第50期王座戦レポート

挑戦者決定戦

王座戦もついに主催紙日経新聞が将棋サイト、その名も「NIKKEI NET 将棋王国」を設けた。ここで藤井九段vs佐藤二冠による挑戦者決定戦を中継していたので、サイト開設記念(?)ということでレポートします。

藤井が勝てば48期以来2度目の挑戦、佐藤が勝てば3つめのタイトルに挑戦ということになる。将棋は先手藤井のもちろん藤井システムに対して、後手佐藤は居飛穴模様の駒組という展開になった。下図で先手が猛然と仕掛けた。

後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金 ・v玉|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v金 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 ・ 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:藤井猛九段
先手の持駒:なし
【手数=34 △4五歩 まで】

図から▲1四歩△同歩▲同香△1三歩▲同香成△同桂▲1四歩△4六歩▲1三歩成△2一玉▲1一角成と進んだ。
銀を見捨てて端を破り、挙句に角をたぎってしまった。藤井システムらしい何とも壮絶な仕掛けだが、成立しているか否かはギリギリ。
72手目△2一香としたところでは先手の攻めが明らかに切れてしまったようで、102手で後手佐藤二冠が勝って、またしても羽生vs佐藤のタイトル戦が実現した。

#一言日記:「NIKKEI NET 将棋王国」の登場で7タイトル戦全てをWEBで速報されることになった。名前はダメダメだけど、コラムとして昔の記事が掲載されていて、なかなか読みごたえがあります。
[2002/08/09 0:00]

第1局

棋王戦、王将戦に続いてこのカードになった。最近、多彩な戦法を使うようになった(青野九段との順位戦ではなんと三間飛車だった)佐藤康光二冠は王将戦ではどんな戦法を採用するのか注目だ。
本局は矢倉になった。ひと頃のプロの将棋といえばこればっかりだったが、最近見かけなくなったのでかえって新鮮に感じる。
図は後手が△3七銀打とかぶせたところ。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・v角v歩v銀v金 ・v歩 歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 桂v歩|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 ・|六
|v歩 歩 銀 金 ・ 歩v銀 ・ 香|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ 飛 ・ ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光二冠
先手の持駒:銀 香 
【手数=70 △3七銀打 まで】

ここから、▲1八飛△2八銀成▲1二歩成△同 香▲1五香△1八成銀▲1二香成△同 玉▲3三歩△2二玉▲3二歩成△同 玉と進んだ。
▲1八飛は△2八銀成で飛車が死んでしまうので普通は考えられない手だが(だって飛車損だゼ)、その瞬間に端で手を作って▲3三歩の叩きで寄せてしまおうという矢倉独特の指し方と言える。
本譜もそのように進んだが、▲3三歩に対する△2二玉が受けの好手で、先手の攻めは切れてしまったようだ。結果論だが、佐藤二冠の強い意志を感じた▲1八飛だったが疑問手だったようだ。

106手で羽生王座が先勝。後手番での矢倉戦を制したのは大きい気がする。

#一言日記:日朝首脳会談は歴史的な出来事と思うが、全てを認めてしまった金正日氏の次の一手は?
[2002/09/19 0:40]
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第2局

第2局は横歩取り中座飛車になった。序盤、飛車で取れば▲4六角の飛香取りを見た▲3五歩を堂々△3五同飛とった。香車を取らせるだけに妥協を許さない強い手だ。しかし現実の駒得は大きい気がするのは筆者が横歩取り音痴だから?
図で本局随一の妙手が出た。

後手:佐藤康光二冠
後手の持駒:香 歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 馬 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v飛 ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 香 飛 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 玉 ・ ・ 銀 ・v馬|八
| 香 桂 銀 ・ ・ 金 ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:桂 歩 
【手数=52 △1八馬 まで】

△1八馬の飛車取りに対し先手は▲2七桂
▲3五飛〜9五飛では緩いと見たか羽生は▲2七桂。歩で済むところにちょっと利きの分からない桂馬を打ったわけだが、終盤見事に3五桂〜3三桂成と捌き、後手玉を寄せる主役の駒に昇華させた。

73手で羽生が連勝。第3局は上海で行なわれる。

#一言日記:戦後最大級と言われる台風21号上陸。東京ドームの巨人戦(終わってみれば長嶋が監督ではない巨人は強かった)が中止になったこんな日にうちの職場は飲み会を強行した。
[2002/10/02 0:10]
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第3局

本局は久しぶりの海外対局となった。対局会場が上海なのにリアルタイムで情報をゲットできるのはインターネット時代の賜物だ。
本局も横歩取り8五飛となった。形勢はさっぱり分からないが、「中継」の感じでは中盤までは先手の佐藤二冠持ちの声が多かった。
しかし、52手目の2四歩の叩きを△2四同銀と取った手の評判がよく、さらに直後の▲2三角が疑問だったらしく、この辺りから後手に形勢が傾いたようだ。
図は終局直前の局面。ここからの収束は見事だった。

後手:羽生善治王座
後手の持駒:角 銀 桂二 歩五 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ 馬 銀 ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v玉 ・v歩 ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩v歩v桂 ・ 玉 ・ ・|四
| ・v龍 ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩v圭 ・ 金 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ 銀 ・ ・ ・v龍 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:金二 歩三 
【手数=97 ▲3四玉 まで】

ここから△2五角▲同 玉△4四銀まで、100手で羽生の勝ち。
一見、先手玉も広くて簡単には捕まらない感じがするが、△2五角と捨てて△4四銀の空き王手で解決。いとも簡単に寄せてしまった。
これで羽生は好調佐藤二冠の挑戦を退け、王座戦11連覇を達成した。

#一言日記:愛機PowerBookのACアダプタの線がショートが原因で断線してしまった。泣く泣く新たにACアダプタを購入したが、それが届くのは週末とのこと。今のバッテリーがあがったらPowerBookに火が入らなくなってしまう。バッテリー残量はおおよそ2時間。持つか?
[2002/10/10 0:40]
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