第1局
深浦康市八段は対羽生戦に互角に近い成績(13勝15敗)を収めている数少ない棋士の一人だ。その深浦が今期王位戦の挑戦者に名乗りを上げた。
深浦は11年振り(2度目)のタイトル戦登場だが、前回も王位戦、相手は当時七冠の羽生に破れている。
羽生王位にとっては嫌な相手かもしれない。しかし、数日前の竜王戦決勝トーナメントでも対戦しており、その時は羽生が勝っている。
さて羽生先手で始まった第1戦は矢倉となった。下図までは王将戦第5局(佐藤○vs●羽生)と同じ進行である。
王将戦はここから△7四銀▲7五歩と進んだ。どちらも個性を感じる手だが、本局はここから違う展開になる。
後手:深浦康市八段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
| ・ ・v銀v歩 ・v金v銀v歩 ・|三
| ・v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩|四
|v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 銀 歩 角 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩
【手数=47 ▲1八飛 まで】
ここから△4五歩▲5七角△9三桂▲3七桂△8五桂▲8六銀△6四歩と進んだ。
△4五歩で先の王将戦と違う将棋となった。△4五歩と角道をそらせて△9三桂。後手の方が一手早く攻撃体勢が取れる展開になった。後手としては満足のいく展開だ。
互いに端を絡めて攻め合いの中盤戦となった。互いに角を取り合って下図。△5六角の厳しい王手に対して▲6七歩としたところ。
後手:深浦康市八段
後手の持駒:銀 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂 ・|一
|v飛 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・ と ・ ・v金 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v歩 ・ 桂|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 桂 ・ 歩v歩|五
|v歩 歩 金 ・v角 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 ・ 金 歩v全 ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:角 銀 桂 香 歩三
【手数=101 ▲6七歩 まで】
ここから△9七歩成▲7五角△6四歩▲9七香△同飛成▲5七角△9八龍▲6九玉と進んだ。
あっさり端を破って後手好調に見えるが、▲7五角の攻防手で銀を抜かれて△9八龍に▲6九玉の綱渡りの防戦。指している人が羽生だけにどこかでマジックが炸裂するかと、疑心暗鬼になるところだ。
しかし深浦は、この後も先手の反撃を見切ってしっかり攻めて、緒戦を制した。
羽生相手に後手矢倉で完勝。本局は将来的にも深浦の名局になるに違いない一局となった。
#一言日記:今日7月15日は次男の誕生日なのだが、大型台風が来ており色々な判断が難しい一日となった。まず夕方に予約していたケーキを午前中に変更。また両親が遊びに来る予定だったが、見合わせにした。各地に大きな被害があったようだが、昼過ぎには台風一過となった。やや風が強いが台風をイメージできるのは、その強風だけ。台風独特のじめっとした感じがなく、やや異質な感じのする台風だった。
[2007/07/15 23:10]
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第2局
第2局は後手羽生王位が一手損角換りを選択。図は△4六歩と打った7三の角のラインでひと働きしようとしたところ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v角 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩v歩v歩 ・v銀v銀v歩 ・v歩|四
| ・v桂 歩v歩 ・ ・ 歩 ・ ・|五
| 歩 銀 ・ 歩 銀v歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 金 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:角 歩
【手数=52 △4六歩 まで】
ここから▲7四歩△6四角▲4八金△7七歩▲同桂△6六歩▲7三角と進んだ。
当然ながら金を逃げる前に▲7四歩を利かせる。この7四歩を土台に▲7三角と打ち込んで先手好調に見える。本譜は飛車取りの▲7三歩成が実現したが、後手としては、敢えて大駒を攻めさせて、その隙に7筋と6筋の歩を延ばして勝負!という展開にするしかなくなった。先手ペースであろう。
タイトル戦らしく、互いに強く応じて、先手も飛車を取ったものの、自陣を攻めさせる展開となった。
図は▲6四桂と打ったところ。依然先手好調。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 桂
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 と ・ 龍 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v玉v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ 桂v銀v銀v歩 ・v歩|四
| ・ 銀 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|五
| 歩 ・v歩v歩 銀v歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ 金 ・ 飛 ・|八
|v馬 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:香 歩四
【手数=79 ▲6四桂 まで】
ここから△6三角▲4五香△6七歩成▲同金△5一金▲4三歩△同金▲7一龍△7七歩成▲同金△8五角▲6三歩△同角と進んだ。
△6三角が羽生用意の一手と推定する。銀を取りながらの△8五角が攻めに転じることになると、後手もまんざらではない。すわ羽生マジックか?
しかし▲6三歩とされてみると▲5一龍があるので△同角とせざるを得ない。せっかく作った6筋7筋の歩を成り捨てるのも変調で、△6三角があまり利かなかったことが後手の誤算だったのではないだろうか。
この後も、馬を自陣に引きつけて、必死の防戦をする羽生だったが、深浦の攻めは淀みなかった。
深浦、快勝で2連勝。対羽生戦も互角に戻した。羽生マジックという言葉がある。これは相手が羽生に対し絶大な信頼を有しているとより発揮しやすい。深浦は羽生マジックに対し免疫のある数少ない棋士の一人かもしれない。
#一言日記:今週末は、毎年恒例の七夕祭り。これも恒例で家族でぶらりと回ってみた。暑かったがまた梅雨明けはしていないという。
[2007/07/28 22:40]
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第3局
深浦八段の2連勝という出だしになった今期王位戦。3連敗してしまうと、いかに羽生王位といえども防衛は難しいものになるだろう。先手番でもあり、羽生にとっては落とせない一戦である。
さてそんな第3局は▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀というクラッシックな矢倉戦のオープニングとなった。
図は9五の地点で一歩を入手し、さらに△4二銀右と固めて、先手の出方をうかがったところ。後手がうまく立ち回っている感じがして、この時点ではまさかの羽生3連敗を予想してしまった。
後手:深浦康市八段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩 ・v金 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩|四
|v香v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:なし
【手数=50 △4二銀 まで】
ここから▲2五歩△1三銀▲6五歩△4五歩▲同桂△4四歩▲3五歩と進んだ。
後手は9筋で入手した歩で桂を殺す順を選んだが、駒を呼び込むので怖い手段だ。実際▲3五歩とされると急所に手が付いた感じで、桂得位では割が合わないと思う。後手変調ではないだろうか。
少し進んで下図。角で取りになっている飛車を△9二飛とかわしたところ。手順に9筋に飛車を転回した感じがするが、先手の角の捌きが上回った。
後手:深浦康市八段
後手の持駒:桂
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v飛 ・ ・ ・ ・v銀v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v銀|三
| ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四
|v香v歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 角 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 飛 ・ ・ ・ ・ 香|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・v馬 ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩二
【手数=64 △9二飛 まで】
ここから▲5七角△4七馬▲6六角△1二玉▲1五歩と進んだ。
▲5七角〜▲6六角が絶品で先手優勢だろう。玉を端にかわして耐えるが▲1五歩が格言通りの手で急所だ。
本局は羽生の圧勝だった。
#一言日記:町内の盆踊りを覗きに行った。歩いて行ったのだが、下の子(3歳)が寝てしまい、帰りは肉の塊と化してしまって、大変な思いをした。
[2007/08/04 23:30]
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第4局
深浦八段強し。本局も緩みない差し回しで、終始局面をリードしていた印象を受ける。
角換り腰掛け銀の本局は、先手深浦が図からどんどん歩を突き捨てる定跡通りの仕掛けを敢行した。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v銀v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:角
【手数=38 △3三銀 まで】
仕掛けの手順は図から▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲7五歩△同歩▲3五歩△4四銀▲2四飛△2三歩▲2六飛△6三金▲7四歩△同金▲3四歩。
合計5筋で歩を突き捨てて(最後の▲3五歩は後手取れないが)、▲7四歩△同金と叩いて、最後に▲3四歩と取り込む。振り飛車党には信じられない乱暴な仕掛けだが有力だという。
少し進んで下図。後手羽生王位が、△1四角としたところ。1筋の突き捨てを逆用しており、飛車と金のラインなので、一見いい感じの角だ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v桂v歩 ・|三
| ・ ・v金v歩v銀v銀 ・ ・v角|四
| 歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・v歩|五
| ・ ・ ・ 歩 銀 ・ 飛 ・ ・|六
| 銀 歩 ・ ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:角 歩五
【手数=68 △1四角 まで】
ここから▲2五歩△同桂▲3三歩△同銀▲4七歩△3七桂成▲同飛△7六桂▲7七玉△2五角▲3四歩△4四銀▲3三角と進んだ。
△1四角だが、▲4七歩と受けられると二の矢がない。▲1五香があるので柔らかく△2五角としたが、▲3四歩が厳しかった。この歩は▲7一角があるので取れず、△4四銀とかわしたが、▲3三角と角をぶち込まれては受けが難しい。
この後、非常手段的な受けで耐えるが、深浦の寄せは正確だった。
△1四角が意外に働かなかったのが、羽生の誤算だったか。
ここまで羽生相手に互角以上に戦っている深浦がこのまま初タイトルという感じがする。将棋の内容も充実しているので、プレッシャーの掛かった時に、普段の力が出せるか。これだけが問題な気がする。
#一言日記:ようやく盆休み。特に予定はないが、とりあえず子供を連れて、毎年恒例の海に行こうと思う。
[2007/08/11 23:20]
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第5局
第5局は第1局に続き矢倉戦。クライマックスは仕掛けの数手後にあった。
図は▲3五角と先手が3筋の歩を交換したところ。この歩交換は、駒組の中の歩交換だ。
後手:深浦康市八段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v銀v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 歩 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王位
先手の持駒:歩
【手数=39 ▲3五同角 まで】
ここから△5五歩▲同歩△9六歩▲同歩△9七歩▲同玉!と進んだ。
一歩を入手したところで、後手が端から戦火を開いた。
△9七歩に▲同玉!が強い取り方だ。△8五桂は怖くないということだが、着想が羽生らしい手で、印象に残る一手となった。
実際歩切れで、ぎりぎりの攻めである。
これで羽生は角番を一回凌いだが、まだ深浦八段が有利なのには違いない。依然がけっぷちである。
#一言日記:夏休み最後の土日(正確には夏休みは終わっているのだが)ということで、家族で上野動物園に行ってきた。考えてみると子供を動物園に連れて行ったのは初めて。やはり家族サービスの基本はテーマパークではなく動物園なのだと再認識した。
[2007/09/02 23:50]
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第6局
依然角番の羽生王位は後手番の本局にゴキゲン中飛車で臨んだ。先手番の深浦八段としては、この一番で初タイトルと行きたいところ。こちらはあまり見たことのない構想で対抗した。
図は△2一飛と引いたところ。先手の布陣は左美濃+腰掛け銀だがここから工夫の駒組を披露した。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v飛v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v歩v桂v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 銀 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:角
【手数=28 △2一飛 まで】
ここから▲6五銀△5三銀▲7五歩△4二金▲6六歩△8四歩▲7七銀△8三銀▲7八金△7二金▲8六歩△2五桂と進んだ。
玉頭位取りにシフトするのが工夫の構想。第一印象はバランスの悪さを感じた。角が手持ちなので隙を作らずに組み上げるのは至難だからだ。
しかしタイトル戦で披露する構想なので、思いつきではないだろう。綿密な研究が下地にあると見るべきか。
対する後手は銀冠にシフトした後、狙い筋の一つである△2五桂を決行した。
少し進んで下図。先手は8筋で一歩を入手し歩で桂馬を取りに行った。
なるほど、この局面は確実に桂得してなお先手陣に隙がないように思える。先手もまずまずの成果をあげられそうだ。
懸念は押さえ込みに金が必要なこと。離れ駒の4七金が気になる。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・ ・|二
| ・v銀v歩v歩v銀 ・ ・ ・v歩|三
|v歩v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩v桂 ・|五
| 歩 ・ 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・|六
| ・ ・ 銀 ・ 歩 金 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:角
【手数=51 ▲2六歩 まで】
ここから△3七桂成▲同金△3六歩▲4七金△2五歩▲同歩△2七歩▲3八飛△2五飛▲3六飛△3五歩▲3七桂△3六歩▲2五桂△6九角と進んだ。
後手は桂損ながら飛車交換を実現し、さらに急所の△6九角。これが4七の金取りにもなっており、後手優勢が明白となった。
△3六歩に対する▲4七金は本譜の通り△2七歩の叩きがあるので、取るしかなかったと思う。この後は金をを見捨てて攻め合いを目指すが、押さえ込みの金が取られる展開は深浦の本意ではないはず。
ということで、位取りの構想は空振りだったと思う。
これで羽生は角番を2局凌いだ。こうなると最終局を制するのは指運というしかないのかもしれない。
#一言日記:そうですか。安倍さん辞任ですか。ここだけはあるまいと思うタイミングだったのがせめてもの意地? 最近の子供によく見られるリセット症候群と変わらないことを一国の総理大臣がやってしまうとは。それにしても政界の人材不足も深刻だな。
[2007/09/15 11:50]
【追記-訂正】
△6九角以降、本譜は▲3一飛△2八飛▲3四角△4七角成と、お荷物の4七の金を捨てる展開になった。確かにこれは後手優勢だが、△6九角に素直に▲5六金と金を逃げれば、むしろ先手有望とのこと。
[2007/09/24 01:00]
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第7局
ファイナルマッチは深浦八段の先手で始まった。
羽生王位は中飛車。5筋と3筋の位を取って、5四→3四に飛車を移動する、かつて森九段がよく指していた(と記憶している)手法を採用した。
先手も17手目に指した6八銀を修正し、穴熊に切り替えた。こちらの銀は6八→7九→8八と移動。
図は首尾よく穴熊に組み直した先手が3六から動いたところ。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v金 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・v飛 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| ・ 角 歩v角 歩 歩 銀 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|七
| 香 銀 ・ ・ 金 ・ 飛 ・ ・|八
| 玉 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:歩
【手数=45 ▲3五歩 まで】
ここから△4四飛▲4七銀△6五銀▲6七金△3七歩▲同桂△3六歩▲4五桂と進んだ。
△4四飛は封じ手だが、この狭いところに行くのはちょっと思いつかなかった。先手が3筋から動いたのは3四飛を咎めに行ったものだが、ここで△3二飛としてしまっては先手の注文通りだから、当然なのかもしれない。
大駒の交換になったが先手は手順に左桂の跳躍に成功している。こうなると穴熊ペースか。
少し進んで下図。▲4一角に△6二金打としたところ。穴熊ペースと思ったものの、実際に攻めきる手段が分からず、やっぱり振り飛車も隙がないじゃんと思い直していた。
△6二金打は▲6三角〜▲5三桂成を防いだ手だが...。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ 角 ・v桂v香|一
| ・v玉v銀v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v金 ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・v飛 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・v龍 ・ 桂 歩 歩 ・|五
| ・ 角 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ ・ 銀 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・vと ・ ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:銀 歩二
【手数=62 △6二金打 まで】
ここから▲6三角成△同金▲5三金△7一角▲4二銀△6二金引と進んだ。
それでも▲6三角成!
この強襲は本譜の△7一角があって攻めきれないと見ていたが、そこで▲4二銀!!
これぞ穴熊流の手。でもやっぱり無筋じゃないかな。
△6二金引は難しい手だが、羽生流に切らして勝ちに行った手ではないだろうか。
穴熊流の強襲はなおも続いた。しかしこの将棋の最も面白いのは白熱の終盤にある。
図は△6八銀としたところ。詰めろでようやく後手勝ちになったと思われたが...。
後手:羽生善治王位
後手の持駒:金 銀 桂 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v角 ・ ・ ・ ・ 龍 ・|一
| ・ ・v玉 ・ 金 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v桂 ・ ・v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・v龍 歩 ・ 歩 歩 ・|五
| ・ ・ ・v角 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・v桂 ・ 銀 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 香v銀 ・ ・vと ・ ・|八
| 玉 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市八段
先手の持駒:金 歩
【手数=104 △6八銀 まで】
▲7七桂△6九銀不成▲6二金打と進んで以下即詰み。
▲7七桂が詰めろ逃れの詰めろだった。△6九銀不成と行ったが▲6二金打から詰んでしまった。
△6九銀不成では△7六桂がまたしても詰めろ逃れの詰めろでこれなら後手が勝っていたようだ。難解なので、各種専門誌や竜王ブログで確認されたい。
劇的な逆転劇で遂に深浦が念願の初タイトルを手にした。
疑問手がゼロではないが、熱戦で名局だと思う。思い切りの良さが吉と出たと思う。羽生マジックに萎縮しなかったのが勝因ではないだろうか。
九州にタイトルを持ち帰るという念願を成就した深浦新王位の今後の活躍に期待します。
#一言日記:社団戦団体個人戦に行ってきた。レーティングの近いもの同士が同枠になるので、優勝するチャンスは十分あると思ったが、結果は2勝2敗という全うな成績だった。
[2007/10/01 00:40]
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