第1局
今期の名人戦は羽生四冠のリターンマッチとなった。昨年度は飛ぶ鳥を落とす勢いだった森内名人だが、復調した羽生が相手では苦戦が予想される。
第1局は角換り。腰掛銀からガッチャン銀を経て下図となった。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 銀
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・v歩v歩v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀
【手数=34 △3五歩 まで】
ここから▲6六銀△6二飛▲5五銀△7四歩▲4六銀△6五歩▲1七桂△7五歩▲同 歩△3六歩▲同 歩△6四角と進んだ。
先手は▲6六銀と守りの銀も積極的に前線に繰り出した。先手が好調に攻める雰囲気だったが▲4六銀と一旦鉾先を納めた。これに乗じて後手は△6四角と反撃。
少し進んで下図。先手が▲7七銀と埋めたところ。▲7七銀はこの局面では先手陣を引き締める好手に映るが、本譜の経緯を考えると変調だろう。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛v金 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・v歩v歩v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・ 桂 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・v馬 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 歩二
【手数=51 ▲7七銀 まで】
下図は4六に打った香で飛車を奪って、さらに△3九飛と下ろしたところ。後手好調だ。ここからの先手の凌ぎが意表を突いた。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 桂 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ ・v飛v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・v歩v歩v金v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・v飛 ・v馬|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀二 桂 香 歩三
【手数=64 △3九飛 まで】
ここから▲4九銀△7六歩▲6八銀△5四桂▲6七香△2四歩と進んだ。
▲4九銀では普通の感覚では香で済ますところだろう。香を温存したのか、あるいは4八の金を取られた時に▲4八同銀が飛車に当たるからか。
しかし△5四桂に▲6七香と香も手放してしまってはいよいよ先手がおかしい感じだ。ただこの辺りの一見異筋と思われる受けは羽生将棋の特徴とも言える。
△2四歩と2五桂の嫌な筋を消していよいよ後手必勝かと思われたが。
△6六桂から後手が決めに行ったかと思われたのが下図。△6六同飛と走ったところ。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 香 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・v歩v歩v金 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・v歩v飛 ・ ・ ・ 歩 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 銀 ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 銀v飛 ・v馬|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 桂二 歩三
【手数=74 △6六同飛 まで】
ここから▲3七歩△7七香▲6七金△6五飛▲7四角△7九銀▲9七玉と進んだ。
▲3七歩は大駒を遮断する味の良い手だ。後手は攻めを継続すべく△7七香としたが▲6七金とされて飛車を逃げざるを得ないようでは調子がおかしい。
▲9七玉とした手が王手が掛かりにくく、いつの間にか逆転してしまったようだ。
107手で羽生が勝って、名人位奪回に好スタートを切った。羽生は本局で通算900勝目。
腰の入った熱戦だったと思う。最近のタイトル戦は夕方前に終わってしまうことも多いので本局の様な秒読みまで時間を使う熱戦を期待する。
#一言日記:ipodがブレイクしているが低予算でipod shuffleを購入した。1Gのフラッシュメモリだと思えば安いと思う。AppleといえばTigerの発売が4月29日に決定したようだ。こちらは静観。
[2005/04/16 02:10]
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第2局
本局は素人には意味が判断できない手が随所に出てきた。理外の理という感じの手が多かった。
後手一手損角換りに対して先手は直接的に咎めようと棒銀模様に。これに呼応して飛車を4筋に回ったというのが序盤の流れだ。
両者慎重な駒運びで22手目が封じ手となった。封じ手は△3五歩と3六の銀の様子をうかがう手だった。後手としては壁銀を解消すべくさらに駒組を続けるという穏やかな展開を選択することも可能だっただけに、将棋の方向性を決めた決断の一手と言える。
先手が強く▲同銀としたのが下図。▲同銀は当然の一手でここで▲4七銀は手の勢いからも考えられない。封じ手で激しい展開は必須となった。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀 ・v玉 ・v飛v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:角 歩
【手数=23 ▲3五同銀 まで】
ここから△4五歩▲6五角△4六歩▲4四歩△3一歩と進んだ。
いきなりの▲6五角は急所をにらんだ角だが単発感がありこれも勝負手という感じがする。また△3一歩はいかにも異筋。森けい二九段の手なら驚かないが名人戦の檜舞台ではなかなか指せない。
下図は△6四角としたところ。ここからの手順も驚いた。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v飛v歩v桂v香|一
| ・v銀v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩v金 ・ ・v歩v歩|三
|v歩v歩 ・v角v歩 ・v銀 歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 角 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:なし
【手数=46 △6四角 まで】
ここから▲2六飛△4六角▲同 飛△5五銀▲4八飛△5六銀▲同 歩△2四歩▲6六角△3九角▲1一角成と進んだ。
▲2六飛になんと△4六角と切って△5五銀の両取り。局所的にここだけ見るとまるで級位者の手だ。
理外の理。人は経験を積むと本筋と思えない手はまず読まない。そこに手がいくことに羽生四冠の強さがある。
そしてじっと△2四歩と手を戻し、▲6六角に△3九角。
ここでの理外の理は△3九角が存在したこと。4八の飛車を逃げたのでは△6六角成で先手はなにをしたのか分らない。よって森内名人の▲1一角成は当然。
かくして飛車角交換から△2八飛と飛車をおろしたのが下図。後手の攻めは好調に見えるが、駒得しているのは先手だ。しかも薄氷の受けは森内名人の得意とするところ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v飛v歩v桂 馬|一
| ・v銀v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩v金 ・ ・ ・v歩|三
|v歩v歩 ・ ・v歩 ・v銀v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 玉 ・ 金 ・v飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:角 銀 香
【手数=60 △2八飛 まで】
ここから▲3八角△4五銀▲3九銀△5六銀▲6六馬△3八飛成▲同 金△4七銀成と進んだ。
▲3八角は工夫の受けで本譜のように銀を3九で使うのは予定だったと思われる。
△5六銀が後手狙いの気持ちの良い手。▲6六馬と耐える先手。継続の△3八飛成に▲同金が凄い手だ。先手陣は壁銀なだけに飛車を成り込まれたら防戦不能としたものだが、本局は大丈夫の様だ。
また△4七銀成で△3五角もやってみたい手だがBSの解説によると、これには▲5八玉!という手が成立しているらしい。
見応え十分の中盤だが、はたして形勢はどちらがよいのだろうか。後手に何らかの決め手があるのか、先手が受けきっているのか。
大詰めの終盤戦。後手が△5八角と打ったところ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩五
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ 龍 ・ ・|一
| ・v銀v玉 ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩|三
|v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 玉 歩v全 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・v角 ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・v龍 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:角 桂 香 歩
【手数=80 △5八角 まで】
ここから▲3四角△3三歩▲同 龍△6九角成▲8八玉△4五歩▲4八金!△同成銀▲6六香と進んだ。
▲3四角が嫌なら△5六角だが、敢えて▲3四角を打たせるのがいかにも羽生らしい手。▲3四角には△3三歩が用意の手で龍、馬のどちらで取っても味が悪いと見ている。
▲8八玉とようやく入城したところで指された△4五歩が事実上の決め手かと思ったが、そうではなかった。
▲4八金が先手の攻めを遅らせる犠打で、この手で形勢はひっくり返った。先の△3三歩で龍の位置を変えたのも▲6六香とされると裏目の手に見えてくる。
107手で森内の勝ち。1対1のタイに戻した。
本局はとても人間臭さの感じる将棋だったと思う。期待に違わぬ好局だった。
#一言日記:古田選手の2000本安打に続き清原選手も今日500号HRを達成した。両選手おめでとうございます。さて今年のGWは10連休。どうしましょ。
[2005/04/30 00:40]
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第3局
第3局も角換り。第1、2局は後手が一手損作戦を採用したが本局は従来通りの腰掛銀に。タイトル戦でもしばしば登場する腰掛銀は定跡化が最も進んでいる戦法の一つだ。
この戦法は先手が細い攻めで攻めきるか、後手が首の皮一枚で受けきるかという展開になるので、羽生の攻め森内の受けという構図で進行することは確定した。
最新形を踏襲しつつハイペースで進行した。下図が封じ手63手目▲4五桂の局面。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂 角|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・v香|二
| ・ ・v桂v金v歩v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v銀 歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ 桂 ・ ・v歩|五
| 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・v馬 ・|八
| 香 桂 玉 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二
【手数=63 ▲4五桂 まで】
ここから▲4五桂△5四歩▲3三桂成△同 桂▲4五歩△3四銀▲4四歩△4二歩▲3五歩△2五銀▲3四銀△2二桂と進んだ。
実は▲3四銀までの局面は過去の羽生vs森内戦(2003年王位戦リーグ、羽生勝ち)にある。この将棋は羽生の▲3四銀に森内は△4一桂としてる。△2二桂はその修正手順だ。しかしまだ前例を踏襲している。
前例から離れたのは実に85手目だった。図は先手が飛車のいる6筋から▲6四銀△同馬と動いたところ。過去の前例は▲3三銀の直接手だった。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ 角|一
| ・v飛 ・ ・ ・v歩v金v桂v香|二
| ・ ・v桂v金 ・ ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v馬v歩 歩 歩v銀 ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v桂v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 飛 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:銀 歩二
【手数=84 △6四同馬 まで】
ここから▲4三歩成△同 歩▲6四飛△同 金▲5三角△2一玉▲6四角成△1一玉▲4一銀と進んだ。
▲4三歩成が新手(実戦で初めて指されるという意味で)で前例のない将棋となった。狙いは本譜の通り▲5三角の王手金取り。
二日目午前で実に92手目△1一玉まで進んでいる。早い終局が懸念されるが杞憂だった。ここから濃厚な攻防戦が展開される。
この辺りは先手の攻めが繋がっているという評価だった。先手が羽生ということで多少のバイアスがかかっている雰囲気はあったのかもしれない。
少し進んで下図。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:角 銀 歩六
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・v玉|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v桂v香|二
| ・ ・v桂 ・ ・v歩 ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ 馬v歩 ・v龍v銀 ・|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v桂v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 歩 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金 歩
【手数=96 △3四飛成 まで】
ここから▲7三馬△4二飛▲5一馬△4五角と進んだ。
▲7三馬ではまずは直ぐに▲3二銀成と行く手が浮かぶ。これで攻めが続きそうなので先手優勢なのではと言われていたが羽生は▲7三馬。曲線的な変化を好む羽生らしい手に映った。
△4五角がぼんやり手を渡した手だが好手。
さらに少し進んで下図。ギリギリの攻防戦だ。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:銀二 歩六
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ 馬 ・ と ・v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ 金 ・v桂 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v飛v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・v銀v香|四
| ・v歩v歩 ・ ・v角 ・v桂v歩|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・v龍 ・ ・|八
| 香 桂 玉 歩 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:金 桂
【手数=108 △3八龍 まで】
▲5六桂△1二玉▲3二金△3七飛成▲4八金打△3二龍▲同 と△同 龍と進んだ。
▲5六桂が先の△4五角を上回る攻防の好手という印象だったが「使わされた」という感じもする。
△1二玉の早逃げに▲3二金だが、ここで▲3二とが控え室の予想でこれなら先手優勢とのことだった。
確かに▲3二と△3七飛成となれば▲2二と△同玉としてから▲4八金打なら先手有望だろう。しかし、さすがに両対局者は読んでいて▲3二とには△3六飛という読みが暴露された。
△4二同龍まで進んでみると先手の攻めは切れている。してみると戻って97手目▲7三馬がやはり疑問手ということなのかも知れない。
22時49分、遂に羽生が駒を投じた。154手で森内の勝ち。白熱した終盤戦だった。第4局以降も熱戦が期待できる。
#一言日記:プロ野球交流戦は観ていて面白く企画的には成功だと思う。セリーグ首位中日と最下位巨人が対照的な成績なのも興味深いところ。中日ファンとしてはちっとも面白くないのだが。
[2005/05/15 22:20]
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第4局
毎回白熱した将棋が展開されてる今期の名人戦、本局は後手羽生四冠がゴキゲン中飛車を採用した。先手森内名人は3六銀と右銀を繰り出す対ゴキゲン中飛車でよく見られる作戦を採用した。
図は▲4五銀に対し△3五歩としたところ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v飛 ・v銀v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 銀v歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 金 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=30 △3五歩 まで】
ここから▲3四銀△2二角▲2四歩△同 歩▲2三歩△4四角▲4五歩△6二角▲6八銀と進んだ。
▲6八銀は各道を通す気持ちの良い手で、この辺りは先手の構想通りに進んでいる。後手は何かカウンターを用意していなければいけないはずなのだが。
少し進んで下図。後手に捌く手段があるかが焦点だ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v玉v銀v角 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ 歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v飛 ・ 銀 飛 ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 金v歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=44 △5四飛 まで】
ここから▲2二歩成△5一角▲2七飛△2二銀▲4四歩△同飛と進んだ。
先手の狙いは▲4四歩だがその前に▲2二歩成をそつなく利かした。▲2二歩成は本譜のように△5一角があるが▲2七飛に△3四飛と勝負するのは▲3二とからの攻め合いとなりこれは先手に分がありそうだ。
▲4四歩に後手はどう応じても味が悪い。△同飛は飛車を取られてしまうが、△同歩は▲5五金から押さえ込まれてひどいことになりそうなので、苦渋の選択だろう。
それでも指しているのが羽生なのでどうにかして手を作ってくるのだろうと思ったが、結局マジックも何もなかった。
図は▲5三飛と打ったところ。5一の金が逃げれば▲5六飛成で先手陣は憂うとことがなくなる。本譜もそのように進み逆転の望みは万に一つもない将棋になってしまった。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:金 桂 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金 ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩v歩v歩 ・ 飛v歩v角 ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 飛 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=67 ▲5三飛 まで】
本局はゴキゲン中飛車側の作戦が芳しくなく、序盤30手目位で既に先手が指し易いと思う。羽生vs森内戦にしては見所の少ない将棋だった。
87手で森内の勝ち。先に3勝を挙げたのは森内だった。
#一言日記:C.カッスラー原作の「死のサハラを脱出せよ」が映画化され、6月に公開される。このシリーズは愛読しているので少し期待している。おすすめ。
[2005/05/26 01:40]
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第5局
第5局はタイトル戦では非常に珍しい相横歩取りとなった。この戦法は以前から横歩マニアとでも呼ぶべき人々によって研究され尽くされている。横歩音痴の私には縁のない世界だ。
先手勝ち易いと言われているこの戦法を後手の森内名人が持った意図はどのあたりにあったのだろうか。
飛車角交換の激しい展開となり下図。△8八角と合わせるのが定跡だが、△8六歩と垂らしたのが工夫の一手か。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:飛 角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:飛 歩三
【手数=24 △8六歩 まで】
ここから▲同 銀△7三角▲同角成△同 桂▲7七銀△5二玉▲8一飛△8五飛▲同飛成△同 桂と進んだ。
△8六歩には▲8八歩として先手良し、とかの「羽生の頭脳」に書かれているようだが、羽生四冠は強く同銀。
この忙しい時に△5二玉としたのは、緻密な受けを得意とする森内らしい手に思えた。▲8一飛に△8五飛と合わせて△8五同桂と進んだ局面は後手が一手も掛けずに8一の桂馬を8五に捌いたと見ることもでき、横歩音痴には後手も面白いのではと思ったのだが、やはり先手がよかった様だ。
横歩音痴にも再び先手がよさそうに思えてきたのは下図の辺り。△4四角と打った局面だが手筋の一着が出た。
後手:森内俊之名人
後手の持駒:飛 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v銀v金 ・ ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・|四
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩v歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:飛 角 歩四
【手数=38 △4四角 まで】
ここから▲6六歩△2八歩▲同 銀△6六角▲6四歩と進んだ。
▲6六歩と6筋の歩を切って▲6四歩としたのが、玉に近いだけにすこぶる厳しかった。
69手で羽生の勝ち。羽生が土壇場で踏ん張った。羽生は第6局以降は棋聖戦とダブルタイトル戦となり忙しくなる。
#一言日記:夕べは近場の源氏ホタルの里までドライブした。ホタルを観れたのは良いが帰り際に土砂降りにやられてしまった。
[2005/06/05 01:10]
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第6局
名人戦に遂に矢倉が登場した。雌雄を決するのはやはり矢倉ということだろうか。
わりとオーソドックスな4六銀3七銀型だが、やはりというべきか最新形に進行していった。後手陣は専守防衛。下図は力強く△5四金と出た手に対し▲3五歩としたところ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v角 ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v銀v歩|四
|v歩v歩 ・ 歩v歩 ・ 歩 桂 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩
【手数=61 ▲3五歩 まで】
ここから△同 角▲3七角△7一角▲5六歩△3五銀と進んだ。
形は△同銀だと思うが、△同角と取り△7一角と引いたのが意味深長な手。形は銀で行きそうだが角の位置を6二から7一に換えたことに価値があると判断した。
図は△2七銀不成に▲6八飛としたところ。先手の角は遠く8二の飛を睨んでいるが、ひもがついているのが△7一角の効果だ。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v角 ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・v歩 ・ 歩 ・v歩v歩 ・|四
|v歩v歩 ・v金 ・ 歩 ・ 桂v歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ ・v銀 ・|七
| ・ 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 角|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩二
【手数=79 ▲6八飛 まで】
ここから△8六歩▲5七銀△8七歩成▲同 金△6四歩と進んだ。
ここで△8六歩は絶妙のタイミングだったようだ。先手玉の形を乱して後手がペースをつかんだか。
後手には7一の角筋を活かして△1八銀〜1六香の田楽刺しの狙いがあり、実際本譜もこの筋が現れた。
128手で羽生の勝ち。羽生は土壇場で踏みとどまり、勝負は最終局に持ち越した。
好局だったと思う。7一角が妙に印象に残る一局だった。
#一言日記:王位戦は佐藤康棋聖が挑戦者に。羽生vs佐藤は棋聖戦王位戦のダブルタイトルマッチになった。
[2005/06/18 23:55]
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第7局
名人戦の名にふさわしく内容が充実している今期名人戦。森内名人がタイトル戦初防衛に成功するか、はたまた羽生十八世名人誕生か。
注目の最終局は、やはりというべきか矢倉となった。振駒で先手は森内。
図は△4五歩で4六の銀を誘い出し、2五の桂を銀で取って△5三桂としたところ。よくある手法だが個人的には桂がだぶっていて嫌い。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂v歩v桂v金 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v角v歩 ・v歩 ・ ・|四
|v歩v歩 ・ ・ ・ 銀 ・ 歩 歩|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:銀 歩
【手数=52 △5三桂 まで】
ここから▲3四銀△同 金▲7五歩△同 角▲4六角△6四銀▲7二歩と進んだ。
この局面は先手は銀を3四か5四に捨てるしかない。そうすることによって形を乱して▲7五歩。
△7五同角▲4六角の局面は過去に1例あるらしくその将棋は△6四角とぶつけている。
本譜は△6四銀。異筋の受けで、羽生流の勝負手といえるかもしれない。
▲7二歩は手筋で先手不満のない展開と言えそうだ。
図は△5五歩としたところ。6三に成銀が出来ているのは7二歩の効果。
後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 歩 ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v桂 全v桂 ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・ ・|四
|v歩v歩v角 ・v歩 ・v金 歩 歩|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・v歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 角|九
+---------------------------+
先手:森内俊之名人
先手の持駒:歩二
【手数=68 △5五歩 まで】
ここから▲7六金△8六歩▲同 歩△6五桂右▲同 歩△同 桂▲3四歩△同 金▲2六桂△7七桂成▲同金上と進んだ。
ここでは▲7六銀が形だが▲7六金が力強い好手だった。ダブった桂を捌いたものの▲3四歩〜▲2六桂が厳しく△7七桂成に▲同金上としたところでは先手陣は手厚く先手優勢だろう。
109手で森内の勝ち。歳終局までもつれこんだ今期名人戦は森内名人の初防衛で幕を閉じた。羽生は通算5期という永世名人の資格への挑戦だったが十八世永世名人にはなれなかった。
好局も多く、最近のタイトル戦では白熱した良いシリーズだったと思う。
#一言日記:ここ数日暑い日が続いている。汗だくになりながらエアコンを掃除し、今年エアコン初稼働日となった。
[2005/06/26 23:00]
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