第1局
王位戦が始まった。同時に棋聖戦も進行中で12番勝負の第4局という見方もできる。棋聖戦の方は角換り2局、矢倉1局と来たせいか本局は後手羽生王位がゴキゲン中飛車を採用した。
下図は中盤戦。5筋で激しい戦いがあり、収まった局面。3八と6一の金は一旦持ち駒になった金だ。互いの主張が通った格好になっている。
ここで佐藤棋聖の指した手が印象に残った。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v金 ・ ・ ・ 龍|一
| ・v玉v銀 ・v香 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・v銀v歩 ・v歩|四
| 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・v桂 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 ・ ・ 桂v馬|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:香
【手数=58 △2五桂 まで】
先手の指し手は▲7九飛。
味わい深い手だ。1一の香が5二に出世しているが、先手は持ち駒になっている。もやは5筋に飛車がいるのは戦場に近い分だけ損との判断だろうか。
素人振り飛車党の視点で見れば駒は捌けており、▲7九飛も飛車を閑居に追いやったと解釈してしまうが、先手の模様が良さそうだ。4四の銀が取り残されそうで、端を詰められているのも大きい。先手は龍の存在がやはり大きい。
下図は△2八歩成としたところ。見応えのある中盤戦だ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 金 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金 ・ ・ ・ ・|一
| ・v玉v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩 ・ と ・ 龍 ・|四
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩v圭 銀 ・ ・v馬|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 金vと ・|八
| 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:銀 桂 香二 歩四
【手数=90 △2八歩成 まで】
ここから▲5八歩△6七成桂▲同 玉△3八と▲8六香△7四角▲5六銀と進んだ。
強靭で緻密な受け。佐藤棋聖らしい指し方と思う。
終盤戦。△6六金に▲7八玉としたところ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:飛 金 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・v銀v金v金 ・v歩 ・ ・|二
|v歩 杏v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| 歩 ・ 桂v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 香 歩v金 ・ 銀 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ 歩 ・vと ・ ・|八
| 香 桂 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角二 桂 歩五
【手数=125 ▲7八玉 まで】
ここから△7五銀▲6六銀△同 歩▲8二金△6一玉▲7二成香△同 金▲同 金△同 玉▲8八玉と進んだ。
8八玉の早逃げが決め手で、先手の勝ちが見えてきた。7九飛と9五歩がとても大きい一手になっていることが分かる。
155手で佐藤棋聖が熱戦を制した。佐藤は棋聖戦から対羽生3連勝。
#一言日記:今日は次男の1歳の誕生日。あれから一年経ったと思うと感慨深い。
[2005/07/15 00:50]
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第2局
不思議な将棋だった。第2局は後手佐藤棋聖が趣向を凝らし見たこともない角交換型の振り飛車になった。
図は序盤戦。後手は自ら角交換して向飛車に。▲7七角の自陣飛車に対して△1二飛と我慢したため飛車先の歩を交換されている。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v銀 ・ ・v金v銀v飛|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 玉 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩
【手数=24 △3二金 まで】
かくしてもの凄い珍形が出来上がった。
玉の固さを最優先する現代の居飛車振り飛車対好形の常識をもってするならば、角を手放してはいるもののこの後自然に指せば優劣は別にしても模様を取りやすいのは先手だろう。
ただし冷静に見れば後手も手厚く受けに徹っすれば千日手には出来そうか。
1日目終了時は長い将棋になりそうな予感がしていたが、予想は大きく外れた。
図は中盤戦。先手が5筋から動いた。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩 ・v銀v桂v飛v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・|四
| 歩 ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ 銀 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:銀 歩二
【手数=48 △3三桂 まで】
ここから▲5四歩△同銀直▲5五銀△同 銀▲同 角△3三桂▲5四歩△6五銀▲5三歩成△同 金▲7七桂△7六銀▲7四歩△6四歩と進んだ。
先手は動いてはみたもののいかんせん角と桂だけの攻めは軽すぎたか。囲いも中途半端で仕掛けた効果もなくむしろ自陣が弱体化してしまった感じがする。
図は終盤戦。先手は馬は出来ているがその代償は大きい。先手の動き過ぎでここでは後手が良さそうだ。羽生マジックはあるのか。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 桂二 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 馬|一
| ・ ・v玉 ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩v歩 ・ ・v金v銀 ・v飛v歩|三
| ・ ・ 歩v歩v歩 ・v歩v歩 ・|四
| 歩 ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・ ・|五
| ・ 歩v桂 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:銀 桂 香
【手数=70 △7六桂 まで】
ここから▲7三歩成△同 玉▲7七香△7五桂
まで74手で佐藤棋聖の勝ち。
唐突の終局。神戸新聞によると
『羽生が「負けました」と頭を下げると、佐藤は驚いたように「えっ」と声を漏らした。』
という。もう少し二枚腰の羽生王位を見たかったが、羽生マジックはなかったようだ。
後手の作戦と先手の早すぎる投了、色々な意味で不思議な将棋だったが、これで佐藤の2連勝スタートとなった。
#一言日記:毎年この時期に開催されている七夕祭り。駅の近くに住んでいるので、ゴミのポイ捨てがとても気になる。
金曜日は仕事で午前2時位に駅前を通ったが、ロータリー全体がゴミ捨て場状態になっているのを目撃して閉口した。
[2005/07/23 23:30]
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第3局
第3局は相掛り。相掛りと言えば互いの飛車は浮き飛車で使うケースが多かったが、最近は▲2八飛と引くケースが多い。本譜も先手佐藤康光棋聖は▲2八飛と引いた。
序盤で珍しい手順があった。下図は1筋の歩を突きあったところ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・|三
|v歩v飛 ・v歩v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:歩
【手数=30 △1四歩 まで】
ここから▲7七角△3三角▲同角成△同 桂と進んだ。
おそらく手得を巡る駆け引きの結果と思われるが、△3三桂の形は決して好形ではない。それを承知で後手羽生王位は指しているわけで、素人には伺い知れないが、妥協を許さない最高峰の駆け引きがあったことを垣間みた気がした。
この後3三桂の桂頭を狙ったかのように△6五銀のガッチャン銀に▲4七銀と3筋に展開するかのような銀の動きを見せたが、佐藤棋聖の狙いは△6五銀を△7六銀とすり込ませて、これを逆に咎める方針だったようだ。
しかし、この作戦はやや無理だったか。図は予定の△8六歩としたところ。次の手は気付き難い。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v玉v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v桂v歩 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 歩v銀 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 銀 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 歩
【手数=45 ▲8六歩 まで】
ここから△7五角▲8五歩△同 銀▲3五歩△同 歩▲6三角△9五歩と進んだ。
△7五角がおそらく好手。端攻めを実現できて後手優勢になったようだ。
後手優勢でそのまま終局かと思われたが先手に好手が出てもう一山ありそうな雰囲気になったのが下図。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:銀 香 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v桂 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v金 ・v玉v金v銀 ・|二
| と ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・v銀 ・ ・ ・ 歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・v歩 馬 桂v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 桂 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 歩v金 ・ 金 玉 ・ 飛 ・|八
| ・v龍 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:角 桂
【手数=100 △8九龍 まで】
ここから▲3八飛△5四香▲3三歩成と進んだ。
▲3八飛が起死回生の好手らしい。しかし△5四香に対する▲3三歩成が逸機だった。BSの囲碁将棋ジャーナルによるとここは▲2二馬から攻めると先手の一手勝ちとのこと。
もしそうだとすると、△5四香はお手伝い以外の何者でもなくなってしまう。
126手で羽生王位の勝ち。前述のように紙一重の差だったが、ようやく対佐藤戦の連敗を止めた。
佐藤は王座戦でも挑戦者になったおり依然好調。羽生vs佐藤戦は棋聖王位に続き王座で3タイトル連続で同一カードとなった。
#一言日記:久しぶりにまったりと世界不思議発見を観た。そして野々村真氏のパーフェクト達成という珍事に遭遇。
かねてから噂のあったITMS-Jが遂に開設された。
[2005/08/07 00:20]
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第4局
タイトル戦でもしばしば相振りを見かけるようになってきたが、第4局は最新型の相振り飛車になった。
初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△3三角▲7七角△2二飛▲4八銀△4二銀▲3六歩△5四歩▲3七銀△5三銀▲8八飛と進んで下図。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v銀v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:なし
【手数=13 ▲8八飛 まで】
後手は△3三角戦法と呼ばれている戦法で、角道を開けたまま駒組を進めることが出来るのが特徴だ。
先手は矢倉の骨格である▲3七銀の形を作ってから飛車を振る作戦。第53期王座戦第2局(森内○vs●羽生)に類似しているが、左銀を6七まで持っていく手を保留している点がさらに進化している。先手後手どちらの作戦も有力なため、今後定跡化が進むと思われる。
さて、本局は後手が5筋の位を取って模様を見たが、△7四金を境に局面が動いた。△7四金の善悪は微妙で、素人目には不自然にうつるものの、佐藤棋聖が指しているのだからある手なのだろう。
図は△8三銀としたところ。さらに銀冠への組み換えを目指した手だが、危険だった。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v銀v歩 ・ ・v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・v金v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ ・ 角 銀 歩 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 飛 ・ ・ 金 ・ 金 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩
【手数=40 △8三銀 まで】
ここから▲8六歩△同 歩▲同 角△8五歩▲9七角△6三銀▲7七桂△7二金▲7五歩△8四金▲7六銀と進んだ。
8筋を歩を合わせて角を9筋に転換したのが機敏だった。△7四金を咎めつつ8九の桂と6七銀が前線に出たのが大きく、先手優勢になったようだ。
以下は危なげなく113手で羽生が勝利して成績を2ー2の対に戻した。
#一言日記:盆休みにスターウォーズを観た。旧3部作をリアルタイムで観た世代としては物語の環が繋がって感慨深いものがあった。
[2005/08/28 01:10]
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第5局
随分日が経ってしまったが、第5局。最近の両雄の対決は定跡形を外れた戦型が多い。本局も矢倉模様ではあるがあまり見ない戦型になった。特に後手の羽生陣はいかにも素人っぽい布陣だ。
下図は左美濃の低姿勢から5筋の歩を交換しにいった局面。後手の作戦で、労せずして先手は飛車先の歩を切っている。
ここから先手が巧みに局面をリードする。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v飛v金v銀v角 ・|二
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 角 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:歩二
【手数=36 △5五銀 まで】
ここから▲5六歩△4四銀▲4六歩△5六飛▲4五歩△5三銀▲1五歩△7四歩▲1四歩と進んで先手が先攻した。
一歩を犠牲にして敵陣を凝り形にする発想がなかなかの好着想だった。端攻めも後手の端は薄く、さらに右辺に逃げられない陣形を逆用している。
この後、後手も懸命に勝負手を連発するものの少しずつ足りなそうというのが大方の見解だったが、後手にもチャンスがあったらしいという話。
下図は△7七歩に▲6九玉と逃げたところ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:桂二 香
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v香v金|二
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v馬v歩 桂|三
| ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ 銀 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩v歩 歩 飛 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:飛 角 金 銀二 歩五
【手数=117 ▲6九玉 まで】
ここから△5五香▲2七飛△6五桂▲6六歩△7六桂▲6五歩、以下いくばくもなく133手で佐藤棋聖の勝ちとなった。
図では△7六桂という手が有力らしく、こう指せば後手にもチャンスがあったかも知れない。
#一言日記:ipod nano発売。なんでもAppleは三星のフラッシュメモリの40%を購入するそうだ。メモリが高騰しそうだな。
選挙は自民党圧勝。社団戦は...疲れた。
[2005/09/12 01:30]
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第6局
矢倉となった第6局。途中で角交換になり互いに角を持ち合う少しレトロな感じのする将棋となった。
下図は△5四銀と立ったところ。先後よく似ているが先手の6筋の歩が6五まで伸びている点が違う。これは後手が突かせた歩だ。すなわち△6四銀▲6五歩△5三銀という折衝を経てこの図に至っている訳だ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v銀v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:角 歩
【手数=44 △5四銀 まで】
ここから▲6六銀△5九角と進んだ。
▲6六銀は当然の一手。△5九角もこの位か。矢倉音痴にはどちらを持っても自信がない局面だ。
少し進んで下図。後手は馬はつくれたが銀桂交換の駒損になりそうな局面。4五の地点で銀交換になり△4五同馬と銀を取り返したところ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:銀 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 歩v馬 ・ 桂 ・|五
| ・ ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:角 銀
【手数=54 △4五同馬 まで】
ここから▲3三桂成△同 桂▲5一角△6二銀▲8三銀と進んだ。
本譜は▲3三桂成に△同桂だが、ここは桂馬で取るものだろうか。形は金寄だと思うのだが。
▲8三銀で大駒の取り合いが確定した。先手は飛車を手持ちにしたものの銀を僻地で使ってしまった。このようなそっぽの銀は最近の羽生将棋に多く見られる気がする。いかにも損な感じがするが飛車の入手がより大きいと見ており、事実これを境に先手が指しやすくなった気もする。
佐藤棋聖は懸命に粘ったものの135手で羽生王位の勝ちとなった。
これで3−3のタイに。勝負は最終戦に。ついでに明日(今日は)王座戦第2局。厳しいスケジュールだ。
#一言日記:遂に阪神にマジックが点灯してしまった。巨人に3タテくらっているようでは止むなしか。
[2005/09/16 00:20]
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第7局
フルセットとなった最終局、戦型は流行の後手一手損の角換り。下図は仕掛けの局面だが、途中手順の違いこそあるが第76期棋聖戦第1局(羽生○vs●佐藤)と同じだ。だたし先後は入れ替わっている。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ 角 ・v歩v金v銀v歩 ・|三
| ・v歩 ・ ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
| 歩v桂v歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| ・ 銀 歩 ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 金 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:歩二
【手数=54 △7五歩 まで】
ここから▲同 歩△3五歩▲4六角成△8二角▲6四歩△6一飛▲6七金右△6六歩▲同 金△6四角と進んだ。
後手の指し方がやや冴えないと感じたものだが、先手を持って勝利している羽生王位が後手をもっているところがおもしろい。
棋聖戦では羽生は▲同銀と指したが佐藤棋聖は手を変えて▲同歩。傷が残るので異筋に映るが佐藤らしい無骨な手とも言える。しかしやはりここは銀で取るのが形というものだったか、先手が形勢を損ねてしまった遠因に思えてならない。8五に飛んだ桂馬をフル活用できる展開になったのは後手にとって大きかった。
以下熱戦は続くものの結局116手で羽生が勝利。王位を防衛し、王位は通算11期となった。
なかなか見応えのある王位戦だった。棋聖ー王位ー王座の合計17セットのタイトル戦は棋聖と王位は互いのタイトルを防衛したことになる。現在進行形の王座戦は羽生が防衛にリーチしているが果たしてどうなるか。
#一言日記:22日に愛知万博に行った。当然宿など空いているはずもないのだが奇跡的に大府市の旅館が取れた。かなり行き当たりばったりの強行スケジュールだったが雰囲気だけは楽しめた。とりあえず冷凍マンモスだけは見ておきました。
[2005/09/25 01:30]
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