第44期王位戦レポート

第1局1日目

前期に引き続き谷川vs羽生のゴールデンカードとなった。私も含めて、今もなお最も見たい対戦と思っている方も多いのではないだろうか。
戦型もおおいに気になるところだが、第1局は相振りとなった。羽生は「相振りに興味がある」といったらしいが、プロ界でも相振りが俄にブームとなりつつあるそうだ。

羽生先手の本局は初手から、▲7六歩△3四歩▲6六歩△3三角▲7八銀△2二飛▲4八銀と進んだ。
先に飛車を振ったのは後手谷川。2筋に飛車を振った。▲4八銀の時点で羽生が相振りを趣向していたかは不明だが、結局振って、矢倉を目指すことになる。
封じ手は下図の局面。一度2筋に振った飛車を3筋に戻したところ。なんとなく違和感がある手だ。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ 歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 角 銀 歩 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=24 △3二飛 まで】

相振りと言えば囲いは金無双か穴熊と相場が決まっており、矢倉に組めたら作戦勝ちという印象がある。
ところが、最近は美濃囲いが見直されてきた感じで割とよく見かけるようになった。本局の後手は美濃である。また本局の先手のように飛車を振るより先に右銀を3七にもっていき最初から作戦勝ちになりやすい矢倉を目指すのも最近の傾向のようだ。
元々定跡が整備されていない相振りではあるが、本局は類を見ない完全な手将棋となった。

#一言日記:王位戦主催紙のWEB中継がライブカメラ設置等、新しい試みをしている。
[2003/07/16 02:15]
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第1局2日目

封じ手は▲3三角成。以下△同 桂▲7七角△5四銀▲5六銀△4三金と進んだ。
前日に指された△3二飛は違和感のある手だが、角交換を誘ったという見方も出来る。▲3三角成は当然こう指したいところ。
△4三金は形が悪く指し難いが角に睨まれては飛車が動けないのでしょうがないところか。

後手は進展性のない美濃囲いで、先手が十分に駒組する前に攻撃したいところだ。一方先手は指したい手が沢山ある。後手に有効な手がなさそうなので、先手が作戦勝ちになりそうな雰囲気だったが...。

後手はとりあえず銀冠(8三銀7二金の形)に組み、飛車を右往左往。その間に先手は着々と駒組をし、いよいよ先手の作戦勝ちが濃厚になったと思ったのが下図のあたり。
後手:谷川浩司王位
後手の持駒:角 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・v金 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v歩v歩v金v桂 ・v香|三
|v歩v歩v歩 ・v銀 ・v歩v歩v歩|四
| ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 角 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ 桂 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・|七
| ・ 飛 ・ ・ 金 金 玉 銀 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=57 ▲8八飛 まで】

ここで△8二角。なかなかの好手だったようだ。この手を境に突如形勢が分からなくなった。

下図は金取りに▲2三銀と打ったところ。金を逃げれば▲3四歩。単純な狙いだけに防ぎ難そうだが。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:桂 歩四 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・ ・v玉 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・v角 ・v歩 ・v桂 銀v香|三
|v歩v歩v銀v金v桂 ・v金v歩v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ 銀 歩 銀 ・ 歩|六
| ・ ・ 角 金 歩 ・ ・ 歩 ・|七
| ・ 飛 ・ ・ ・ 金 玉 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩三 
【手数=95 ▲2三銀打 まで】

ここから△8五桂▲3四銀成△7七桂成▲同 金△2五桂と進んだ。
二枚換えで更に先手の駒損になっているが、左桂を捌けたのが大きく、先手の金銀はばらばらなので、この折衝でむしろ後手が有利になったのかもしれない。

134手で谷川の勝ち。防衛に向けて幸先の良いスタートを切った。後手番の第一局をブレークしたのは大きい気がする。
それにしてもいつごろ逆転したのか。あるいは先手ペースで進んだと思っていたのが勘違いだったのか。終止難しい将棋だった。あまり好きではない相振りが少しだけ魅力的に感じた一局だった。
相振りの名局だったと思う。

#一言日記:今年のオールスターは、オール阪神vsパリーグって感じ。それにしても前半戦の阪神は強かった。巨人は弱すぎ。
[2003/07/17 01:15]
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第2局1日目

第2局は▲2六歩△8四歩の出だしから相掛りになった。
下図が封じ手の局面。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩v飛 ・ ・ ・v角v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司王位
先手の持駒:歩 
【手数=33 ▲4六歩 まで】

この局面、後手が随分頑張っている感じがする。4四の角の当たりがきついし5五の歩は狙われそうで、普通に指したら自然に先手が作戦勝ちになりそうな気がするけどなぁ。後手番故の苦悩が伝わってくる、というのは言い過ぎか。
局面の評価は置いておくとして、定跡形からはずれた力戦になったので2日目も面白い展開が予想される。

#一言日記:梅雨は明けたのか?
[2003/07/30 01:00]

第2局2日目

封じ手は△3五歩。以下▲4七銀△2二角▲6六銀△5四飛▲3六歩と進んだ。
△3五歩は手順に好形の▲4七銀を与え、▲3六歩とされるのでちょっと指し難いと思ったが、△2二角と引いて後手の狙いがちょっとだけ見えて来た。飛車を横に使い、左辺に展開してから右桂を使おうということだろう。
しかし、△2二角はいかにも手損で棋理に反している気がする。

少し進んで下図。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v角 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
|v歩 ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 銀 ・|五
| 歩 ・v歩 銀 ・ 歩 ・ 飛 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司王位
先手の持駒:歩 
【手数=58 △7四飛 まで】

ここから、▲3四銀△4四角▲2三銀不成△3五角▲3二銀成△同 玉▲2三金と進んだ。
プロの将棋でこんなに明解に棒銀で飛車先が破れる局面が現れるのは珍しいことではないだろうか。重たく金を打って、次の▲2二歩を見せて先手好調である。

後手がやや挽回したかに思える場面もあったが、それは先手が切り合いを目指したからと見て良いと思う。緩みない寄せで117手で谷川王位が勝って、強敵羽生四冠に連勝した。

#一言日記:マトリックスを観に行こうと思っているがなかなか時間がとれない。今週末こそは...。
[2003/07/31 01:10]
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第3局1日目

今期の王位戦は力戦形シリーズなのか、本局も流行の中座飛車や、四間飛車の将棋にはならなかった。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀△5五歩▲6八玉△6二銀
と進んだ。後手が流行りのゴキゲン中飛車にするかと思いきや、▲6八玉を見て△6二銀として、ちょっとレトロな感じの漂う相居飛車と相成った。
下図が1日目終了の局面。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v桂 ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 金 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩 
【手数=33 ▲4六銀 まで】

かつては天王山と言われていた5五の位だが、近代将棋においてはさほど重要視されなくなってきた。本局の後手谷川王位は飛車先の歩を切ることより5筋の位が大きいとの大局観か。
個人的には飛車先の歩交換の実利と美濃の堅陣を築いている先手を持ちたい気がする。

#一言日記:台風が近付いているという。頼むから9日だけは晴れてね(個人的理由)。マトリックスまだ観てません。
[2003/08/07 01:10]

第3局2日目

封じ手は△6五歩。5筋の位を取っている関係上、ここは歩交換位で収めて持久戦模様にしたいところだが、先手は▲3五歩という分かりやすい攻めがある。
後手は多少細い仕掛けでも攻め続けなければならない局面なのかも知れない。後手は78筋を突き捨て、攻め続けた。
後手:谷川浩司王位
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v金v角 ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩v桂v歩 ・ 歩 ・ ・|五
| ・ 歩 ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 金 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 銀 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩四 
【手数=43 ▲8八角 まで】

図から△5六歩▲2二角成△同 金▲5六歩△3九角▲3八飛△7五角成▲6六歩△7七歩▲8七銀△8五歩と進んだ。
遂に5筋も突き捨てて△3九角から馬をつくるが、▲6六歩と桂取りを見せられて忙しい。壁金もひどくとても成立しているとは思えなかったが。
△8五歩が攻めを続ける唯一の手段で、後手の攻め、先手の受けという展開になってきた。先手としては丁寧に受け切りたいところだろう。

しかし、攻めているのは谷川王位だ。細かく手をつなぐ。羽生も強く受けて、稀に見る熱戦となってきた。
下図は△6四銀!と出たところ。凄い手だ。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:金 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v飛 ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ 歩 ・ ・v金v銀 ・v金 ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 角v桂 ・ ・ 歩 ・ ・|五
| ・ 金 ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:角 銀 歩五 
【手数=70 △6四銀 まで】

ここから▲7二歩△同 飛▲6五歩△7五銀▲6四桂△7七歩▲同 飛△7六歩▲同 金△6四銀▲6一銀△8五桂と進んだ。
実に目が回る攻防戦。沢山駒が当たっていて訳が分からない。
こういう将棋を熱戦と言うのだと思う。熱戦はこの後延々と続くが、最後は谷川が羽生玉を即詰めに打ち取って150手で勝利を収めた。

この将棋は後手の攻めはやや無理で無理攻めを強いた先手の作戦勝ちかと思っていた。図でも先手が残しているかと思っていたが、羽生は図の△6四銀で「はっきり苦しくなった」と振り返っている。
光速流健在。最大の敵である羽生四冠を挑戦者として迎えた今期王位戦だが3連勝と願ってもない展開になってきた。
何度も言うが熱戦だった。是非盤に並べるべし。

#一言日記:盆休み突入!9日から旅行の予定なんだけど、台風が...。
[2003/08/09 00:40]
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第4局1日目

第4局は後手ゴキゲン中飛車となったが、先手が5筋の位を許す比較的穏やかな展開となった。
図は封じ手の数手前。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司王位
先手の持駒:なし
【手数=20 △3三角 まで】

ここから、▲3六銀△3二金▲4五銀△3五歩と進んだところで先手谷川王位が手を封じた。
▲3六銀は右桂が使えなくなり一見筋が悪いが、状況によってはありえる手らしい。▲4五銀とスピード感十分の銀出に対し、後手は軽くいなしたいところ。
封じ手は光速流ならば▲3四銀以外にありえないと思う。しかしちょっと軽い感じがするだけに果たして...。

もう一つ、この局面△6四歩にちょっと違和感を感じるが、今後の展開にどのような影響を及ぼすか注目したい。

#一言日記:今年は夏が来ないものと思っていたら、ここ数日とても暑い。PowerBookはけっこうな熱源です。
[2003/08/27 00:50]

第4局2日目

封じ手はやはり▲3四銀だった。少し進んで下図となった。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v角v金 ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ とv歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v飛 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・v歩 歩v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司王位
先手の持駒:歩 
【手数=33 ▲2三歩成 まで】

先手は銀損の代償に突破した。
こういう大きな駒損を伴う局面は大局観がとても大事だ。意見の別れるところだろうが、個人的には駒得の後手を持ちたい気がする。果たして両対局者はこの局面をどう判断していたのだろうか?
現実的には、互いに主張を通し形勢不明といったところか。

さらに少し進んで下図。2筋に飛車を回られたが、寸前のタイミングで金を入手して、▲3九金と飛車成りを防いだ局面だ。

後手:羽生善治四冠
後手の持駒:銀 香 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v角v金 ・ ・ ・v歩 龍|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v銀 ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・v歩 歩v歩 ・v飛 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 金 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ 金 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司王位
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=55 ▲3九金打 まで】

ここから△2二銀▲1二龍△4五歩▲4三歩△4六歩▲同 金△4一歩と進んだ。
先手の攻めを軽くいなした後手は、次にもたれて指して来た。この「いなす→もたれる」指し方は故森安秀光九段のような一昔前の強い振り飛車を彷佛させる。後手桂損ながら流れは振り飛車ペースになった感じだ。

この将棋は終盤の攻防も面白く、ねじりあいの熱戦となった。
結果は172手で羽生四冠が大熱戦を制した。3連敗で一気に追い詰められた四冠だったが土壇場で踏ん張った。

#一言日記:火星大接近。しかし今夜は雲がかかっていた見えなかった。
[2003/08/28 01:30]

第5局1日目

第5局は出だしから少し面白い将棋になった。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△1四歩と進んだ。
△1四歩が面白い手。最近、角換り将棋で後手から角交換してわざと一手損する指し方が流行っている。△1四歩は序盤の貴重な一手を更に端歩に消費する作戦だ。
角換りにおいては飛車先を保留すると利になる場合が多く、少し手順は違うが竜王戦決勝トーナメントで山崎五段が谷川王位相手に指している。

谷川vs山崎戦では角換り腰掛銀になったが、本局は先手羽生四冠が角道を止めて違う将棋となった。
下図で先手羽生四冠が2時間を越える長考の末、手を封じた。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v銀v歩 ・|三
| ・ ・v歩v角v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 桂 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 ・ ・ 玉 角 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:なし
【手数=34 △6四角 まで】

先手は飛車先の歩交換を許して菊水矢倉に組む作戦だ。しかし、この局面を見る限りは△1四歩を明確に咎めることは出来なかったように思う。むしろ序盤で一方的に飛車先の歩を交換されている点は後手の大きなポイントではないだろうか。

#一言日記:巷ではフジテレビ系の「トリビアの泉」という番組が流行っているが、バンダイでへえボタンを発売するそうだ。
[2003/09/09 02:10]

第5局2日目

ちょいと時間が経過してしまったが、2日目を振り返ってみたいと思う。

一日目終了図でも感じることがだ、先手にとっては△1四歩を意識し過ぎてやや失敗した序盤戦だったと思う。
このままでは勝機が訪れないと判断したのか、先手はやや強引に手を作り、後手は丁寧かつ強気に受ける展開となった。

下図は中盤戦。1八にいた飛車を一つ叩いて、△1四歩と、先手の攻めを催促したところ。先手の自陣側の桂は跳ねてしまっているので忙しい。

後手:谷川浩司王位
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v飛 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・v金v角 ・v銀v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩 ・v銀v歩 ・v歩|四
| ・ 桂 ・ ・v歩 桂 ・ 歩 角|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 銀 ・ ・ 飛|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治四冠
先手の持駒:歩二 
【手数=76 △1四歩打 まで】

ここから▲4二角成△同 玉▲5二歩成△同 玉▲5四歩△6三玉▲5三銀△5四玉と進んだ。
色々嫌みを付けつつ、先手はいよいよ角を切って猛攻を仕掛けて来たが、後手はまるで駒落ちの上手のような玉捌きで先手の攻めをいなした。

谷川強し!この後も遂に羽生マジックは出現せず、126手で谷川王位が勝利し、羽生四冠のリターンマッチを4−1で退けた。

#一言日記:祝!佐藤和俊新四段誕生。千葉県出身の振り飛車党の棋士ということなので応援します。
[2003/09/14 00:30]
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