第1局1日目
名人戦に羽生が帰って来た。真打ち登場である。
過去の対戦成績は森内名人の17勝23敗。しかし最近の成績に限ってみると森内名人が6連勝(!)している。
さて、開幕局は中座飛車の将棋になった。下図は封じ手少し前の局面。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v角 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 金 玉 ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩二
【手数=32 △5五飛 まで】
ここから、▲4五歩△5四飛▲3三角成△同 桂▲6六歩△5五飛▲3五歩となったところで封じ手となった。
図の△5五飛はこの戦法の一つの手法だが、一旦△5四飛として角交換から、再度の△5五飛は珍しいのでは。
見ていて楽しくなる将棋が期待出来そうだ。
#一言日記:竜王戦に続いて名人戦のWebも有料化するそうだ。毎日よ、お前もか。
[2003/04/18 02:10]
第1局2日目
封じ手は△3六歩。これに対する森内名人の手は▲3四歩!(下図)
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v飛 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・v歩 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:角 歩二
【手数=41 ▲3四歩 まで】
なんと△3五角を打たせても大丈夫という驚愕の読み。常人がとてもダメと思うような局面を「受け切れる」と判断し踏み込む。この強靱な受けが森内将棋の特徴だろう。
図から△3五角▲3三歩成△5七飛成▲6九玉△2六角と進んだ。
△3五角に一旦は▲3六飛と躱すと思いきや、▲3三歩成がまた凄い手だ。急所に龍を作らせて▲6九玉と狭い所で耐えて、さらに飛車まで取らせてしまった。
とても指す気がしないこの展開だが、少し進んで下図。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:飛 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v玉v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v龍 ・ ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 桂 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 桂 ・v角 ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・vと ・ 歩|七
| ・ ・ 金 銀 ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:角 金
【手数=59 ▲3四歩打 まで】
森内名人の読み通り先手陣は簡単に潰れず、この局面は次の▲3三歩成が厳しく難解な局面のようだ。
以下、見ごたえのある攻防が続いたが、結果は92手で羽生三冠の勝ちとなった。
最強の挑戦者にまずは軍配が上がったが、本局は森内将棋の魅力満載の好局だったと思う。
#一言日記:明日は新車WISHで初の遠出(富士山方面)予定。天気は微妙らしい。
[2003/04/18 23:10]
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第2局1日目
第2局は角換り腰掛銀。割と早いペースで進み封じ手は下図の局面。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂 角|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v角v香|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ 銀v銀 ・v歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:歩
【手数=58 △2二角打 まで】
定跡通りの仕掛けでこの局面はこのHP開設以降のタイトル戦でも登場している。
第27期棋王戦第4局(羽生○−●佐藤)と第43期王位戦第4局(谷川●−○羽生)だ。
ここから▲3三歩△同 金▲2二角成△同 玉▲5四銀△同 歩▲4五桂まではどちらも同一進行。以下羽生佐藤戦は△3二金、谷川羽生戦では△2四金だった。
ここ数手が優劣を決める手になりそう。どこで変化するか興味深いところだ。
#一言日記:千葉四段と碓井女流三段が結婚するそうだ。ご両人おめでとうございます。千葉四段ってチャレンジャーですね(余計な一言でした)。
[2003/04/25 00:40]
第2局2日目
封じ手は▲3三歩ではなく▲2二同角成。以下△同 玉▲4一角△7四角▲2八飛△3一玉と進んだ。
先に紹介した2局(いずれも2002年の棋戦)のように角換り腰掛銀における1、3、5筋を突き捨てるタイプは少し前に流行った仕掛けで、最近のタイトル戦では1筋を突き捨てないタイプが出現している。
第28期棋王戦第4局(丸山○−●羽生)と第52期王将戦第3局(佐藤●−○羽生)がそれでいずれも今年の将棋だ。
そして本局はまた1、3、5筋突き捨てタイプだ。ただし▲3三歩ではなかった。その延長線上に「試してみたい手」があったからで、それが下の局面。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 銀 歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|二
| ・ ・v桂 ・v歩v玉v銀 龍 ・|三
|v歩 ・v角v歩v金 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・v銀 ・v歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:金 歩二
【手数=72 △3三銀打 まで】
図から▲2五金△8六歩▲同 銀△8八歩▲同 玉△6九銀▲3五金と進んだ。
23:30からのBS放送によると▲2五金が新しい手ということらしい。さらに最終手、一見▲3四金が映るが、▲3五金がいわゆる羽生マジックっぽい手だ。
先手角損のこの局面、既に先手の攻めvs後手の受けという構図がはっきりしている。森内名人の受けの嗅覚は棋界随一である。羽生三冠はそこを敢えて踏み込んだ。
9時過ぎに帰宅して、インターネットで確認してみるとまだまだ難解な将棋が現在進行形で進んでいた。
非常に見応えのある将棋だったが、終盤に羽生マジックが出た。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 金二 歩六
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v玉 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・ ・ ・ ・v飛 龍 ・ ・v香|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・v歩 ・ ・ 金 ・ ・v歩|五
| 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・v全 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・v銀 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:角 銀 歩二
【手数=98 △5二同飛 まで】
図から▲同 龍△同 玉▲7九歩。
飛車を取る手は損な感じがするが、▲同龍としてから一転▲7九歩。一見素人が指しそうなこの組み合わせが絶妙だった。
113手で羽生の勝ち。羽生の連勝スタートとなった。
第1局に続いて森内名人の棋風がよく現れている将棋であったが、紙一重の差で結果には結びつかなかった。
しかし、内容は檜舞台にふさわしく充実している。第3局以降も期待に違わない好局になる予感がする。
#一言日記:ゴールデンウイーク(10連休!)突入!!
[2003/04/26 09:10]
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第3局1日目
第3局は後手の羽生三冠が四間に振った。このカード、この檜舞台で一度は見ておきたかった戦法だ。
居飛穴警戒の序盤の△9五歩に先手は5七銀右の形。持久戦もあるところだが21手目に早くも▲3五歩と仕掛けた。後手玉はまだ6二の位置だ。飛車を3筋に回って下図。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v銀v玉 ・ ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:なし
【手数=22 △3二飛 まで】
ここから▲4六歩△3五歩▲4五歩△5二金左▲4四歩△3四銀▲4八飛△4二飛▲4六銀△7一玉▲3二歩と進んだところで封じ手となった。
ここでの▲4六歩はあまり見かけない手だが、どこかで見かけた仕掛けと思い探したら、第60順位戦B1級で郷田棋聖(当時)が対神谷七段戦で披露していた(週刊将棋2002/6/5号より)。
郷田vs神谷戦では▲3二歩のところで▲4五銀とぶつけており結果は87手で先手の郷田棋聖が勝っている。
最短手数でかつ最もウイークポイントである角頭を攻める手なので侮りががたい仕掛けだが、振り飛車党にしてみれば、あまりにも軽い仕掛けなのでいくら後手の手が遅れ気味といっても何らかの策があるように思えるのだが...。
#一言日記:本局から有料となった名人戦コンテンツ。こんなところからはした金とってもしょうがない気がするけどな〜。
ところで掲載されている棋譜だけど、9手目▲5八金は正しくは▲5八金右、同じく26手目△5二金は△5二金左が正しい。この辺りはkifuにコピペすると反対の金が動くことがある。さらに細かいけれども33手目の▲3二歩打は▲3二歩。この辺りを正しく記事に出来るようになってからでしょう。お金を取るのは。
個人的には払ってまで参加しようとは思わないし、進むべき方向として間違っていると思う。
[2003/05/08 00:50]
第3局2日目
下図は1日目終了の局面、早くも勝負所だ。ここでは(1)△3二同飛、(2)△4一飛、(3)△4四角が考えられる。
(1)△3二同飛は以下、▲4五銀△同銀▲同飛△3四銀の進行が考えられるがそこで一直線に▲4三銀と攻める手順が気になる。これは先手の注文にはまりそうだ。
(2)△4一飛は△3二同飛では悪いと判断した場合の手だ。とりあえずこれで当面戦いを先送りできそう。
(3)△4四角は▲3二歩を無駄手にするという意味では魅惑的な一手。これで良くなればこう指したいが、以下▲4四同角△同飛▲5五角とされると香損が確定するので、自分ならば最初考えるが直ぐ捨ててしまう変化だ。
ということで封じ手から注目していたが、羽生の選択は...。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金v飛 歩 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩v銀 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:なし
【手数=33 ▲3二歩打 まで】
封じ手は△4四角!
今日はこの手をBSで見てからフレックスで出社した(オイオイ)。
この手の意味は先に述べたが、果たして羽生が積極的に局面をリードしようと思って指したのか、あるいは消去法でやむを得ず至った選択枝だったのか興味あるところだ。本譜もこのように進み先手香得の分かれとなった。
こう進むと後手はもうゆっくりとは出来ないので攻めを続けるしかない。先手の受け後手の攻めという展開になった。
少し進んで下図。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:銀 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂 馬|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・ 歩 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 ・ ・ ・ 金 ・v飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 香 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:飛 角
【手数=52 △4七歩打 まで】
図から▲5五馬△2九飛成▲5六角△3九龍▲4七角△3六桂▲5八金上△4八桂成▲同 金△4五金と進んだ。
▲5五馬〜5六角は2枚の角で龍を封じ込める、森内名人らしい薄氷の受けだ。△4八桂成▲同 金までの局面で受け切ったと判断したのかも知れない。
しかし羽生の大局観恐るべし!△4五金が手厚い好手でここまで進むと後手ペースと言える。
とうとう3二に垂らした歩はそのままで終局を迎えた。70手で羽生三冠が勝って3連勝。森内名人に後がなくなった。
本局は封じ手の△4四角につきると思う。△4四角の強手で新手▲3二歩は空振りだったのか?あるいはその後の展開で先手に疑問手があって、実利の香得で先手良しだったのか?興味は尽きない。
#一言日記:BS放送にもの申したい。なぜに名人戦結果が1時45分からなの?せめて12時代にしてほしい。1時過ぎという時間帯ではいくらなんでも良い子はみんな寝てるでしょう。ごく一部のマニアだけにみてもらえばそれて良いのかな。
[2003/05/09 00:40]
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第4局1日目
第4局は▲7六歩△8四歩▲1六歩△3四歩▲6六歩の出だし。藤井システム出現以降の3手目▲1六歩は居飛穴を警戒しつつの四間飛車を含みとする意味合いが強く、本局の先手の選択も四間飛車に落ち着いた。四間飛車党の私としては嬉しい限りだ。
先手が四間飛車と決まれば、後手がどんな作戦を採用するかが第2の興味となる。森内名人は5七銀右(左の銀は3一(7九)なので棋譜的にはこの呼び名は正しくないが、当HPでは右銀が5七(5三)に来たら5七銀右、左銀が5七(5三)に来たら5七銀左と分類している)から巷では「箱入り娘」と呼ばれている囲いを採用した。図で後手森内名人が、本シリーズではじめて手を封じた。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v金v玉v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・v銀v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 角 銀 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:なし
【手数=29 ▲9六歩 まで】
図の▲9六歩はちょっと珍しい手と思う。ここでは▲5六歩または▲9八香の方が、一手の価値が高く、▲9六歩は一手パスに近い緩手に映るからだ。
しかし、天下の羽生の指した手なので意味深長な一手なのだろう(間合いを測った?)。
普通に考えると封じ手は△7六歩で以下▲同銀△7二飛▲6五歩△7七角成▲同飛△5五銀と進むのが相場だが、果たして本譜は...?
#一言日記:名人戦が4局で終わってしまってはもったいないので、本局は森内名人を応援します。
[2003/05/20 00:00]
第4局2日目
封じ手は△7六歩。以下▲同 銀△7二飛▲8八角△3三角▲6八金△9四歩▲8五銀と進んだ。
▲8八角は△8六歩▲同歩△6五銀(単に△6五銀もある)の手段を与えるので、普通は損とされている順だが、羽生三冠は平然と本譜を選んだ。
また森内名人も△6五銀の筋を見送って△3三角と自陣に手を戻した。ここで手を戻すようではちょっと調子がおかしい気がする。
先手の▲6八金〜▲8五銀も金銀が明後日の方向に行くのでちょっと指し難い手だ。
四間飛車は随分見慣れているはずだが、先日の▲9六歩以降凡人には分からない手順が続いている。
少し進んで下図。▲7七金と8筋を受けたところだ。一目飛車を切る順が映るが、先手は大丈夫なのだろうか。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v歩v角v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v銀v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩v飛 銀 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ 金 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:歩二
【手数=43 ▲7七金 まで】
△7六飛▲同 金△8七銀▲7七金△7八銀成▲同 金△8七歩▲同 金△6九飛▲7八銀△6八飛成▲5八飛と進んだ。
後手は飛車切りを英断するが、▲5八飛とされると飛車交換は必須で、思った程成果は上がらなかった感じだ。
このあたりは振り飛車ペースではないだろうか?
ところが...。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:飛 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v歩v角v歩 ・|三
|v歩 ・ 飛 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 金 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 ・|七
| ・ 角 銀 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治三冠
先手の持駒:歩三
【手数=59 ▲7四飛打 まで】
ここから△6四銀▲8四飛△7五銀▲7四飛△6四銀▲8四飛△7五銀▲7四飛……
そう、千日手になってしまったのだ。
この局面は、後手がクリンチで逃れた感じだ。先手としては(若干有利とされている)先手番を放棄してまで千日手にするような局面ではない気がする、というのは振り飛車党の視点から見ているからかなァ?
というわけで現在も指し直し局の真っ最中だと思われるが、その将棋は後日アップ予定。
#一言日記:こういう時は名人戦のインターネット中継が有効かなとは思うが、お金を払う気はしない。BSが2時30分からあるが、これがリアルタイムだったりして。いずれにしろ、今日は寝ます。おやすみなさい。
[2003/05/21 01:30]
第4局2日目 千日手局
21時からの指し直し局。対局者および関係者の皆さんご苦労様です。本局は横歩取りの将棋になった。
取っている毎日新聞朝刊には42手目しか載っておらず、結果は会社の昼休みにインターネットを見て知った。
本局は羽生が勝って4タテで名人位を奪取し、四冠(竜王、名人、王座、王将)になった。全体を通して森内前名人にもチャンスのある将棋(得に第2局)があったが、振り返ってみると羽生の圧倒的な強さが際立った名人戦だった。
森内前名人は力を発揮出来なかった感じがする。独特の攻めの受け将棋をもっと堪能したかったので4局(5局?)で終わってしまったのは残念。
本局も森内前名人独特の差し回しが見えたが、やはり勝負所で方角を誤った印象を受ける内容だった。
下図は中盤戦。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀v金 ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・v角 ・ ・ ・|四
| ・v飛 ・v桂v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v歩 角 ・ 銀 歩v歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=44 △4四角 まで】
ここから▲4五銀△5三角▲5四銀△6四角▲7九玉△5六歩▲同 歩△3三桂▲7三歩成△同 銀▲7五歩△同 飛と進んだ。
銀をぐるりと回るのはらしい手順と思う。ただ▲7五歩を強く△同飛と取って後手優勢になったようだ。▲7九玉がどうにも悪い形で、いかに森内前名人が受けの達人でも後手の攻めを躱し切れる局面ではなさそうだ。
下図は既に後手優勢だが、決め手が出た。
後手:羽生善治三冠
後手の持駒:角 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 飛 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ 歩v歩 ・v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・v角 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・v歩 ・ 歩 ・ 歩v歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩v圭 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=69 ▲7三歩打 まで】
図から7九の玉を睨んだ△2四角が気持ちに良い手。既に先手陣は収拾が付かなくなっている。
82手で羽生の勝ち。第二期羽生時代到来か。
#一言日記:だから73手目の▲6八金は▲6八金寄だっつうの。いい加減な棋譜を掲載しないでほしい>毎日新聞。お金を取るなら棋譜くらい正確に書けないとあかんのでは?
[2003/05/22 01:20]
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