第41期王位戦レポート

第1局

第41期王位戦第1局は羽生王位の先勝。戦型は大方の予想に反して(?)相振りだった。相振りは不思議な戦法だと思う。一言で表現すると「鏡に映した相居飛車」って感じ。自玉の頭に相手の飛車がいる関係は相居飛車に似ているが、でもやはり居飛車とは違うし、もちろん振り飛車の将棋とも全く異質な感覚を要する戦法だ。
筆者の相振り感はこれくらいにして、ちょっと第1局に触れてみよう。
後手:谷川浩司棋聖
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v銀v玉v金v金 ・v銀 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v桂 ・v角|三
| ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 角 銀 ・ ・v飛 歩|六
| 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 金 玉 銀 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩二 
【手数=44 △8三歩打 まで】

図以下、▲3四飛△4四歩▲1五歩△4三金▲3六飛...。
図は先手が8四同飛と飛車を走ったのに対し△8三歩としたところ。ここで先手の指し手は▲3四飛。この手が印象深かった。こちらに飛車が行くと飛車交換に成り易く、実際本譜も飛車交換になった。一見陣形の低い後手陣の方が飛車打ちの隙がなさそうで、また後手に飛車を先に打たれそうなのでちょっと思い付かない手のような気がする。しかし▲1五歩が入るので成立してるのか? やっぱり相振りは難しい。誰か解説して下さい。
83手で先手羽生王位が防衛に向けて好発進をした一局でした。
[2000/07/11 旧日記&備忘録より]
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第2局

ダブルタイトルマッチの王位戦第2局は後手羽生四冠が四間飛車に振った将棋となった。先手谷川棋聖は早めに▲3六歩と突いてから左美濃に。この早めの▲3六歩、少し前までは持久戦の場合は駒が組み上がるまでいらぬ神経を使わないように保留するの通例だったが、藤井システムを牽制する意味で指されるようになった。序盤の戦略は日々進歩しているようだ。
さて本譜は先手が端玉からにさらに銀冠に組み換えようとした瞬間狙って後手が積極的に動いた。9筋で角銀交換で銀を手にした後手だが、中央では5五の銀が銀鋏みのピンチ。この瞬間に手が欲しいところだ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:銀 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・v香|二
| ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩v銀 歩 歩 歩 ・|五
|v香v歩 歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| 玉 角 ・ 銀 金 ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司棋聖
先手の持駒:角 
【手数=67 ▲8七歩打 まで】

図以下、△8七歩成▲同玉△8六歩▲同玉△8五歩▲7七玉△4九銀...。
8筋を決めてから△4九銀の割り打ちが本譜。4七にと金を作るのに成功したが、駒損も大きく先手を持ちたい感じだ。この後8九の桂馬を攻めに使う発想の▲9七桂というちょっと思い付かない手が出て先手の勝ちとなった。
この図、後手に何か手ないのかな。例えば△7八銀は? ▲8六歩なら△8七歩、▲7七金なら△8七歩成▲同金△同銀成▲同玉△5六銀...。ちょっとたりないのですかねェ。
ともあれ終盤は「光速」の寄せで109手で谷川棋聖が勝ち1−1のタイに。棋聖戦も現在タイスコアでおもしろい展開となってきた。羽生四冠も谷川棋聖も後手番は四間飛車を指して下さ〜い。
[2000/07/28 旧日記&備忘録より]
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第3局

王位戦第3局は羽生が勝ってまた2−1と一歩リードした。本局は羽生王位が先手番にもかかわらず四間飛車を採用していた。振り飛車党の筆者にとってはうれしいことだ。対する後手谷川九段の作戦は右四間だった。先手は早めに7五歩と突いたのに対し後手はすぐに△6五歩と反発、あまり見かけない将棋になった。最後は羽生マジックっぽい手(玉の早逃げ▲1八玉)も出て羽生の勝ち。羽生五冠はどんな戦法を指しても強いっすネ。
谷川九段の右四間ってたまに指すけどあまり勝っていない気がする。竜王戦でも藤井竜王に完敗してるし...。右四間飛って正直あまり優秀な戦法と思わない。右四間サイドが仕掛けのチャンスをうかがいながら駒組をすすめる展開になりがちだが、四間飛車側から見るとどこで仕掛けられても不利になる気がしないからだ。ただ右四間の使い手は腕力自慢の人が多いので指されると嫌な戦法の一つなんだけど...。
王座戦挑決谷川−藤井の方は藤井猛竜王が勝って羽生王座への挑戦権を得た。こちらも谷川九段が勝てばまたまた羽生谷川の顔合わせとなるところだった。それだけ勝ちまくっている谷川九段だが、羽生五冠はさらに上のようだ。谷川九段には少しお休み頂いて、藤井竜王との王座戦も楽しみだ。個人的には羽生五冠の牙城を崩すのは特定戦法のスペシャリストである丸山名人か藤井竜王が最も有力だと思っている。
[2000/08/10 旧日記&備忘録より]
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第4局

王位戦第4局は先手番谷川九段が切り札とも言える角換り腰掛け銀を採用して勝利。2−2のタイスコアに追い上げた。無冠になった谷川だが、窮地に立たされてからの踏ん張りに注目したい。一方、羽生五冠は対局過多が気になるところ。こちらは竜王戦挑決や王座戦の防衛戦が控えている。
[2000/08/23 旧日記&備忘録より]
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第5局

王位戦第5局は羽生五冠が勝って防衛に王手をかけた。後手谷川九段は四間飛車を採用したが、先手羽生は例の8九に玉を囲う戦法を王座戦に続いて採用していた。見なれない将棋なので両者とも駒組にぎこちなさを感じる展開になったが、四間飛車の作戦があまり芳しくなく王座戦とは逆に新戦法の圧勝だった。本局は羽生の対四間飛車だったわけだが、対藤井四間飛車の作戦の糸口になったのだろうか?この戦法を再度試みるのだろうか?採用する場合は更なる工夫が観られることだろう。先の竜王戦挑決の対佐藤康光戦は羽生自ら四間飛車に振って、さながら佐藤九段の藤井システム対策を探っているかのようだった。何が飛び出すか興味は尽きない。
週間将棋の編集部ではこの戦法を「ミレニアム」と呼んでいるそうだ。内輪でどう呼ぼうと自由だがそれを紙面に載せてしまうのはちょっと調子に乗り過ぎと思う。プロ棋士間で呼ばれているとか、戦法に相応しいネーミングと思っているとかいった理由があるならいざ知らず、「ミレニアム」って全然意味ないじゃん。
[2000/09/05 旧日記&備忘録より]
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第6局

王位戦第6局はうれしいことにまたしても振り飛車戦となった。今度は後手羽生の四間飛車。先手谷川は早めに▲3六歩としてから8六の歩を突いた。第2局と同様左美濃になると思いきや▲5五角〜8八銀と趣向の駒組だ。さらに角は右辺に転回するのかと思いきや▲4六歩△5四銀▲7七角とまた左辺に戻るという、よく理解出来ない序盤だった。そして下図を迎えた。

後手:羽生善治王位
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 角 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:なし
【手数=35 ▲3八飛 まで】

ここから△4五歩▲同 歩△4二飛
振り飛車から角交換を挑んだのが、振り飛車党には考えられない構想だった。美濃の媚びんが開いているのでちょっと指し切れない感じがする手だが...。
さらに進んで下図。ここで光速流が炸裂した。

後手:羽生善治王位
後手の持駒:飛 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀 ・ ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩v歩|三
|v歩v歩 歩 ・v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 桂 金 ・ ・ 角 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:角 歩三 
【手数=52 △8二銀 まで】

ここから▲8二同角成△同 玉▲3七角
▲8二同角成と角を切って再度の▲3七角が厳しかった。71手で先手谷川九段の勝ちで3勝3敗のタイスコアになり決戦は最終局へ。
羽生五冠の体調が良くなかったという話だが最終局は両者とも万全の体調で望んでほしいものだ。全て先手番が勝っている本棋戦。勝敗の行方は振り駒勝負!?
[2000/09/15 旧日記&備忘録より]
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第7局

王位戦は羽生が8連覇を達成した。8連覇ということは羽生五冠は8年前も王位だった訳で、そんな当たり前の事実に今さらながらビックリ。
[2000/09/26 旧日記&備忘録より]
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