第2局1日目
第1局は8五飛車で後手羽生王将の先勝。8五飛車は難しくて良く分からないのでレポートのしようがなかった(先に香車を拾わせる感覚がついていけない)。第2局は四間飛車になった。
後手:谷川浩司九段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・ ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v銀 歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:歩
【手数=31 ▲2四歩 まで】
居飛車の作戦は5七銀左からの急戦になった。しかも▲6八金直と△6四歩の交換なしに早くも▲2四歩と仕掛け、のっぴきならない局面だ。ここで谷川九段が手を封じたが封じ手は△2四同歩でまちがいなさそう。
以下▲3八飛に対し(1)△3六歩▲同飛△4五歩▲3三角成△同飛▲5七銀(2)△4五歩▲3三角成△同飛▲8八角△4六歩▲3三角成△3七歩(3)△4三金が考えられる。
振り飛車党からみれば△6四角の筋があるここでの仕掛けはちょっとありがたい気がするのだが...。
[2001/01/18]
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第2局2日目
封じ手はやはり△2四同歩だった。以下▲3八飛△4五歩▲3三角成△同飛▲6六角△3五歩▲5七銀引△6四角▲2二歩と進んだ。
やはり△6四角の筋が出てきた。これで最低でも桂香の拾い合いにはなりそうなので振り飛車としては満足な展開ではないだろうか。
と思ったが青野照市九段著の名作「新鷺宮定跡」では居飛車良しとの見解だ。果たして本譜は新鷺宮の通りに進んで下図。
後手:谷川浩司九段
後手の持駒:桂 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ と 馬|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v飛 ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩 ・v銀v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 飛 ・ ・v杏v馬|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:香
【手数=50 △3六歩 まで】
ここで羽生王将は▲8六桂だったが新鷺宮では▲4四香とある。ちょっと露骨な手だがこれがなかなか嫌らしい。以下△5三飛▲6五桂△2三飛▲2二と△3三飛▲3一と△同飛▲2二馬△5一飛▲5三桂成△同金▲4二香成で飛車を召捕って先手良し。
確かにこうなると振り飛車大変で、途中振り飛車から変化する余地はなさそう。
本譜▲8六桂以降はやや振り飛車が指し易い将棋になり82手目光速の桂馬(△9七桂)も出て谷川九段が勝利した。羽生王将の局後のコメントに「▲8六桂では▲4四香から千日手狙いくらいしかなかった」とあるが、どうなったら千日手になるか私には理解出来なかった。
定跡形の本局だったが私に見解めいた事が言えるわけもなく、ここは恐るべし「新鷺宮定跡」!ということでお茶を濁しておこう。
[2001/01/20]
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第3局1日目
うれしいことにまた四間飛車になった。今度は後手番の羽生王将の四間飛車だ。谷川九段の居飛穴模様に流行の藤井システムで下図。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 金 銀 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:なし
【手数=24 △7三桂 まで】
ここから▲5五歩△5二飛▲5六銀△5四歩▲5八飛△5五歩▲同銀△6三銀▲8六角と進んで封じ手となった。
▲5五歩に△5二飛ははじめて見た。こうなると本譜のように先手も5八飛と対抗するのは自然で激しい局面になった。
封じ手は? 次に6四銀と出られるとさすがに後手悪そうなので△4二角と受けるのだろうか? 個人的には後手は持にたくない感じがする。
なお▲5五歩に対して△4五歩▲5六銀△4四銀と進んだの例は今期順位戦B1級の深浦−久保戦がある。こちらも参考に載せておく。
図以下、▲5五歩 △4五歩▲5六銀△4四銀▲8八玉△6三銀▲6八角△2二飛▲7八金△5二金左▲3六歩△5五銀▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲5五銀△同角▲4六歩
後手:久保利明六段
後手の持駒:銀 歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v飛 ・|二
| ・v歩v桂v銀v歩 ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v歩 ・|四
|v歩 ・ ・ ・v角v歩v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:深浦康市六段
先手の持駒:銀
【手数=43 ▲4六歩 まで】
5五の地点は数の上では後手が勝っているが2筋が留守になるのですぐには行けない。先手は玉を囲いつつ後手が△5五銀を決行した時にクロスカウンターを狙っていた。最後の▲4六歩が好手で居玉の後手はまとめ辛い将棋になった。結果は久保六段が逆転勝ちをおさめている(情報源:週間将棋2001/1/24号順位戦熱闘譜)。
どちらの将棋も居玉の後手に苦労が多そうな気がするのは弱気な振り飛車党の私だけ?
[2001/01/29]
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第3局2日目
封じ手は△4二角だった。以下▲5四歩△同銀左▲同銀△同銀▲8八玉△3二金▲7五歩△同歩▲同角△6三銀打▲8六角△4一玉▲7八飛△7四歩▲2八飛△5一金▲7八銀と進んだ。
先手は一歩損して銀交換をした後、一旦玉を左美濃に囲った。歩損をしたらパンチを打ち続けなければならないケースが多いが、この将棋は例外らしい。それにしても後手玉が左辺に移動したこの将棋、もはや出だしの四間飛車の片鱗は何処にも残っていない。
さらに少し進んで下図。△6六歩は厳しい突き出しだ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v飛 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v桂v銀 ・ ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v銀v歩v歩 飛 ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 玉 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:角 銀 歩二
【手数=60 △6六歩 まで】
以下▲同金△5七角▲2六飛△3五角成と進んだ。▲同金は強い手だが本譜の様に進むと後手が少し良さそうだが先手陣は堅陣なのでまだ難しいか?
なおも熱戦は続き最後は144手で後手羽生王将が勝利した。
これで羽生王将の2勝1敗。ここまで後手番が連勝しているのは8五飛車戦法と後手四間飛車が優秀な証拠?
[2001/01/30]
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第4局1日目
王将戦第4局、またしても後手四間飛車の将棋になった。後手谷川九段は藤井システムの構え。思えば羽生王将は竜王戦で本家藤井システムに対して居飛穴を決行出来なかった。本局は▲5七銀を保留して▲4八銀型のまま駒組を進めたのが工夫。
対する後手もわりとあっさりと居飛穴に組ませた。後手の狙いは他にあった。下図が封じ手の局面。
後手:谷川浩司九段
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛v金 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v桂v銀v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 金 銀 歩 歩 ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:なし
【手数=34 △4一玉 まで】
後手の作戦は陽動振り飛車ならぬ陽動居飛車(?)だった。類似形は何例かある。新人王戦の丸山忠久vs藤井猛戦や佐藤康光vs杉本昌隆戦(「振り飛車新世紀6」P152)だ。
ただし両局とも△6四歩〜▲5五角△6三銀手順で先手から△6三銀を誘っている関係で後手が手得している。本局は6筋に飛車をまわったが丸山忠久vs藤井猛戦は△9三香・9二飛形に組んでおり、また佐藤康光vs杉本昌隆戦は8筋に戻している。
本局は手得していない分だけ先の2局よりは損な感じがするが現時点での形勢は互角だろう。それにしてもこういう将棋は戦型の分類に苦労するな〜。
[2001/02/08]
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第4局2日目
封じ手は▲3六歩だった。堅陣の穴熊に囲えた先手だが、反面攻撃力が乏しい。攻撃の糸口を見つけるのが先手の課題になりそう。一方後手は藤井システムの出だしから陽動居飛車作戦。居飛穴には組ませたものの攻撃の布陣を組むことに成功した。後手番の作戦としては、成功と言ってよさそうだ。
下図でいよいよ後手の攻撃開始だ。
後手:谷川浩司九段
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v飛 ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ 角 ・ ・|七
| 香 銀 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王将
先手の持駒:歩
【手数=48 △6五歩 まで】
以下▲6五同歩△6六歩▲6八金引△6五桂▲4四歩△同角▲4五歩△3三角▲5五歩△6三銀と進んだ。
6六歩と先手陣に急所の楔が入った。普通はすごい楔だが穴熊なのでかすり傷程度かも。△6五桂は形だが、相手が居飛穴なだけに桂馬は8五に使いたい感じがする。6五の歩は飛車で回収した方が良かったかも知れない。△6五桂としたため本譜の展開になり△6三銀と飛車筋に後退を余儀無くされた。これは後手が相当損をしたと思う。
この後、両者の戦いに相応しく攻め合う展開となった。最後は後手が詰ましに行ったが馬の利きでわずかに詰まず先手羽生王将の勝ちとなった。これで羽生王将の3勝1敗、谷川踏ん張ることが出来るか?
#穴熊の懐の深さは侮れない。この辺りの距離感を間違えて何度痛い目にあったことか...。
#125手目の▲6四銀の意味が良く分からない。誰か教えて下さい。
[2001/02/10]
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第5局1日目
6連覇まであと1勝となった羽生は後手番で四間飛車を採用した。対する先手谷川は左美濃。一時は一世を風靡した対振り飛車の左美濃だが、△7一玉型で玉頭戦を切り札にする戦い方が構築され、下火になった。このあたりの指し方は「藤井システム」が最も詳しい。
さて本局は先手が4六銀と急戦を臭わせつつ9八玉と米長玉にするという工夫を見せた。後手は△4五歩と反発し▲5七銀△7三桂となった下図が封じ手。なお後手の3二銀は4六銀に対して引いたものだ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金v飛v銀 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 玉 角 銀 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:なし
【手数=34 △7三桂 まで】
手の流れから封じ手は▲6六歩として持久戦にするのが有力と思う。△4五歩が今後どちらに有利に働くかが焦点となりそうだ。
[2001/02/20 1:00]
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第5局2日目
封じ手は▲3三角成だった。これは少し意外。なぜなら角交換するとお互い手を作り難くなるからだ。千日手が懸念されるので先手番としてはつまらないだろう。故に8八角のままで駒組みを進めると思ったのだが、4筋を守るため5七の銀の動きに制約がありこれも先手作戦負けになりそうだ。
してみると序盤は振り飛車作戦勝ちかもしれない。
案の定千日手かと思われる局面になったが、果敢に谷川が打開した。図は3筋2筋を突き捨てて▲2三角としたところ。
後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v金 ・ ・v銀 角 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|五
| 歩 歩 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 銀 桂 金 銀 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:谷川浩司九段
先手の持駒:なし
【手数=57 ▲2三角打 まで】
以下、△3六角▲1五歩△同 歩▲同 香△同 香▲3四歩△4四銀▲2四飛△2二香▲4一角成△同 飛▲2二飛成
なんと角損して飛車を成るという荒技にでた。う〜ん。これはさすがに無理だと思うのは私だけではあるまい。
結果は104手で羽生の勝ち。王将戦6連覇を達成した。
__________
仕掛ける直前の後手陣の6一の金は7二金→6二金→6一金としたもの。そう、後手は完全に千日手狙いだ。離れ駒が嫌うなら6一金とする前に7二銀を入れると思うのだが、本譜の順は仕掛けを誘う意味もあったのだろう。谷川も千日手では先手の得が消えるので仕掛けを敢行したわけだ。しかし如何せん無理攻めだった。
後手は千日手狙い。先手の最善手は千日手の甘受だったと思う。しかし打開して自爆...。率直に言ってこの将棋は駒を並べてあまり面白さを感じなかった。遠因は早めの△4五歩だったと思う。△4五歩の時点で羽生に「角交換を避ければ作戦勝ち、本譜のように角交換なら千日手含み」という意図があったとしたら少し残念に思う。
今回はちょっと過激なことを書いてしまったが四間飛車党の私にしてみれば△4五歩以外に最善手があったと思えてならないのだ。
[2001/02/21 22:30]
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