第1局
順位戦では惜しくもB級に陥落してしまった鈴木八段が竜王戦以来、久々に(と言っても2度目だが)檜舞台に登場。第1局は鈴木が先手になったので作戦はこれしかない。
図は▲7四歩と突いたところ。第11回升田幸三賞に輝いた「新石田流」だ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:鈴木大介八段
先手の持駒:なし
【手数=7 ▲7四歩 まで】
ここから△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△6五角▲5六角△5四角と進んだ。
2005年6月号の将棋世界によると以前は△6五角までで居飛車有利なので▲7四歩は成立せず、▲4八玉から升田式石田流にせざるを得なかったが、△6五角に▲5六角の合わせで振り飛車も指せる、という見解を見いだしたのが升田幸三賞受賞の所以とのこと。
▲5六角には△7四角と△5六同角があってどちらも振り飛車面白いという内容になっている。
ところが本譜は△5四角。早くも新手?が繰り出された。最近は力戦の雄という印象の強い佐藤棋聖らしい手だ。
形勢不明の面白い中盤が続いたが、局面は急転直下する。
図は▲6四歩の取込みに△同銀と応じたところ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v玉v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・v飛 ・v銀v角v銀v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v歩 ・ 角 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 歩|七
| ・ 銀 ・ 飛 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:鈴木大介八段
先手の持駒:歩二
【手数=40 △6四同銀 まで】
ここから▲8三角成△同飛▲6四飛△6三歩▲7四飛△8二飛と進んだ。
▲8三角成は派手な手だが、とても成立するとは思えない。局後のインタビューによるとやはり「8二飛を見落としていました」とのことだった。
62手という短手数で佐藤棋聖が先勝した訳だが、▲5六角の新石田流に対する△5四角の佐藤新手は成功した訳ではないと思う。
話は脱線するが新石田流は升田幸三賞に値するのだろうか。そもそも升田幸三賞は選考基準が曖昧でよくないと思う。一考の余地有りだろう。
#一言日記:ダヴィンチコードを観た。小説も読んだが個々の謎解きは面白いがミステリーとしての質はいま一つという印象だった。映画には過多の期待は抱いてなかったのでそこそこ楽しめた。犯人と結末は想像の範疇を越えないので、どんでん返しを期待すると肩すかしに合います。
[2006/06/07 00:45]
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第2局
第2局、鈴木八段は公約通りゴキゲン中飛車。対する佐藤棋聖も堂々と▲9六歩。これは新丸山ワクチンの進化形で佐藤の新手だ。「先手の勝率が高く、後手が対策を練っている」と将棋世界7月号「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」にある。当然鈴木も対策があるはずで、その手が今期棋聖戦の注目でもある。
さてその用意の作戦だが、よく分らなかった(爆)。図は△5五銀と出たところ。このように6筋に位を取れば後手もやれるとは思うが、個人的には木村美濃というところがネックに感じる。
後手:鈴木大介八段
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩v桂v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 桂 歩 歩 銀 桂 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角
【手数=38 △5五銀 まで】
ここから▲6八金右△8四歩▲5六銀△5九角▲4五桂△4四銀▲6五桂△同桂と進んだ。
▲5六銀は△5九角が見えているだけに決断の一手だ。先手は▲6五桂と桂馬で歩を取って6筋から逆襲に出た。
下図では5九の角がぐるりと5一まで回った形になっている。5一の馬はアイデア次第で自在な使い方が見込まれ、この辺りは後手を持って指し手みたい。
先手が飛車を6筋に回した。執拗に6筋を攻める将棋となった。
後手:鈴木大介八段
後手の持駒:桂 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v馬v金 ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩 ・ 桂 ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 銀 歩v歩 ・ ・|六
| ・ 銀 ・ ・ 金 ・ ・ ・ 歩|七
| 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 桂 歩
【手数=65 ▲6九飛 まで】
ここから△7三桂▲7七桂△5二飛▲6四歩△同銀▲6五銀△同桂▲同桂△6二飛▲7七桂と進んだ。
個人的には△7三桂では△7三馬と指し手みたい。▲6五銀と銀から行ったのが好手だったか。結果飛車が5筋に途中下車した形になっており、後手としてはつまらない指し方だったと思う。
まだまだ熱戦が続くと思われたが、後手が急失速してしまい、98手で先手の勝利となった。
第3局では鈴木八段の意地を見せてほしい。
#一言日記:ワールドカップもやや興ざめな展開となってしまい、プロ野球に目を転じてみると千葉ロッテが交流戦2連覇。あれれ巨人はどこ行った?
[2006/06/22 01:20]
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第3局
先手なら石田流、後手なら中飛車と作戦を公言して憚らない鈴木八段、当然の如く第3局は再び飛車を三間に振った。
図は▲5六角と新石田流の一手を指したところ。ここで第1局は△5四角の佐藤新手だった。△5四角には驚いたが本譜も驚愕の手で応じた。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・v角 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:鈴木大介八段
先手の持駒:歩
【手数=13 ▲5六角 まで】
ここから△7四角▲同角△7二金▲5五角△7三歩▲5六角△1二飛!と進んだ。
△7四角▲同角の進行は先手に分があるというのが新石田流の主張だ。▲5五角の筋があり、▲1一角成を受けにくいからだ。本譜も受けるとしたら△1二飛しかないのだが、佐藤棋聖は△1二飛と指した。佐藤らしいと言える手ではあるが、これには驚いた。
△1二飛は、たとえ論理的に悪くはならない手だとしても、筋に明るい人なら考えもしない類いの手だ。個人的には好きな類いの手だったりするが。
しかしやはり先手の模様が良くなり、中盤では鈴木八段が角番を耐えたと、会社で観戦して(?)思っていた。
後手は居玉のまま頑張って下図。角の退路はない。だんだん怪しくなってきたか。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・v飛 ・v飛 ・|二
|v歩 ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|三
| ・ ・v歩 ・v銀v歩 ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩 歩 銀v歩 角|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 桂 角 歩 ・ 桂 歩 歩|七
| ・ ・ ・ 銀 金 ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:鈴木大介八段
先手の持駒:歩
【手数=74 △1四歩 まで】
ここから▲3三角成△同桂▲4四歩△2六歩▲同歩△5六歩▲同角△5五角と進んだ。
角を切ったからには先手が局面を決めに行った感じにならないとおかしいが、△5五角が好手だそうで、もう少し局面を進めるとはっきりするが、形勢が逆転してしまった。
佐藤棋聖は5連覇を達成、同時に永世棋聖の称号を獲得した。
鈴木八段にとっては不本意な結果になってしまったが、新石田流が升田幸三賞の名に値することを証明できなかったことが、なによりも残念たったと思う。
#一言日記:中田ヒデの突然の引退表明には驚いた。サッカーの他に志すものがあるのだろうが、いずれはサッカー界に戻って来て欲しいものだ。
[2006/07/08 11:30]
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