第16期竜王戦レポート

第1局1日目

今年の竜王戦挑戦者決定戦ではベスト4に佐藤九段、中原永世十段、森内九段、谷川王位が残り、誰が出てきても面白いと思っていたが決勝で中原永世十段を退けて森内九段が挑戦者となった。
中原永世十段の健闘は特筆すべき(失礼か?)で羽生vs中原戦を待望するオールドファンも多かったのでは、と思われる。
羽生vs森内戦も間違いなく現時点での最強カードの一つで、見ごたえのある勝負が期待できそうだ。
さて第1局、後手の森内が四間飛車を採用した。やや意外な感じがするが、四間飛車党の筆者としては大歓迎だ。
先手は早仕掛け。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・v角 ・v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:なし
【手数=38 △4五同銀 まで】

ここから▲3三角成△同 桂▲8八角△4三飛▲2四飛△4七歩と進んだ。
図では単に▲4五同桂と取る手と、本譜のように角交換から角を打つ手がある。
△4三飛は△5五歩▲同角を入れてからの方が一般的で、▲2四飛では▲4五桂もありそう。また△4七歩もここで入れるかどうかは微妙なところ。
一見ありがちな早仕掛けの将棋だが、この局面を取ってみただけでも様々な変化があり奥の深い戦型だ。

下図で後手が手を封じた。1日目の展開としては割と早く進んでいる。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:角二 歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ 龍|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金v飛 ・v桂 ・v歩|三
|v歩 ・v歩v歩 ・ 歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀v歩 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 銀 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:銀 香 歩 
【手数=55 ▲1一龍 まで】

図はありそうでなさそうな(実はあると思われるが、筆者は知らないし知る術もない)局面だ。早い進行からも予想できるが両者とも頭でシミュレーション済みの局面と思われる。
▲5四香が厳しいので後手が忙しい気もするが、森内九段はどんな手を用意しているのだろうか。

#一言日記:阪神連敗。今日の雨は恵みの雨になった?
[2003/10/22 00:30]

第1局2日目

封じ手は△5六歩だった。
実は封じ手が良く分からなかった。普通に考えれば△3六歩位なのだが、▲5四香が厳しい。△6二金引もありそうだが先手が6八金直型なので7筋に飛車を回る筋も効果が薄そうだし、なにより自分の不利を認める感じがして気に入らない。
本譜△5六歩も銀を躱されて損得が分からない。既に振り飛車がやり損ねているのではという思いを払拭出来なかった。

封じ手の△5六歩に対し、先手は▲6六銀。当然▲4六銀と躱すと思ったが逆方向だった。こちらは後手に手段を与えてしまうだけ損だと即断してしまうところだが。
少し進んで下図。▲6六銀と躱したのは本譜の進行を想定していたからと思われ、指されてみるとなるほどやはり先手ペースに思える。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:角二 歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・ 龍|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・v桂 ・v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ 銀v飛 ・v歩 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 香v歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・v歩 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 銀 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:銀 歩二 
【手数=61 ▲6六香打 まで】

ここから△4六角▲5六銀△同 飛▲6三香成△4八歩成▲5七歩△5八と▲同 銀△5九銀と進んだ。
△4六角は攻防の好手。▲5六銀と銀を捨て△同飛に▲6三香成として美濃囲いは壊滅したが、△4八歩成と成り捨てるのが鋭い返し業だった。ここで4八のと金を払うのは危険なので▲5七歩とした金を剥がして△5九銀と絡めて先手陣も嫌な形になった。
こう進むと△4六角が攻めの好打だったことが分かるが、むしろ受けにとても有効な手だった。

下図は既に先手が寄せに入っていうので終盤と言っても良いと思うが、△4六角の角は馬になって尚ナナメのラインに強力に利いていることが分かる。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:金二 桂 香 歩三 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 龍|一
| ・ ・v銀 ・v金 ・ ・ ・ ・|二
|v玉v歩 ・ ・ ・ ・v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・v馬 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 銀 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・v角 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:飛 歩四 
【手数=88 △9五同歩 まで】

ここから▲4一龍△4二金打と進んだ。
▲4一龍と金に当てるが△4二金打が手厚い手で、いつの間にか振り飛車ペースの将棋になっていたようだ。

130手で森内九段の勝ち。名人戦で屈辱の4連敗を喫した男が竜王戦でまずは1勝した。

それにしてもなかなか手が読めない将棋だった。定跡形もちょっと形から外れるとたちまち分からなくなる。まあ定跡なんてそんなものだが。
それにしてもいつ形勢が逆転したのだろうか。封じ手は既に先手優勢と思うけどなぁ。
それにしても森内将棋は奥が深い。6三の金をボロッと取られても局面の均衡は保たれているという大局観には脱帽だ。

#一言日記:甲子園で阪神がようやく1勝。阪神らしい勝ち方だったのでこれではずみがつくかも(希望的観測)。話は変わって25日はpanther(Mac OS X v10.3)の発売日。とりあえず静観。
[2003/10/23 00:50]
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第2局1日目

第2局は横歩取り。といっても後手羽生竜王は、例の8五飛ではなく▲8七歩に一旦△8四飛と引いた。
図は封じ手の局面。飛車が8五にいるのは、数手前に8四の飛車を一つ浮いたから。

後手:羽生善治竜王
後手の持駒:歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・|四
| ・v飛 ・ ・v歩 ・ 歩 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 飛 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 角 金 銀 玉 銀 金 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:歩二 
【手数=39 ▲4六歩 まで】

一時は後手番ながら高勝率を維持していた横歩取り(中座飛車)だが先手の対策が進歩したためか、勝率は落ちてきている模様。しかし、今尚最有力戦法の一つであることは変わりなさそうだ。
後手の強襲を先手が受ける展開になると思うが、森内将棋の懐の深さをもう一度見ることが出来るか、あるいは羽生竜王のマジックが見れるか。面白い2日目になりそうだ。

#一言日記:「小久保の巨人移籍」っていったいどーなってるの? おっとここは竜王戦のページだったので、発言は慎まねば。
[2003/11/04 23:50]

第2局2日目

封じ手は△5六歩。ここは選択肢の広い局面だが、羽生竜王の選んだ手はいきなり殴りつける激しい手だった。
もう少し手を進めてみる。以下▲4四角△同 歩▲5六歩△8六歩▲7七桂△8四飛と進んだ。
4四角と先手の方から角を換えるのは後手玉が弱体化するのでこう指したいところだろう。
△8六歩に▲7七桂が利いた。普通は▲7七桂には△8七歩▲8五桂△7八とと一直線に攻め合った時に要の金を取られるからダメとしたものだが、本局は先手に分がある。
△8四飛は予定変更と思われ、この辺りから先手持ちの声が出てきた様だ。

少し進んで下図。先手は着々と駒組を進めているのに対し、既に中原囲いが完成している後手はほとんど陣形が変わっていない。この辺り何か後手に誤算があったと思われる。

後手:羽生善治竜王
後手の持駒:歩二 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・ ・ ・ ・v歩|三
| ・ ・v飛 ・ ・v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩v歩 ・|五
| ・ ・v角 角 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 歩 銀 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:歩四 
【手数=63 ▲6六角 まで】

ここから△5三銀▲2三歩△同 銀▲2二歩△同 金▲4四歩と進んだ。
△5三銀は4四の地点を受けるためとはいえ本意とは思えない。先手は好調な手が続いている。

下図は終盤。見事な収束。

後手:羽生善治竜王
後手の持駒:角 金 桂 歩四 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・ 銀v金v銀v歩|三
|v角 ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・ 歩 ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩|六
| 歩 歩 金 歩 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 玉 ・v圭 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:飛 歩四 
【手数=96 △2二玉 まで】

ここから▲3二飛△同 金▲同銀成△同 玉▲2三飛成△同 玉▲2四歩まで103手で先手森内九段の勝ち。
3二に飛車を打ち込んで、▲2三飛成で解決、即詰みだ。プロだから当然数手前から読み切りだろうが(ソフトなら一瞬で解くという事実はとりあえず棚に上げておくとして)、鮮やかな手順だったので載せてみた。

これで森内九段の2連勝となった。名人戦で4タテを喰った後遺症はないと見てよさそうだ。

#一言日記:長嶋ジャパン、緒戦は無難に中国に勝った。日本には長嶋崇拝者が多い様だが、どう考えても監督の器ではないと思う。まあプレーするのは選手だから大勢に影響はないとは思うが。
[2003/11/06 00:30]
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第3局1日目

第3局は矢倉。後手番の森内九段が受け手たった訳だが、心の余裕か?
本局は先期の第15期竜王戦第4局 阿部vs羽生戦(阿部の勝ち)と同様の進行で下図まで進んだ。
阿部vs羽生戦ではここで封じ手となっており、当時のウォッチングでは「封じ手は間違いなく▲9六同歩だが」なんて言っており、実際阿部七段は▲9六同歩と指している。確かにここでは▲9六同歩と応じる他なさそうだが。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
|v飛 ・ ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v香 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・|五
|v歩 ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ ・ 金 角 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:歩 
【手数=38 △9六歩 まで】

ここで先手は▲5四銀!
世の中「間違いなく」とか「絶対」とかいう言葉を不用意に使ってはいけないと強く感じだ。
この局面では▲5四銀が強手で、驚いたことにこの手で先手も指せそうというのが現在の定説らしい。
▲5四銀の狙いは狙いは金を取って▲8三金。指されてみるとなるほどと思うが、経験として▲9六同歩では先手が難局であると実感していないと思い至らない類いの手ではないだろうか。

下図が封じ手の局面。△5一歩はいかにも森内九段好みの手。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:飛 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・v歩v玉v角v桂v香|一
| 金 ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v香 ・ ・v歩v銀 ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩v銀 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 桂 歩 銀 金 ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:飛 歩三 
【手数=50 △5一歩打 まで】

△9七歩成に▲9七同桂と指した手に対しての△5一歩だが、▲同桂では▲同香の方が以下△同香成に▲7一飛があるので先手としては自然な気がする。
▲9七同桂のため△5一歩がぴったりした手となった感じだ。
封じ手は▲5二歩の合わせが考えられるが△6二銀がこれまた角道を通しつつ5一地点を受けておりぴったりした手となりそう。
羽生竜王はどんな手を捻り出してくるのだろうか。

#一言日記:【最近読んだ本】以前「バカの壁」を読んで面白いと思ったので、「まともま人」を今読んでいる。
[2003/11/13 00:50]

第3局2日目

封じ手は▲5二歩。恐いけれども、攻め合いにするしか先手の活路はなさそうだ。
以下△4九飛▲8八玉△6二銀▲9三金△同 桂▲5九香と進んだ。
5筋に歩を打ったので△4九飛が厳しい。それでも▲5九香と攻防に香車を打って(もっとも△8九金の詰めろという事情はあるが)丁々発止の中盤戦が続くかと思われた。

しかし、この日の森内九段は鉄板流というよりむしろ光速流だった。下図では先手もやれそうな感じがするが、3手1組の好手がある。

後手:森内俊之九段
後手の持駒:金 桂 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・ 龍 ・v香v銀v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・ 角v歩v歩 ・ ・|四
| ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六
| 香 ・ 銀 金 ・ 歩 ・ 歩 歩|七
| ・ 玉 金 ・vと ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ 角 ・ ・v飛 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治竜王
先手の持駒:銀二 歩四 
【手数=79 ▲8六歩 まで】

森内九段の指し手は、△7九飛成▲同 金△9九角!
ずばり飛車を切って9九に角を放り込んだのが強手。この後羽生竜王もと金の利きの6八に銀を打つ意地の1手を見せたが、既に後手の術中だった。

7時半位に会社からネットを覗いてみると既に終わっている模様、夕食前に終局していたそうだ。
94手で森内九段の勝ち。なんと宿敵羽生竜王に対して3連勝!
本局は森内九段の強さが際立ったが、そこは第一人者の羽生竜王、まさかこのままでは終わるまい。4局で終わって欲しくないと願う1ファンの希望的観測?

#一言日記:【最近買った本】以前「クラッシャージョウ ワームウッドの幻獣」。高校の頃読んだ記憶のある高千穂遥のクラッシャージョウの新刊が出てたので思わず買ってしまった。前作から10年以上は経っているはず。
[2003/11/14 00:10]
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第4局1日目

第4局、背水の陣の後手番羽生竜王は四間飛車を採用した。藤井システム模様で居飛穴を牽制する序盤となったが、▲3六歩を見て、△4八玉と居玉を放棄(妙な言い回しだな)した。
結局先手森内九段は居飛穴に組んで、持久戦模様の将棋となった。個人的には最新の藤井システムの攻防を見たかったが、正確無比の受けが自慢の森内九段には得策ではないと判断したのかも知れない。後手番の藤井システムはなかなか成立しないというのが現状か。
下図は7七の角を5九に引き、1筋の歩を突き合ったところ。▲5九角は持久戦指向の手だが、先手はここから更に持久戦指向を継承する意欲的な駒組を目指した。

後手:羽生善治竜王
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩v銀v角v歩 ・|三
| ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩 ・v歩|四
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 銀 歩 ・ ・ ・|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ 金 角 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:なし
【手数=38 △1四歩 まで】

図から▲4六歩△8三銀▲5五歩△7二金▲5六銀△5二飛▲5八飛△2二飛▲3七桂△5一角と進んだところで先手が手を封じた。
5筋の位を取るのが先手の作戦だった。居飛穴+五筋位取りはバランスが悪く四間飛車を持っているとありがたく感じることすらあるが(私見です)、本局に関して言えば、先手としては満足な局面でないだろうか。
封じ手は▲4五歩が自然な気がするが、△3五歩でまだまだ難しいか。

#一言日記:NHK杯で、中井女流がA級棋士の青野九段に堂々勝利した。終盤は完全に逆転して青野九段の勝ちかと思って見ていたが、お見事でした。
[2003/11/27 02:10]

第4局2日目

封じ手は▲4五歩。対して後手は素直に△同歩と応じた。以下▲4八飛△3三桂に▲6八角が含みを持たせた好手で、この辺り既に先手の模様が良さそうな気がする。

下図は中盤。▲6五歩に対して△9六歩▲同歩△9七歩と端攻めを敢行したところ。

後手:羽生善治竜王
後手の持駒:桂 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・v玉v金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v金 ・v銀v角v歩 ・|三
| ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|四
| ・v桂 ・ 歩 歩 ・v歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・ ・ ・ 歩|六
|v歩 歩 ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| 香 銀 ・ 角 ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:桂 歩二 
【手数=72 △9七歩打 まで】

ここから▲同 桂△同桂成▲同 香△8五桂▲6四歩△同 金▲6五歩と進んだ。
やや苦しい後手は端攻めを敢行したものの、再度の△8五桂の時に6筋に拠点を作られ、依然として苦しそうだ。

下図は終盤の入り口辺り。
後手:羽生善治竜王
後手の持駒:香 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・v玉 ・v金 ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀 ・v金 ・ ・v角v歩 ・|三
| ・v歩v歩 桂v桂v銀 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ 歩 角v歩v歩 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 銀 ・ ・ 金 ・ 桂 ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:森内俊之九段
先手の持駒:桂 歩五 
【手数=96 △4四銀 まで】

ここから▲7二桂成△同 玉▲6四歩△7三金寄▲6五桂△6一香と進んだ。
6筋の位を生かして打ち込んだ楔の桂馬を成り捨てたのが軽妙な手だった。同玉と取るしかなく、▲6四歩〜▲6五桂と先手好調だ。
△6一香が遠く敵陣を睨み、展開によっては逆転の糸口になりそうな手だったが、この後も特に波乱はなく121手で森内九段が勝利した。

本局を振り返って見ると、既に封じ手の辺りで後手が思わしくなかったような気がする。やや無理があると思われる▲4六歩からの5筋位取りをすんなり許してしまった感があり、完全な居飛穴ペースの将棋になってしまった。千日手を狙っていたとは思いたくないが、指し手が消極的過ぎたのではないだろうか。

今期竜王戦全体を振り返ってみると、森内新竜王が実に強かった。名人戦では羽生に4−0であっさり奪取されたが、今回は逆のスコアでの奪取劇となった。受けの森内という印象があるが、積極的な攻めも随所に見られたのが印象に残る。
今期防衛すると通算7期の規定により永世竜王の資格を得る羽生だったがこちらはおあずけとなった。

#一言日記:appleの直営店が銀座にオープンする。なかなか東京にいく機会がないが、今度覗いてみようと思う。
[2003/11/28 00:10]
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