第1局
久々に郷田真隆八段がタイトル戦に登場だ。このカード、戦法は矢倉で決まりと思っていたら、意外にも後手番郷田は横歩取り8五飛戦法だった。
個人的に矢倉はさっぱり分からないが横歩取りはもっと分からない。ただ横歩取りの方がスリルがあって面白いとは思う。
後手番ながら主導権を握れる戦法として現在流行している横歩取り8五飛だが、本局も後手が先攻した。最初は後手の攻めが成功しているかと思わせる局面だったのだが...。
後手:郷田真隆八段
後手の持駒:桂二 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| 龍 ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v香|一
| ・ ・v歩v銀 ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v玉 ・v歩v歩|三
|v角 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・v金 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩|七
| ・ 玉 ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:角 金 銀 香 歩四
【手数=92 △3一飛 まで】
図は終盤戦、3五の飛車を引いて先手龍にぶつけたところ。ここから▲3四銀△同 飛▲4一龍△4二桂▲6一角と進んだ。
▲3四銀が好手で決め手だったようだ。
[2001/06/17 00:30]
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第2局
またしても矢倉にはならなかった。後手番羽生の作戦は四間飛車だ。といっても図のように進んで四間飛車の跡形は微塵もなくなった。
先手が6四歩を目標に▲8六角と覗いたのに対し、△6三銀と応じたのが陽動居飛車出現の序曲だった。
この作戦は居飛穴に対する四間飛車ではたまに見られる。最近のタイトル戦では第50期王将戦第4局(○羽生vs谷川●)がある。面白いのは王将戦では羽生は先手の居飛穴を持っておりしかも勝利しているのに、今度は後手を持って指していることだ。面白そうな作戦はかたっぱしから試すのは羽生らしいとも言える。
後手:羽生
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛v金 ・v金 ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ 角 歩 歩 歩 歩 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 銀 ・ 歩 ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田
先手の持駒:なし
【手数=37 ▲4六歩 まで】
図から△6五歩▲4五歩△4一玉▲6五歩△3一玉▲5五歩△同 角▲6六銀と進んだ。
2歩を損しているにも関わらず△4一玉〜3一玉とは凄い手だが、ちょっと変な感じがする。この後の羽生の指し手に精彩はなく、79手で郷田が勝利した。
この後手番の作戦は居飛穴に対し攻撃形を築けて、居飛車感覚(っていうか居飛車そのもの)で指せる面白い戦法とは思うが、勝ち切るのはなかなか大変の様だ。
#一言日記:札幌シリーズ、中日vs巨人の第2戦は神野のタイムリーで延長戦を制して9−5で中日の勝ち。バンザーイ!。
[2001/06/27 23:00]
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第3局
第3局は角換り将棋になった。後手番郷田は銀を7三→6四に持って行く手法を取り、それに呼応した形で先手羽生も飛車を6筋に移動、双方工夫の序盤で、角換りで一般的な相腰掛銀や後手棒銀にはならなかった。
後手陣に隙があると見たか羽生は居玉のまま先攻した。
後手:郷田真隆八段
後手の持駒:角 桂 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v銀v歩 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 銀 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 飛 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:角 桂 歩
【手数=54 △3三歩打 まで】
図から▲2四歩△2一玉▲2三角△5五歩▲6七角成△2二歩▲2三桂△1二香と進んだ。
△2一玉は柔らかい受けの手、これに対する▲2三角は強手だ。以下本譜の順で馬を作って先手好調だ。馬を作ったことに満足し穏やかに指す手も有力そうに思える。羽生にはそんな軟弱な構想は微塵もないと見え▲2三桂とぶち込んだ。
これで戦いは完全に先手の攻め後手の受けという図式になった。先手は2三の桂を取られるうちに手を作るべく飛車を2筋に戻し攻めの継続を図り、後手は4一に角を放ちさらにもぎ取った2三の桂で3一桂と受け徹底抗戦の構え。見応えのある中終盤だ。
後手:郷田真隆八段
後手の持駒:金 桂 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v金 ・v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v銀v歩 龍 と|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・v銀|五
| 歩 ・v馬v香 歩 歩 ・v角 ・|六
| ・ 歩 ・ 香 ・ 金 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋聖
先手の持駒:銀 桂 歩四
【手数=125 ▲6七香打 まで】
図は終盤戦。ここから△2二金打▲1二と△同 金▲3三龍△3二銀と進んだ。
1三のと金が大きく先手勝ちに見えるが、△2二金打が強防手。△3二銀まで進んでみると後手陣に迫る手がなく、龍を逃げると△6七香成が詰めろになって先手が勝てない。実戦もそのように進んで郷田が勝利した。
実は手順中▲3三龍が悪手だった。▲3三龍では▲1三飛(または1四飛)が正解でこれで先手の勝ちは動かなかったのである。▲1三飛に△同金ならば▲同竜△2一玉▲2三竜△2二金▲3二銀△同銀▲1二金以下後手玉は詰みだった(手順中▲3二銀が退路を防ぐ手筋)。
本局は先手の豪腕に後手の柔らかい受けが印象に残った好局と思う。郷田、五冠相手に見事な逆転勝ちの一局となった。
#一言日記:NTTがやる気なしなので、ここ千葉県茂原市は当分ブロードバンドとは疎遠の地と諦めていた。そこに衝撃的なYahoo! BBの発表、速攻で申し込んだ。
[2001/07/06 23:00]
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第4局
第4局、後手の羽生棋聖は横歩取り(取らせ?)8五飛車戦法を採用した(またしても矢倉にはならなかった)。前局の角換りに輪を掛けて8五飛は知識を持ち合わせていないので、どこを切り口にしてよいか迷ってしまう。
後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v金v玉 ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v角 ・ ・ ・|四
| ・ ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 飛 ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ 歩|七
| ・ 歩 金 ・ 玉 ・ 金 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆八段
先手の持駒:角 歩三
【手数=44 △4四角打 まで】
実況Webページによると図までは前例があるらしい。ここから、
▲3五歩△8八角▲7六歩△同 飛▲7七歩△7八馬▲同 銀△8六飛▲8七歩△8五飛▲3六銀△8八歩▲3四歩△2三歩と進んだ。
▲3五歩はいかにも郷田らしいギリギリでも積極的に優勢を目指す手だ。羽生も果敢に応じて角金交換になった。駒損した後手がどうやって攻めを繋ぐかと思っていると、一転△2三歩と低姿勢に。この辺りの緩急自在の指しまわしはいかにも羽生らしいと思う。
局面は先手の駒得、先手の思惑通りのはずだ。それだけに△2三歩が玄妙な手に映る。
最後までどちらが勝っているか分からない将棋だったが、羽生に指運があった。
このカードは両者共妥協を許さない棋風なので、毎回味わい深い将棋を観せてくれる。勝負は最終局ということになったが、こちらも好局が期待できる。
#一言日記:会社のサーバが吹っ飛んで3週間分の仕事がパーになった。皆さんもデータはこまめにバックアップを心掛けましょう。
[2001/07/24 1:00]
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第5局
第5局、最終局である。今最も深く鋭く濃い将棋を見せてくれる棋界屈指のこのカード、本局も期待に違わず名局だったと思う。
戦型は後手羽生の横歩取らせ8五飛。今回は終盤の既に郷田が優勢と思われるが、より鮮明に郷田優勢になった局面を紹介する。
難解だったこの将棋も図では入玉模様になっている。このことからも本局がいかに熱戦だったかがうかがえる。
後手:羽生善治棋聖
後手の持駒:金 桂 歩七
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ 龍 ・ 馬 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
| ・ ・ ・v歩 桂 ・v桂v銀v歩|三
| ・ ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・ ・|四
|v香 ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・|五
| ・ 歩 玉 ・ 歩 ・v金 ・ ・|六
| ・vと ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩|七
| ・v角 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ 飛 ・ 銀 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:郷田真隆八段
先手の持駒:金 銀 桂 歩
【手数=126 △7四銀打 まで】
図は△7四銀と挟撃したところ。△6六金の詰めろだ。
ここから▲2一金△同 玉▲8三馬△3一歩▲7四馬と進んだ。
▲2一金から本譜の順で銀を消して玉の退路をつくって分かり易くなった。
165手目▲7一角に羽生投了、郷田新棋聖が誕生した。同時にタイトル3回獲得で九段位も手にした。
郷田棋聖おめでとうございます。一方の羽生は過剰対局の疲れかやや乱暴な手が目立った気がするのが少し気掛かりだ。
#一言日記:先日無事6回目の車検を通った我が愛車、ファミリアアスティナ1500DOHC。色はエクシードグリーンメタリック。老体に鞭打ってあと2年頑張ってもらいますか。
[2001/08/07 1:40]
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