第1局
先期竜王戦で対峙した佐藤棋聖と渡辺竜王が、立場を変えて再戦。
佐藤にしてみれば今度は自らの牙城であるので負けるわけにはいかない。
一方渡辺はそろそろ竜王以外にもタイトルを獲得し名実共に超一流の仲間入りといきたいところだろう。
佐藤先手の第1局は先期竜王戦第1局と同じく一手損でない角換り腰掛銀に。棋士というのは強情な人が多いようです。
手順の組み合わせは違うようだが、4、2、1、7、3の歩を突き捨てる前例の多い仕掛けとなった。
図は△3六歩に▲2五桂としたところ。先手の猛攻を後手がいかに凌ぐかという局面だが、渡辺は大胆な手で応じた。
後手:渡辺明竜王
後手の持駒:角 歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩v香|三
|v歩 ・v金v歩v銀v銀 歩 ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ 桂v歩|五
| 歩 銀 ・ 歩 銀 ・v歩 飛 ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角
【手数=63 ▲2五桂 まで】
ここから△3七歩成▲1三桂不成△同桂▲3三香△3五角▲2三飛成△3三銀▲同龍△同金▲同歩成△2九飛と進んだ。
渡辺は悠々△3七歩成。△3六歩の継続手としては当然だが、攻め駒を呼び込むので怖い手だ。
さらに▲3三香に対する△3五角が凄い。▲2三飛成が見えているし、3五の角が攻防にどの程度利いているか分からないからだ。
佐藤も踏み込んで3三にと金を作った。ここで渡辺は攻防の△2九飛。寄っているように見える後手玉も2枚の飛車の縦横の利きで簡単ではないようだ。
△3五角を打てば△2九飛までは一直線で、この局面をどう評価するかで△3五角の是非の判断が決まる。しかし途中▲2三飛成のような気持ちの良い手があるので選択肢からは外れる類いの手だと思う。
攻防の手が続いたが、どうやらこの別れは先手に分があったようで、佐藤の先勝という結果になった。
#一言日記:10日はディズニーシーに行った。インディージョーンズアドベンチャーに並んでいる最中に(落雷による?)マシントラブルが発生して、退場する羽目になった。ある意味貴重な体験だった。
[2007/06/11 23:40]
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第2局
渡辺竜王が不調だ。開幕した順位戦(B1級)でも1回戦の高橋九段戦に続き2回戦井上八段にも敗戦し予想外の2連敗スタートとなっている。
一手損角換りの第2局は先手渡辺が早繰り銀に。後手佐藤棋聖は▲3五歩の仕掛けに△4三銀と腰掛け銀を引いて受ける形で対抗した。
この形、先のB1級対井上八段戦と似たような将棋である。
作戦の帰路だがここで佐藤らしい手が出た。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂 ・v歩v銀v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角
【手数=37 ▲4六歩 まで】
ここで佐藤は△6二玉と指した。
井上八段は玉を左側に囲ったが、佐藤棋聖は右玉に。佐藤らしい手だが、ちょっと奇異に映る。しかしこれが「うまい構想」(渡辺明ブロッグ)とのこと。
少し進んで下図。▲5七角は苦しいがまだ「そこそこ戦える」(渡辺明ブロッグ)とのこと。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v金v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v銀v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 歩 歩v歩 歩v歩 銀 ・ ・|六
| 歩 ・ 銀 ・ 角 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:歩二
【手数=55 ▲5七角 まで】
ここから△6七歩成▲同金左△6四角▲2四歩△6五桂▲6六角△4三金▲2三歩成△2七歩▲同飛△4七歩成と進んだ。
△6四角と飛車の媚びんを狙うのが受けにくい。2筋は突破するものの、相手にしない△4三金。▲2三歩成に△2七歩と叩かれて先手痺れた。
右玉にして3六の銀が負担になる展開となり、後手勝勢だろう。
これで渡辺は5連敗と絶不調。B1級を面白くするため、直近では棋聖戦を面白くするためにも早く立ち直って欲しい。
#一言日記:24日は社団戦。将棋チェスネットの順位戦を除くと前回の社団戦以来のリアルタイム将棋。勝てる気がしなかったけど、やっぱり。
[2007/06/26 01:10]
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第3局
名人戦第7局(2日目)と同日に行われた第3局は熱戦の矢倉になった。
長い中盤戦を経て下図。
後手:渡辺明竜王
後手の持駒:桂 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂v銀 ・ ・v金v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ 歩v歩v角 歩v銀 桂 ・|五
| ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 角 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:歩
【手数=85 ▲2五桂 まで】
ここから△2四金▲7四歩△同銀▲3五角△同歩▲5九飛△3七角打▲5五飛△同角成▲4四角と進んだ。
▲3五角と角を切って、▲5五飛と飛車もたぎって猛攻。▲7四歩△同銀を入れたのは微妙で、後手の駒を呼び込んでいるとも言える。
戦いが始まれば、駒の剥がし合いが基本の矢倉戦。激しい攻め合いとなった。
図は▲3三歩と叩いたところ。
後手:渡辺明竜王
後手の持駒:飛 金 桂二 歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂 ・ ・ ・ 歩v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩 歩 ・ ・ ・|四
|v歩v銀 ・v歩 ・ ・v歩 歩 ・|五
| ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角二 金 銀
【手数=105 ▲3三歩 まで】
ここから△7六銀▲3二歩成△同飛▲7六銀△6六桂▲6七角△7八桂成▲同角△2八飛▲4六角△7七歩と進んで先手玉が寄ってしまった。
▲3三歩に手抜きの△7六銀で勝負あったか。この見切りの良さが渡辺竜王の特徴と思うので、連敗で調子が心配されているが、問題ないようだ。
#一言日記:棋戦の日程がかぶるのは珍しい。少なくともT'sをやり始めて以降記憶がない。興行的な観点からも得がない気がする。
[2007/07/01 00:50]
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第4局
第4局はごきげん中飛車の超急戦に。佐藤棋聖は本局でもまた、驚愕の構想を披露した。
図は▲1一龍としたところ。ここで△9九馬が普通だが、普通ではない手が指された。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀 ・ 龍|一
| ・ ・ ・v玉v飛 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 桂 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・v馬 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:角 香 歩二
【手数=21 ▲1一龍 まで】
ここから△5四歩!▲6三桂成△同玉▲6六香△7二玉▲7五角と進んだ。
△5四歩は、部分的には筋悪すぎて読み筋から真っ先に消去される類いの手。一見、本譜のように桂馬を成り捨ててから▲6六香が厳しく、読む気がしない。
確かに▲6六香は厳しく、▲7五角では▲6三角のような手で後手玉は寄っているように見える。しかし、実は難しい。このような一見本筋ではなく枝葉に見える筋を更に突っ込むのが佐藤将棋の魅力だ。
少し進んで下図。▲2三歩の垂らしに△6二銀打としたところ。後手は歩切れだが、これで耐えている。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:桂
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v飛v金v銀 ・ 龍|一
| ・ ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ 歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 香 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・v馬 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 ・ 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:渡辺明竜王
先手の持駒:歩二
【手数=30 △6二銀打 まで】
ここから▲2二歩成△同銀▲同龍△6五歩▲7七銀△8九馬と進んだ。
あっさり銀を取らせて、△6五歩が狙いの一手だ。取った銀を7七に打たなければならないようでは後手優勢。
佐藤ワールド全快で快勝。棋聖戦6連覇を達成した。
竜王戦では佐藤の挑戦を退けた渡辺だが、棋聖戦では逆に挑戦失敗。互いに自分のタイトルを守る形で終わった。
両雄の将棋は波長が合うのか面白い将棋が多い。今後もタイトル戦で顔を合わせる機会はあると思うので楽しみだ。
なお、例によって、本局も「渡辺明ブログ」でご本人が振り返っている。最近gooのオフィシャルブログに昇進したようで、将棋界にとっても喜ばしいことだと思う。
#一言日記:先週末、複合型プリンタPIXUS MP600を購入。我が家はIT化(死後か?)が遅れていてプリンタもなかったものの一つ。
しかし一週間経った現在も開封していない。これを書き終わったらとりかかろうと思う。
[2007/07/08 12:00]
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