第1局
棋聖戦、王位戦に引き続き王座戦も羽生vs佐藤となり、都合17番勝負ということに相成った。
羽生王座にとっては前人未到の14連覇がかかっている。
注目の第一局は佐藤棋聖の先手で始まったが、後手に選択権のある千日手模様になった。先手の持ち時間が切迫していたということもあり、結局後手羽生は千日手を選択した。
指し直し局は後手一手損角換りに先手は棒銀。図は▲3七銀と2六の銀を立て直したところ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三
|v歩v歩 ・v歩v銀v歩v銀 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 銀 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:角 歩
【手数=31 ▲3七銀 まで】
ここから△3三金▲9六歩△3二玉と進んだ。
△3三金〜3二玉が佐藤棋聖らしい、形にこだわらない差し回し。
以降じっくりした持久戦になった。互いに角打ちの隙をつくらないように駒組を進める必要があり、またしても膠着状態になる恐れが出てきたが、無用だった。
図は隙ありとばかりに▲4一角としたところ。△7二飛としても▲5五歩がある。果たして誘いの隙か否か。
ここでWeb中継では△7三桂と▲7四角成を許して攻勢に出る手が検討されていたようだが、佐藤の選択は違った。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ 角 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v金v歩 ・|三
|v歩v歩v歩v歩v銀 ・v銀 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 金 ・ 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩
【手数=57 ▲4一角 まで】
△7五歩▲7四角成△7六歩▲同 銀△6五歩▲7五馬△6六歩▲同 馬△7二飛▲7四歩△4四角▲同 馬と進んだ。
無条件で馬を作られてしまったようだが、巧みな手順で△4四角まで進んでみると▲同馬とするしかなく、後手は馬を消すことに成功した。
少しだけ進んで下図。▲7七角に△3三金としたところ。
角には角で△3三角が無難だが、それでは攻め味が半減すると見たか。図では△7五歩〜3九角の狙いがある。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:角 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・|三
|v歩v歩 歩 ・v銀v金v銀v歩v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 銀 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 角 金 ・ 銀 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩二
【手数=74 △3三金 まで】
ここから▲6八飛△6二飛▲6六角△4三金引▲7七金寄△6五歩▲8四角と進んだ。
▲6八飛が後手の狙いを外しつつ、飛車の活用を見込んだ好手だった。また△6二飛に対する▲6六角も7七に打った角の時間差的活用で、曲線的な羽生らしい差し回しだ。
▲7七金寄に△6五歩は気の利かない手で▲8四角と飛車取りに出られては一気に先手優勢になってしまった。
劣勢になってからも佐藤棋聖は懸命に粘って、日付の変わった翌2日、0時22分、156手でようやく駒を投じた。
局後の談話によると、羽生王座は「序盤早い段階で、仕掛ける順があったような気もしますが、収まってしまい、でかしてない気がしていました」と語っており1番目の図の▲3七銀では▲1五歩と攻めるべきだったと示唆していると思われる。
また佐藤棋聖は「▲4一角(57手目)をうっかりしていました。(83手目▲7三歩成と)と金を作られてからはおかしかったです」と述べているので、2番目の図での△7五歩はひねり出した手ということらしい。
両雄は休むことなく、5日からは王位戦第5局だ。
#一言日記:いよいよ中日が首位阪神を射程距離に捉えた。しかし阪神もなかなか負けないなぁ。そんでもって巨人の星野SDに監督要請依頼っていったい...。
[2005/09/04 00:15]
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第2局
近年の佐藤棋聖は力戦形を好む傾向にあるが、本局は極めつけの力戦形が出た。
下図は序盤中の序盤。後手佐藤棋聖がここから見たこともない構想で応えた。本局のハイライトといっても良い。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:なし
【手数=7 ▲2五歩 まで】
ここから△4二銀!▲2四歩△同 歩▲同 飛△4三銀!▲2八飛△3五歩▲4八銀△4二飛▲6九玉△3四銀▲6八銀△6二玉▲5六歩△4三飛!!と進んだ。
飛車先の歩を受けずに△4二銀は雁木等で稀に見られるが、現代将棋では損とされる類いの手だ。
飛車先を受けずに四間に振って△4三飛としたところでようやく後手の作戦が見えてきた。以下△2五歩から2筋の逆襲に成功して、形勢はともかく後手の言い分は十分に通った。
先手はこのような金銀分裂型の振り飛車相手では常套手段である位取りを目指した。対して後手は金銀を玉側に近づけつつ戦機を伺う将棋となった。
このような将棋は振り飛車が相当うまくやったようでも、居飛車の布陣が厚く逆転負けしてしまう、というのは筆者位のレベルの話、のはずだったが...。
図は▲5四飛の7四の銀取りに△6三銀引としたところ。
後手:佐藤康光棋聖
後手の持駒:歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩v歩v桂v銀 ・ ・ ・v飛v歩|三
| ・ ・ ・ 飛 ・v金 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・|五
| ・ 歩 銀 銀 ・v歩 ・ ・ ・|六
| 歩 ・ 角 歩 ・ ・ 歩 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治王座
先手の持駒:歩二
【手数=66 △6三銀引 まで】
ここから▲7五銀右△7四歩▲4四飛△7五歩▲7四歩△同 銀▲同 飛△7七角成▲同 桂△7六歩▲同 飛△3二角と進んだ。
なんだかよく分からない応酬が続いたが△3二角が後手としては決め手となるはずの手。
実際飛車を逃げても△7六歩が厳しく、細い攻めながら後手の攻めは続きそうだ。
しかしこの後疑問手が出て先手羽生王座の逆転勝ちとなった。
遊んでいる2三の飛車を援軍に活かそうとした辺りからおかしくなった気がするが、やはり金銀が分裂した振り飛車は勝ちきるのが大変、という印象が残る一局となった。
王座戦に関しては2連敗と苦しい出だしとなった佐藤棋聖だが、力戦の雄と呼ぶに相応しい戦いぶりだった。
#一言日記:今週はまるまる会社を休むのだ〜。勤続15年ということでリフレッシュ年休に突入したのだが、そんなに会社にいたことになるのかと改めて思う。
[2005/09/20 00:50]
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第3局
炎の19番勝負などと言われた佐藤vs羽生の棋聖/王位/王座戦。棋聖/王位は互いに自分のタイトルを防衛、王座戦も第2局まで羽生王座2連勝、防衛まであと1勝となっており大詰めとなっている。
角番の佐藤棋聖は矢倉模様からまたも積極的な作戦を展開した。
図は序盤の駒組。先手は矢倉模様から5筋の位を取って2枚の銀を繰り出し、さらに四間に飛車を振った。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛v金v角v金 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v銀v歩 ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 ・ 飛 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:歩
【手数=33 ▲3六歩 まで】
図の▲3六歩は玉頭位取りを嫌ったもの。この後先手は玉を右に囲った。
先手の布陣は固くはならないが後手も5筋を制圧されているの局面の均衡は取れている。ただ現代将棋の常識としては玉の薄い佐藤の指し方は好まれないようだ。
少し進んで下図。誘いの隙に後手が乗った形で戦火が開かれた。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:銀 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v飛 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・|六
| 角 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ 玉 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:銀
【手数=56 △6五同歩 まで】
ここから▲4二角成△同金引▲7二角△6四飛▲8一角成△6六歩▲8二馬△6五飛▲7七桂△2五飛▲1六銀と進んだ。
先手は桂香を拾えるものの△6六歩が早く後手有望かと思われたが、香を取らずに飛車に当てる▲8二馬が好手。また▲1六銀は端歩の交換がなかったから出現した手だ。僅差で先手ペースになったか。
ただ後手は矢倉の堅陣なので、攻めが続けば良い。いずれにせよ、後手が攻めきれるかどうかの戦いになった。
少し進んで下図。後手は飛車を成り込んだものの生け捕りに。ただしこれは当然読みの範疇で後手が踏み込んだ結果だ。
後手:羽生善治王座
後手の持駒:角 桂 香 歩四
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ 龍 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ 馬 ・ ・ ・v金v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ 銀|六
| ・ 歩 桂 ・ ・ 玉 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 金 ・v龍|九
+---------------------------+
先手:佐藤康光棋聖
先手の持駒:桂 歩
【手数=79 ▲2八銀 まで】
ここから△4五歩▲同 銀△3九龍▲同 金△4三香▲4四歩△同 香▲同 銀△同 銀▲8一飛△4一歩▲4八香と進んだ。
△4五歩▲同銀を利かして△3九龍と切った。4筋の歩を切ることで2枚飛車に対する底歩を用意している。実際本譜も▲8一飛に△4一歩が実現している。素人でも思うが▲8一飛は▲4三歩を利かしてからの方が良いと思うのだが、歩切れになるし、なにより佐藤棋聖は▲4八香で指し易いと感じていたと思われる。
実際▲4八香が受けの好手でまだ先手が良いと思うが、結果は138手で羽生の勝ち。
春から続いた炎の19番勝負はなかなか面白い将棋が多かったが遂に幕となった。羽生は王座戦14連覇。前人未到の記録を打ち立てた。
#一言日記:今年の阪神は強かった。
[2005/10/03 00:40]
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