歩。後手は△3三銀とかわして耐えた。少し進んで下図。▲2二歩成と先程打った歩を成り捨てた局面だ。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:角 桂 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 と ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩v銀 ・v歩|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 飛 ・|五
| ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 銀 歩 歩 ・ 金 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:角 桂 歩二
【手数=59 ▲2二歩成 まで】
ここから△同 金▲7四歩△同 飛▲2三角△5二玉▲5六角成△6五角と進んだ。
先手は気持ちの良い手順で馬を作ったが後手も6五角と好所に角を打った。ここから後手の怒濤の反撃が始まる。
手は進んで下図は終盤戦の局面。先手は角を切っている。8三にいた角を△8二歩▲7二角成とそらしてから...。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v香|一
| ・v歩 馬v銀v玉 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
|v歩 ・v歩 ・v飛v桂 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・v銀v歩 ・|五
| ・ 歩 ・ 馬 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ 玉 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:金 桂 歩二
【手数=97 ▲7二角成 まで】
ここから△5五飛▲同 馬△5八銀▲4五歩△3六銀打▲2八玉△2六歩▲3九桂△2七歩成▲同 桂△2六銀▲1八玉と進んだ。
後手は飛車も切って寄せの体勢に。△5八銀としたところでは先手玉は風前の灯火に見える。
ここでの▲4五歩が悠然とした森内竜王らしい柔らかい受けだった。▲1八玉と端まで遁走してぎりぎり先手玉は残っているようだ。
△2六銀で後手にもう一歩あれば△2六歩として▲3五桂には△2七歩成▲3九玉に△3八歩と叩くことができるので先手玉は詰む。渡辺明六段は一歩に泣くことになった。
133手で森内竜王が勝って最終局勝負となった。
正直言って今期の竜王戦は対局者の相性が悪のか熱戦と呼べる将棋はなく見どころに乏しい将棋ばかりだったが本局は面白かった。
森内竜王の卓越した受けと渡辺六段の鋭い攻めを十分堪能ですることができた。最終局も本局くらいのクオリティーの将棋を望みたい。
#一言日記:サッカーはドイツに惨敗。順当かな。
[2004/12/17 02:00]
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第7局1日目
第7局は森内竜王が先手。例のごとくすらすら進んで中座飛車に。
1日目は下図まで進んだ。▲6六歩に△8八歩とした局面で封じ手になった。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・v飛 ・ ・ ・v銀 飛 ・ ・|四
| ・ ・v歩v桂 ・ 角 ・v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・v歩 金 玉 ・ ・ 銀 ・ 香|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ ・v馬|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:桂 歩
【手数=56 △8八歩打 まで】
△8八歩では△3六歩▲3三歩と右辺での攻め合いが既知らしくこの順は先手有望ということらしい。
△8八歩は先手玉の退路を塞ぐ手筋だが微妙な利かしだ。
いずれにせよこの局面は両者とも予想の範疇だろう。この先の濃密な読みあいを、2004年のラストに相応しい熱戦を期待する。
#一言日記:これを書いていたら、TVで「しりとり竜王戦」が始まった。
[2004/12/27 23:50]
第7局2日目
封じ手は▲同 銀。以下△3六歩▲同 角△2三金▲4四飛△同 飛▲4五銀と進んだのが下図。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:飛 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v金v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|四
| ・ ・v歩v桂 ・ 銀 ・v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 角 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ ・ 銀 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・v馬|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:桂 歩三
【手数=63 ▲4五銀打 まで】
△3六歩に▲3三歩と攻め合いにするのも当然考えられるが、▲同角と手を戻したのは穏やかな展開になっても先手がやれるという判断だろう。
ここは激しく行っても穏やかに行っても先手持ちの声が大きい局面の様だ。実際先に桂を得しており6五の桂馬も直ぐ取れそうで、飛車を切っても三枚換。常識的に考えても先手が指し易そうだ。
さて、図の4五銀。桂と角道にかぶっていて一目筋悪。勝てば手厚い好手ということになるだろうが、負ければまっ先に槍玉にあげられそうな手だ。
ここは▲6五歩と桂馬を取るのが普通だった。△4六飛が嫌みに移るが▲4五角の切り返しがある。
下図は終盤戦。中盤は先手優勢と思われていたがここでは後手優勢だ。
後手:渡辺明六段
後手の持駒:飛 銀二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀v玉v歩 ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・ 圭 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|四
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 香 ・ ・ ・ 歩 角 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂vと 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 銀 ・v馬|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:森内俊之竜王
先手の持駒:金 桂 歩五
【手数=87 ▲3六同角 まで】
ここから△1七馬▲2五角△同 飛▲同 桂△3八と▲7四桂△5四歩と進んだ。さらに2手指したところで森内竜王が投了した。
攻めを焦らない△1七馬が落ち着いた手だった。馬が▲4四桂などの筋を消しており先手から早い攻めがなくなった。▲7四桂は詰めろだが△5四歩とされて万策尽きた。
渡辺新竜王誕生。若干20歳で最高位である竜王位を取得した。
竜王位と言えば羽生が島竜王から竜王位を奪取した第2期竜王戦を思い出す。ここを起点に羽生時代が到来して今日に至っている。しかしこれで渡辺時代の幕開けになるかはもう少し時を経なくては判断出来ないだろう。
竜王位を失ってしまった森内だが、羽生の牙城を次々と降落した勢いは本物と思いたい。両雄とも来年がその真価を問われる年になりそうだ。
#一言日記:今年最後の更新です。皆さん良いお年を。
[2004/12/29 01:00]
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