第48期王座戦レポート

第1局

日経を買って王座戦の棋譜を見た。王座戦の見どころはなんといっても羽生五冠の藤井システムに対する作戦だ。はたしてどのような戦法を採用するのか?
第一局は最近にわかに流行の兆しを見せている「三浦囲い」だった。玉を8九に囲うこの戦法、当然ながら桂を7七に跳ねねばならないので駒組にかなりの制約があり相当の工夫を要する。囲いの理想は8八銀、7八金、7九銀、6七金(7九銀6七金は逆の方がさらに良い)の形だが手数がかかるのが難点だ。プロでは藤井システムに対抗する手段として注目されているようだ。
本局は▲2六角〜▲3七桂と駒を運んだが、振り飛車に不満はない進行だろう。羽生五冠は銀損で飛車を成り込んだが、さすがに無理っぽい手だ。80手で藤井竜王の完勝に終わった。

後手:藤井猛竜王
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 桂 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 玉 銀 ・ 角 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:なし
【手数=33 ▲7八金 まで】

さて本局は良いところなく負けた羽生五冠だが以降の作戦に注目だ。次の対策案を見せてくれるのか、はたまた自ら飛車を振るか、それとも相振りか?
なおこの戦法は
だにいの将棋ホームページ
9x9=81
に詳しい。
[2000/08/30 旧日記&備忘録より]
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第2局

注目の王座戦第2局。期待していた通り藤井システムの将棋で下図のような展開になった。ここまでは今期順位戦の対高橋道雄九段戦で藤井竜王は経験済みだ。果して羽生の対策は...。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v金v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 銀 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:なし
【手数=29 ▲4七銀 まで】

高橋戦ではここから△4五歩▲6六銀△4六銀▲同銀△4二角▲7五銀と進んだ。△4五歩と居飛車から仕掛ける手は過激な手順だが居飛車としてはやってみたい手ではある。高橋戦に限ってはガジガジ攻めて藤井竜王が貫禄勝ちしていた。
羽生はここから△7四歩(下図)。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v金v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 銀 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:なし
【手数=30 △7四歩 まで】

なるほど、ちょっとの工夫で将棋は全く違った展開になるものだ。
本譜は▲2五桂△5一角▲1四歩△同歩▲4五歩△8六歩▲同歩△7三桂▲5六銀右とすすんだ。
藤井が端を突き捨ててから▲4五歩と仕掛けたのに対し、羽生も負けじと△8六歩▲同歩△7三桂として両者一歩も引かない。△6五桂を受けて▲5六銀右だが一瞬新聞紙の誤植かと思った。普通は▲5六銀左のような気がするのだが...。
本譜は6七の銀が飛車道の影になっているのが少なからず響いたのか後手の勝ちとなった。
これで王座戦も1勝1敗。本局の△7四歩は▲7五銀の進出を未然に防いでいるのでこの形に対しては相当有力な気がする。今度は竜王の対策に注目だ。
[2000/09/09 旧日記&備忘録より]
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第3局

王位戦は羽生が8連覇を達成した。8連覇ということは羽生五冠は8年前も王位だった訳で、そんな当たり前の事実に今さらながらビックリ。
王座戦第3局は中国広州での海外対局。中国の方も千日手にはビックリしたに違いない。週将を買ったので早速棋譜を並べてみた。第2局に続いて藤井システムの▲4七銀型だ。第2局同様▲4七銀に△7四歩となって下図。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v金v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 銀 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:なし
【手数=30 △7四歩 まで】

ここから▲2五桂△5一角(ここまでは第2局と同じ)▲4五歩△7三角▲4四歩△同銀▲4五歩△3三銀▲同桂成△同桂▲4四歩で下図。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:桂 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀 ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v角v歩 ・v金v桂v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩 歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 銀 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛竜王
先手の持駒:銀 
【手数=41 ▲4四歩 まで】

なんとここまでは今期順位戦の対中原戦(中原勝ち)と同じで、ここで中原永世十段は△5三金だったが羽生は△4二金と変化した。
この局面藤井竜王は自信があるのだろうか。負けた順を敢えて採用した訳だから△5三金に対してはなんらかの改善策が用意されていたと考えるのが妥当だろう。
また本譜△4二金に対しても研究は万全だたっと推定される。どのあたりまでシステムの研究範囲だったのか興味あるところだ。
この後先手は6筋に龍を後手は香得しながら馬を作ったが形勢不明としか言い様がない。羽生にもチャンスはあった様だが、藤井のガジガジ攻めが押し切った。
さて第4局ではどんな藤井システム対策をにしてくれるのだろうか。
[2000/09/26 旧日記&備忘録より]
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第4局

王座戦も勝負は最終局に持ち越した。棋聖戦王位戦もフルセットにもつれこんでいるので最近の羽生五冠はかなり対局過多だ。それでもフルセットの末僅差でものにしているのは流石というほかない。
さてその第4局だが先手の羽生が4五歩早仕掛けから新しい試みをしていた。
後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v金 ・v銀 ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩v角 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:なし
【手数=32 △2四同角 まで】

ここから▲4四歩△同銀▲2四飛△同歩▲4三歩△同飛▲3二角△4二飛▲2一角成△4一飛打▲3三桂△5一飛▲9五歩
で下図。△4一飛打で居飛車に継続手がないというのが従来の定跡だったが、以前郷田八段が指した手を羽生も指した。
後手:藤井猛竜王
後手の持駒:歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v飛 ・ ・ 馬v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v金 ・ ・ 桂 ・v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・|四
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:なし
【手数=45 ▲9五歩 まで】

▲9五歩!が狙いの一手。
以下、△同歩▲同香△同香▲4三歩△5二飛寄▲4四角
と難解な中盤戦になった。一歩を持って▲4三歩が先手の狙いだが先に香を捨てているので成立するか否かの判断は難しい。
いつだったかの将棋世界の鈴木大介六段が振り飛車日記で紹介していて六段は▲9五歩に手抜きで△5五歩として悪くしたと書いてあった気がする。図では△9五同歩が良かったというニュアンスの文面と思ったが、手許にないので定かではない。
面白い手なので記憶には留まっていたのだがタイトル戦でお目にかかれるとは思っていなかった。流行するかも?
[2000/10/07 旧日記&備忘録より]
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第5局

王座戦は羽生が防衛し五冠を死守した。竜王戦挑戦権も手中にしており再度の夢の七冠制覇に向かってばく進中だ。第5局は藤井の四間飛車に対し羽生の作戦は5七銀右(実際は羽生が後手なので5三銀右だが)だった。王座戦/竜王戦は藤井システムに対する羽生五冠の作戦が注目されているが、王座戦は第4局以降羽生は居飛穴を捨てて急戦指向の将棋を2局続けたことになる。
現時点では藤井システムに対しては居飛穴含みに指すのは得策ではないと判断しているのか、はたまたとっておきの秘策は竜王戦に温存しているのか。
[2000/10/14 旧日記&備忘録より]
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