第58期名人戦第7局大盤解説観戦レポート

◆日時:平成12年6月27日◆於:新宿三井55ひろば◆解説者:深浦康市六段

 2日目の夕食休憩後から観戦していて印象に残った手を中心に次の一手形式でレポートする。
図が夕食前までの局面。先手が攻めきるか後手が受けきるかというきわどい局面だ。さてどちらが優勢なのだろう?
一枚でも歩があれば先手を持ちたい気がするが、筆者には全く持って検討もつかない。

◇夕食休憩までの局面。再開の手が恒例の「次の一手」。深浦六段のあげた候補手は
(1)▲6五角(2)▲2三歩成り(3)▲2五金

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:金 銀二 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・v歩 ・ 歩v歩|四
| ・v歩 ・v歩 ・v銀v馬 ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 角 ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 ・ 金 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:金 
【手数=72 △4五銀打 まで】

『▲2三歩成』
「次の一手」の正解は一番人気の▲2三歩成。二百数十人(正確な人数は聞き漏らした)の観戦者中正解者は70人。10名のラッキーな方に名人戦扇子がプレゼントされた(これも恒例)。
名人は△同玉と応じました。角のラインに入るのが恐いけど名人らしい最強の一手。
▲2三歩成△同玉▲4六金で後手の馬は盤上から消えた。
#名人戦扇子欲しかったヨ~。


◇数手進んで下図に。ここでの丸山八段の指し手には驚いた。

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:金二 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v玉 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・v歩v銀 ・v歩|四
| ・v歩 ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 角 飛 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:角 
【手数=78 △3四銀打 まで】

『▲6五角』
え~!? 飛車取られたらどうするの?
しかし▲6五角△4六銀▲2一馬とすすんだ本局は次に▲3六桂があり後手玉は相当嫌らしい。▲1七の桂も働きそう。
さすがこの形のスペシャリスト丸山八段。読み切ったか?


◇さて次に▲3六桂を許すと後手玉はたちまち狭くなる。
次の手には名人位の重みを感じた。

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:飛 金二 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ 馬v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v玉 ・|三
|v歩v飛 ・ ・ ・v歩v銀 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:角 桂 歩 
【手数=81 ▲2一角成 まで】

『△7一飛』
どうするかと思ったら△7一飛。渋い手にびっくり。
さらに驚いたことに解説の深浦六段は△7一飛を予想手に挙げてた。さすが一流プロですね。
#う~ん。一手指した方が優勢に見えてしまう。


◇図は名人が△5四金としたところ。次の手はとくに印象に残った手だった。

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:金 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v飛 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v玉 ・|三
|v歩v飛 ・ ・v金v歩v銀 ・v歩|四
| ・v歩 ・ 馬 ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:角 桂 歩 
【手数=84 △5四金打 まで】

『▲2九馬』
▲2九馬は好手と思う。7五でも6六でも2九というのがちょっと思い付かなかった。
形勢判断はというと、深浦六段も分からないとおっしゃていた。
#終電が心配になってたゾ。


◇図の▲8三桂は丸山八段らしい手。飛車を逃げる一手だが、逃げ場所が難しい。
次の一手、筆者には疑問手に映った。

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:金 銀 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v飛 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ 桂v歩 ・v歩 ・ ・v玉 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v金v歩v銀 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・ ・ 桂|七
| ・ 玉 金 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 馬 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:角 歩 
【手数=87 ▲8三桂打 まで】

『△2一飛』
香の入手が見込めるので△2一飛はやり辛いのでは?
実は少し前までは歩切れの分だけ先手の攻めが切れているでは、と思っていたが、先手を持ちたい気がしてきた。


◇局面はずっと進んで下図。後手は入玉が確定したがいかんせん点数が足りず先手玉の寄せもなさそう。
したがってここでは後手勝勢。後は7三歩や7四香などの左辺の後手駒を掃除すれば...と思いきや。

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:角 桂 歩四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 龍v香|一
| 馬 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|二
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v桂|三
|v歩 ・v香 ・v歩 ・ ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ と ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・v金 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩v銀 ・v全 桂|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・vとv玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:丸山忠久八段
先手の持駒:金 銀 歩 
【手数=134 △2八玉 まで】

『▲2六飛成』
鮮やかな寄せがあった。2枚飛の威力は凄く、これで一手一手。丸山新名人の誕生だ。
この手順は大盤を操作していた奨励会の方(千葉三段と言っていた思うけど自信無し)が深浦六段より先に指摘していた様だ。さすが未来の名人候補。
時計を見るともうすぐ23時になろうとしていた。

2000/6/30記

 -おわり-

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